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第二章 プロセス(進化) 13

 リコは注射器とバイアルを持っており、何かを調合しているところだった。

 俺は目でリコに合図を送った。

 リコはそれを受け、監視カメラに俺の口元が映らなくなるように体で遮る位置までゆっくりと移動してくれた。


「に・が・し・て・く・れ」

 声には出さない。口を動かしているだけだが、リコも俺も口が読める。

 リコは情に流されるような男ではない。非情で冷徹な人間なのはよく知っている。

 それに、俺を助ければ、今度はリコが始末されることになる。


 だが、今回の騒動は、結局はこの国のためになったのである。ただ、指令を無視しただけで始末されるというのも理不尽な話ではないか。きっとリコもそう思っていたに違いない。


「げ・ど・く・ざ・い」

 リコは薬を調合をしながら少し間を取ってから続けた。

「じ・い・の・き・ん・こ・の・な・か」

 そこまで口を動かすと、リコは再びゆっくりと体を移動させ、監視カメラに俺を映るようにした。


「この薬は、お前が破壊しようとした地下で作っていたものだ。まだ未完成だが、四十八時間で心不全を起こすらしい。残った人生楽しむんだな」

 人体実験の最終確認として俺が利用されたわけだ。

 つまり、人体実験は継続されているというのか。解毒剤まであるのだから。


 監視カメラからよく見える位置で、リコは俺の腕に注射をした。得体の知れない液体が俺の中へと入ってくる。

 これが俺に与えられてた罰だった。

 残された時間で解毒剤を手に入れなければ俺は病死することになる。

 

「それと、発信機付の手錠型爆弾な」

 外すと爆発する。俺を自由にはさせないということだ。

 そして、俺がどこに行くのかを監視する。下手に動くことは出来ない。


「リコ兄さん、ここはどこだい?」

 見たこともない部屋であった。朱里の家からは移されているのだろうと予測はしている。

 だが、爺の家から遠いとそれだけで時間がかかる。

 爺の金庫というのは、いつもの骨董屋の金庫だ。


「ちょうどベタの街と、爺の家との中間くらいだ」

 俺の知らない秘密施設は五万とある。

 だが、位置からして、車で飛ばせば二時間ほどの距離だろう。

 すぐにリコが手枷と足枷を外してくれたので、その部屋を飛び出した。

 時間は一刻を争う。


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