第一章 シグナル(刺激) 12
三人目の敵は、俊敏で隙がなかった。
倒した他の二人とは、腕が違う。
俺の放った麻酔銃は空を切る。
相手は車を盾にして、こちらに銃口を向けていた。
大よその位置はバレている。
このままでは不味い。
ダン。ダン。
敵の銃弾が草むらを射抜く。俺の鼻先をかすめる。
「朱里さんは頭を低くして、じっとしてるんだ」
俺は草むらから転がり出た。彼女を危険にさらすわけにはいけない。
麻酔銃を二度打ったが、外れる。
あと一発しか残っていない。
大木の陰に身を隠し、敵の動きを伺った。
ドカーン
俺は小型の手榴弾を、敵の車にめがけて投げつけた。
車は見事に大破し、敵は一寸早く車から離れた。
その隙を見逃さず、俺は敵を射抜いた。
が、同時に、敵の銃弾が俺の肩を貫いたのだった。
「さあ、急ごう」
俺は朱里の手を取り、その場を離れようと促した。
「大丈夫!血がでてるわ」
銃弾は貫通している。出血もひどかった。
少しめまいを覚えたが、気力で平静を装う。
敵が持っていた銃を三丁を手に入れ、そのうちの二丁は弾だけ抜き取り捨てた。
打たれた右肩を左手で抑えながら、かろうじて右手で拳銃を持ち、その場から立ち去ろうとした時、先ほどの車の爆発を聞きつけて、もう一台同じような黒い車がこちらへ向かってきていた。
中には拳銃を持ったやつらが見える。
仲間がやってきたのだ。
俺達は再び草むらに身を隠し、敵の動きを伺う。
今度も三人。運転手以外はすぐに車から降りて、辺りを警戒している。
俺は最後の手榴弾を、敵の一人の方へ向かって投げた。
爆発とともに、敵は倒れ込む。
それに気をとられている間に、もう一人の腕を狙い引き金を引いた。
俺の銃弾は敵の拳銃を命中し、吹き飛ばした。
残るは車に残る一人のみ。
なぜか車の中の男は拳銃を持っていないようだった。
俺が拳銃を向けると、両手を上に挙げ、車から出てきたのだ。
俺たちは、車に乗り込み、その場から離れることが出来た。
右肩からはドクドクと血が流れだしており、意識が薄らいでくる。
車を奪って逃げたのだが、一キロメートルも走らないところで気を失った。