評議会の審判
前書きを読んでいただき、ありがとうございます。
この物語『黒き天使』は、戦いだけの物語ではありません。
力とは何か。
正義とは誰の視点なのか。
そして――人は運命を選べるのか。
レオンは自分の中に眠る存在と向き合い始めます。
彼は怪物になるのか、それとも希望になるのか。
その答えは、まだ誰にも分かりません。
今回のエピソードでは、リーの決意と、組織の本当の姿が少しずつ明らかになります。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
どうぞ最後まで読んでください。
第9話 ― 評議会の審判
幾世代もの間、エクスプリアンは〈組織〉を築き上げた。
それは知識、戦争、そして支配によって成り立つ巨大な帝国だった。
しかし、ほとんど誰も知らない。
元素の力で宇宙に恐れられる種族――クリザード人たちは、
その〈組織〉の裏にエクスプリアンがいることを知らないのだ。
今、組織は極めて不安定な均衡の上に立っている。
もし真実が暴かれれば……新たな戦争が宇宙を滅ぼすだろう。
評議会の間は、圧倒的な広さを誇っていた。
高く並ぶ席、宙に浮かぶホログラム、そして中央に立つ三人の姿。
リー、ローラ、そして総監督ドリア。
空気は重く、誰もが口を開くことを恐れていた。
ドーサン議員が静かに言った。
「リムの転生が……人間の少年の中にいるだと?
それは危険どころではない。存在そのものが脅威だ。」
ヴェルトリス議員が続ける。
「もし事実ならば、その少年を生かしておくわけにはいかない。
リムは戦争の悪夢だった。古代神カイロスの器だった存在だ。
彼が何をしたか、忘れたわけではあるまい?」
リーは一歩前に出た。
その目は怒りを抑えながらも揺らがない。
「忘れていません。
だが、あなたたちは“歴史が操作されている可能性”を忘れている。」
ざわめきが広がる。
リーは低い声で続けた。
「500年前――リムは裏切られた。
信じていた者に。女神ララに。」
空気が凍りつく。
「その日、何が起きたのか……
真実は誰も知らない。
もしかしたら、本当の悪はリムではなかったのかもしれない。」
ノーラク議員が怒鳴った。
「貴様は組織最大の敵を擁護するつもりか!」
リーは首を振る。
「500年前のリムを守るつもりはない。
俺が守ろうとしているのは――“まだ選んでいない少年”だ。」
ローラが静かに口を開いた。
「彼は私を殺せたはずです。
ですが……しませんでした。」
彼女は震える手を見つめる。
「光が彼を止めました。
つまり、まだ彼の中には善が残っているのです。」
リーの脳裏に、あの時の光景がよみがえる。
荒廃した惑星ヴィデウ。
星屑に囲まれた小さな部屋。
そこにいた老いた預言者。
「リー……一人の少年が現れる。
すべてを滅ぼすか……すべてを救うか。
その答えは彼の中にある。
命を懸けて守りなさい。」
現在へ戻る。
リーは拳を握りしめた。
「これは命令ではない。
俺の使命だ。
まだ怪物になると決めていない人間を、殺させはしない。」
評議会は沈黙に包まれた。
やがて総監督ドリアが前に出る。
「……中間案がある。」
彼は議員たちを見渡した。
「その力が本物なら、我々にとって利用価値がある。
だが、ここに置くには危険すぎる。」
ドーサン議員が頷く。
「監視下に置く。組織から離れた場所でだ。
リー、お前が監視と訓練を担当しろ。」
リーは即答した。
「場所は俺が決める。」
リーは言った。
「惑星K11へ連れて行く。
死の惑星だ。生命は存在しない。
あそこなら、暴走しても被害は出ない。」
ドリアが宣言する。
「承認する。
期間は六か月。
制御できなければ――責任はお前が取れ。」
リーは静かに頭を下げた。
巨大な母艦が宇宙に浮かんでいた。
その一角、降下艇の前にレオンとリーが立つ。
レオンが小さく言う。
「……どうして俺を助ける?」
リーは宇宙を見つめたまま答えた。
「昔、俺も誰かに救われた。
そして――お前はリム以上の存在になれると信じている。」
レオンは黙る。
リーが少し笑った。
「それに……難しい方が面白い。」
降下艇は大気圏へ突入する。
窓の向こうに赤い空と荒れ果てた大地が広がった。
惑星K11。
着陸の衝撃が響く。
ハッチが開くと、乾いた風が吹き込んできた。
リーが言う。
「ここが六か月の新しい家だ。」
レオンは荒野を見渡す。
「怪物には似合いの場所だな。」
リーは訓練用の棒を二本取り、一本を投げた。
「違う。
戦士になるための場所だ。」
レオンはそれを受け取り、構えた。
その表情には、初めてわずかな笑みが浮かんでいた。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
この章は、レオンの力の秘密と、リーの覚悟を書きたかった大切な回でした。
彼らはまだ仲間ですが、それぞれ違う未来を見ています。
リーは「守るための戦い」を選び、
レオンは「自分が何者なのか」を探しています。
そして、カイロスの存在はまだほんの始まりに過ぎません。
これから物語はさらに大きく動き始めます。
もし面白いと思っていただけたら、次の話も読んでいただけると嬉しいです。
感想もとても励みになります。
また次のエピソードで会いましょう!




