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第二章 プロセス(進化) 5

 その後、朱里がどのような行動をとったのかは分からない。

 俺は、置手紙を残して朱里の下を離れることにした。

 ボディーガードとしての仕事は楽しかったが、朱里の結婚する日は近づくばかりだったし、自分の中で抑えきれない感情の行き場をどうしていいのか分からなくなっていたからだ。


 そして運命の日が来るのを待った。

 朱里の誕生日に結婚式が行われる。

 結婚式はベタにある由緒正しい教会で挙げることになっており、街からは少し離れた見晴らしのよい高台で行われる。

 街の人は皆祝福し、結婚式の前日には街中をパレードすることになっていた。

 

 その結婚式の前日までに、俺は朱里を抹殺する。

 朱里の結婚式におけるスケジュール、人間関係、警備の人数など、全て把握した。

 後は、自分自身の感情をいかにコントロールするかだが、答えは決まっている。

 血で汚れた俺の手では、朱里との未来など築けるはずなどはないのだ。

 

 朱里の下を離れる日に、俺は朱里のパレードの下見をしていた。

 出発は朱里の家の前から始まり、街中を抜け、ベタとアルフとを繋ぐ大きな橋を渡り、アルフを一回りし、再びベタへと戻ってくる。その後式場の高台まで行き、そこで前夜祭が行われる予定だった。

 

 俺は高台に立って、この二つの街を見下ろしていた。

 高台は、丁度二つの街の真ん中あたりの山肌に位置している。

 見晴らしのよい場所だった。


「ここで朱里を殺るのか」

 朱里の結婚式まであと3ヶ月と迫っていた。

 朱里のボディーガードとして働いていた時にも、人体実験などの情報は得られずままであった。

 朱里を殺す明確な判断材料もなく、彼女に好意を持ったまま彼女を殺すことなどできるのだろうか。

 せめてもの救いとして、彼女が結婚を諦めるという決断を下してくれるのならば……。

 

 そのような事を考えていた時だった。

 ふと足元を見ると、何か光るものが目に入った。

 夕日に反射して赤く光るもの。

「何か埋まっているのか」

 俺は足元の土を掃って、光りを反射するものの正体を探った。


 それは、またもや三角形の板のようなものだった。

 そう、ジェネにもらったものと同じものだ。

 朱里の持っていた石の形状のもではなく、金属質の方の三角の形の板。

 その板が光りを反射してよこしたのだ。

 三角形の二辺には凹凸が付いていたが、俺の持っていた板とは合致しない。


「これ以外にもまだあるのか」

 これはただの偶然ではない。奇跡などの類でもない。

 意思のある物体は持ち主を選ぶという。

 そこに『あった』のではなく、随分以前からそこにあることを定められていたのだ。

 そして、俺がここに立つことも。

 選ばれし者。

 いや、俺が選んだ道なのかもしれない。

 何れにしても、このときは、この板の持つ意味がまだ分からなかった。

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