第五章 プロモーション (促進) 1
そして……三年の月日が流れた。
俺と朱里は、変わらず二人だけの平穏な日々を送っていたその時である。
朱里と二人で畑仕事をしていた時、突然戦闘機が頭上をかすめて飛んで来た。
家の周りを何度か行き来した後、狙いを定めて攻撃して来たのだ。
間一髪の所で、ミサイルから逃れたものの、畑も家も全て破壊されてしまった。
急いで岩陰へと隠れ様子を伺う。
「怪我はないか、朱里」
彼女は震えていた。無理もない。テレビでしかみたことのないような戦闘機が頭上を飛び交っており、こちらに標準をあわせているのだ。
「なぜ今になって狙ってくるのかしら」
彼女を岩肌にある洞窟へと身を隠させた。そこには、いざという時のために武器などが隠してある。
そして、ひとつの拳銃を手に取り、予備の弾をポケットへと仕舞う。
この拳銃の名は『CAナインティーン=ナイン』(略してナイン)と言う。裏で手を回し、大金を積んで購入した拳銃だった。
「朱里はここで隠れてるんだ。様子を見て来る」
俺は洞窟を飛び出し、攻撃された家の方へと向かった。戦闘機はどこかへ飛んで行き、静けさに包まれている。
辺りを伺っていると、戦車部隊がこちらへと近づいてきているのが分かった。
こっちはたった二人しかおらず、武器などもろくに持っていないというのに、随分な歓迎だ。
七台の戦車に、騎兵隊が列をなし、総勢五十人は超える。
最後尾には、黒い車が見え、どうやらそれが指揮官のようだ。
攻撃からみても、容赦はない。つまり、俺達を殺しに来たのだ。
俺は木の蔭に隠れて彼等と対峙した。
戦車からはミサイルが次々と放たれ、いつ直撃するか分からない。
すかさず、『ナイン』で戦車を狙う。『ナイン』は、鉄板など貫くほど威力を持っている拳銃なのである。
戦車の給油口辺りを狙って打ったので、大きな音とともに爆発し炎上した。
あっという間に七台の戦車を大破させ、その隙に渦中へともぐりこむ。
何人かの敵を倒し、最後尾の黒いセダンの車まで走り抜けた。
そして、ボンネットの上に上り、拳銃を向け中を威嚇する。
「何者だ」
車の中には、一人の男性と、一人の女性が乗っていた。
二人とも見覚えのある顔だった。
「ジェネ……、それに、リコか」
両手を挙げて車から降りてきた二人に、思わず言葉が出なかった。
まさか、二人が俺達を狙ってきたとは。
「ジェネ、大人になったな」
三年前とは別人のように成長したジェネだった。以前のような幼げな表情は消え、すっかり大人の女性へと成長していた。