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第二章 プロセス(進化) 3

 朱里のボディーガードを引き受けてから2ヶ月くらいたった頃、朱里の結婚式の準備が始まることになった。

 結婚式まで半年。親同士の身勝手な話合いで決められた結婚。

 

「最近、ため息がおおいね」

 ボディーガードの仕事は退屈だった。

 何もすることがない毎日。

 以前、狙ってきた奴等も、その後はなんのアクションも起こして来ない。

 そんな日々を過ごす間に、朱里のため息は日に日に増えていく。


「え。あ、そうかしら」

 結婚することは小さな頃から決まっていたのだという。それを受け入れるようにと教育されてきたのだけれど、納得など行くはずもない。


「結婚するの、止めにしない?」

 この質問をするために、どれだけ悩んだだろうか。それは、彼女との距離が近くなったと思えたから出来るのかもしれない。

 朱里が結婚しなければ、俺の任務も変わるかもしれない。なぜかその時はそういう風に考えていた。

 彼女が結婚するから、殺さなければならないのだと。


「ムリよ。ルイ。実は、韻一族はもう落ち目なの。残念だけど。だから、この結婚を逃したら、きっと皆路頭に迷うことになるわ。何万もの従業員達がね」

 朱里は遠くの方を見て答えた。これは自分だけの問題ではないのだと。


「それに、相手の男って、ひどいやつなんだろう」

 結婚相手の男が、やさしくていい男であれば、まだましなのだが。よりによって、最悪の男なのである。


「いい加減なことは言わないで! いい人よ。誠実で礼儀正しい紳士だわ」

 朱里は真実を知らされていないのだ。箱入り娘の彼女のところには、入ってくる情報までもがコントロールされているのかもしれない。


 これが朱里との始めての喧嘩だった。

 楽しかった毎日が突然ギクシャクしたものになる。

 それは辛いことであったが、それ以上に、朱里に真実を伝えたいと思った。

 そうすれば、彼女は結婚を思いとどまるやもしれない。

 いや、それでも彼女は受け入れるのであろう。ただ、万が一可能性が残されているのであれば、それに賭けるしかない。


 俺は証拠を探した。朱里の結婚相手がひどい人間だという、決定的な証拠を。

 昼間はボディーガードの仕事をしながら、夜は街に出て情報を集めた。

 

 朱里の結婚相手は、朱里の住む街から、大きな川を隔てて対岸にある街だった。

川を渡る橋は一本しかなく、船での行き来が多い。朱里の住む街の名は辺汰ベタといい、対岸の街を亜流布アルフという。 辺汰と亜流布とを併せもつ県を蘭夏留ランゲルという。

 アルフで一番の大金持ちで勢力を振るっているのが、今回の結婚相手となる栗夏グリゲの一族なのである。

 石油王として、国の財政をも左右する彼等に逆らえるものはいない。

 つまり、彼等にとって『よくない情報』は整理され、流れないようになっているのだ。


 なかなか栗夏の尻尾は掴めなかったが、以前、栗夏の下で働いていたことのあるという人物がいるという。その人物は今は朱里の下で働いているという噂が耳に入ってきた。

 もちろん、公にはされていない情報だ。

 親しくなった警備員のシーズによると、運搬屋のミイフであれば何か情報を持っているかもしれないという。

 ミイフは、お偉いさん方御用達の運び屋なのである。

 俺はミイフとコンタクトを取った。

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