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第四章 イニシエーション(開花)  7

 そもそも、なぜアデポネがそんな情報を掴んだのか。不可解でならなかった。

 彼女が言うには、地下組織の一件を調べていたら、機密ファイルにぶつかったというのである。そのファイルをこじ開けてみると、ルイの処刑計画が記されており、彼が異人血である可能性ありとあったという。

 その後、死刑囚の採血結果は全ての指揮を任されているサイモシンの所にあることを突き止めたのだ。


「もし……、もしこれが本当だったら」

 血の気が引くのが分かった。考えたこともなかった。ルイが異人血の持ち主だなんて。

 

 『異人血』とは、普通の人間が持ち得ない血液のことである。普段生活している分には、自他共に全く影響などはない。だが、特殊な環境に陥ると、狂気になったり、他人を殺めたりすることが知られており、法律では隔離することとなっている。だが、多くの人々は彼等を獣の如く扱い、抹殺を求めるのである。

 その上、異人血を持つ人と、正常な人が結ばれて子を産むと、必ずといって災いの基になると恐れられ、厳しく禁止されているのだ。


「残念だけど」

 アデポネも肩を落とし、がっくりとしていた。せっかく幸せになれるかもしれないオンコジーンを集めたのに、こんな事になるなんて。

 だが、異人血と分かった以上、ルイと結ばれることはありえない。


「ルイ……」

 それから丸三日、私は一人で部屋に篭りっきりになった。 

 全ての人との接触を絶ち、泣いては悩み、悲観しては運命を呪い、絶望と焦燥とを繰り返し、一つの答えにと、たどり着いた。


 そして、父と母に宛てた手紙を書いた。

 私のわがままを、許して、見守って欲しかった。許されないことなのは分かってはいたが、他にどうしようもなかった。

 もし、ルイを助けることが出来なかったのなら、私も彼の後を追う。

 それが私の出した結論だった。

 異人血を持つ彼とでも、普通の生活は出来る。子供さえ作らなければよいのだ。

 異人血は感染したりする類のものではない。

 

 後悔はしていないし、これからもすることはない。

 それが自分で選んだ道なのだから。

 愛する人を助けられなくて、幸せなどつかめるはずがない。

 一生にに一度、逃げてはいけない勝負がある。

 今がその時だと、心に言い聞かせた。 


 オンコジーンは、実は、ただ集めても何の奇跡も起こさない。

 そこには、強い意志が必要なのだ。

 オンコジーン同士が引き合うのは、実は、各々の板同士が引き合っているわけではない。

 意志のある所へと引き寄せられていくのだ。

 集められしオンコジーンは、希望、存続という強い意志により、花開く。

 選ばれし者の手により、奇跡は起こる。

 開眼した運命は、時空を越える。

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