第四章 イニシエーション(開花) 10
「見つけてくれたんだね。最後の一つを」
途切れそうな意識をしっかりと持ち、朱里が手の中へと入れてくれたオンコジーンを見つめた。
五つは融合し、あと一箇所を合わせるのみだ。
もう片方の手には、三角形の板がある。
残る力を振り絞り、再後のオンコジーンを合わせた。
カチッ
六枚の板は完全に一つになった。
融合した板は、今までの質感とは全く違う素材へと変化したようだった。
そして、ほんのり光り輝いているのに気がついた。
「あれ…、何も起きない」
板が融合して、十秒、二十秒、三十秒と経つが、一向に何か起こりそうな気配はない。
そして、オンコジーンの光りも消えていた。
「やっぱり、だたの迷信だったっていうの?」
朱里の悲壮な叫びが耳に届く。
彼女が、どんな思いでオンコジーンを集めたのか、どのような覚悟でここに来たのか。
握る手からそれが伝わった。
「何をゴチャゴチャ言っている。さあ、面会の時間は終わりだ」
栗夏が肝を焼いて、横槍を入れてきた。
彼が、俺と朱里の間に割って入ろうとした時に、突然地面が揺れる。
ゴゴゴゴー
大きな物音がどこからともなく轟き、薄暗い監獄の中の壁にヒビが入る。
そして、突然、天井から落ちてきた照明の笠が、栗夏の後頭部を直撃し、彼はそのまま倒れ込んだ。
今までに経験したことのないほどの大地震だった。
栗夏を直撃した照明の笠は、その後俺の足元へと飛んで来て、偶然にも足を縛ってある縄を切断し、跳ね返ってもう片方の足の縄も切断した。
体力などほとんど残っていないと思っていたが、自由になった足は動くし、手にも力が入る。
これがオンコジーンの奇跡なのだろうかと不思議に思いながらも、とにかくこの場から逃げ出さなければならない。
「朱里、行こう」
彼女もまだ何が起こっているのか把握できていないようだった。
まだ地震の揺れは続いている。
天井から、今度はコンクリートの塊なども落ち始めていた。
彼女の手を引き、監獄の一室から出た。
偶然にも、見張りの警備員達は、落ちてきたコンクリートの下敷きになって身動きが取れないようになっている。
廊下を走りぬけ、出口を目指す。
その頃には、地震は治まっていた。
外はそれほど地震の被害はなさそうだ。
片方の手にはオンコジーンを握り締め、そしてもう片方の手には朱里の手をしっかりと掴んでいた。
もう離さない。何があっても。
世の中に偶然など、そうはない。
ましてや、奇跡など起こるものではない。
だが、この時ばかりは、この地震が、オンコジーンの奇跡なのだと信じるしかなかった。




