第五章 プロモーション (促進) 4
朱里の両親に経緯を全て話をし、俺たちを狙う上の者との話合いを持てないかだろうかと相談した。
彼女の両親は、上の者とのコンタクトを持っており、何とかしてみると心強い返答をもらえたのだ。
これで無駄な血は流さなくても済むかもしれない。
「ルイ、久しぶりだな」
俺と朱里が戻ったことを聞きつけて挨拶にやってきたのはシーズだった。
彼はその後も警備隊体長としてその職を全うしていた。
「以前は世話になった」
全てを知る人物はこのシーズくらいかもしれない。彼の助勢がなければ、生きてはいられなかっただろう。
「聞いてくれ、ルイ。朱里さんも。栗夏の奴は、やはりどうしようもないぜ」
シーズの話によれば、三年前のあの事件以降、ベタとアルフの街を統治するのは当然の如く栗夏の一族となり、二十歳を迎えた栗夏は全ての実権を握ったのである。
本当であれば、朱里と結婚し、ベタの街は朱里の管轄となる予定であったが、結婚相手が逃げたとなって、彼は本性を現したのである。
権力を傘に、その統治はやりたい放題だった。特別徴収などで、税金は上がりに上がり、栗夏一族が石油関係を独占していたので、石油の値段を高騰させ、そこに住む人々から自由を奪っていったのである。
全ては栗夏一人の欲望のために。
お陰で、街の治安も悪化し、夜は一人で出歩けないほどになってしまったというのである。
「それは済まない事をした。知らなかったとはいえ、もとは俺が蒔いた種だ。何とかしよう」
朱里とも相談し、栗夏と直談判に行こうということになった。
もし、こちらの要望を聞き入れない場合は、力ずくでも言う事を聞かせなければならない。
暴力は反対の立場を取っていた朱里だが、栗夏を懲らしめるのであれば、目をつぶるといってくれた。
まずは、ミイフに頼んで、ことの経緯を手紙で栗夏に送ることにした。
彼に頼んでおけば、他に情報が漏れる心配がない。
必要であれば話し合いの場を持ってもらいたいと提案したのだが、帰ってきた返答は、意もしないものだった。
「卑劣な悪党と話し合う必要などはない。果し合いで決着をつけよう。明日の正午に、ルイ一人で来い」
とだけ、手紙に記されていた。
「きっと罠だわ。行っちゃダメよ。よってたかってあなたを始末する気よ」
朱里は心配して俺を行かせまいと必死だった。
「でも、俺がやらなきゃ、この街もよくなることはない」
全ての根源は、栗夏の悪政なのである。これも朱里という錘が外れた結果なのだ。
責任は俺にある。
何とか朱里を説得して、一人で栗夏の下へと出発した。
罠かもしれない。だが、その罠にさえ、期待に胸膨らませていたのである。