黒き天使 第三章 – 第85話 「過去の影」
第三章、第85話です。
今回は戦いの前に、それぞれが背負う「過去」を描きました。
トーナメントは力だけでなく、想いもぶつかる場所です。
次回、第一フェーズ最後の試合が始まります。
時の守護者たちの勝利から数時間。
闘技場の熱はまだ冷めていないが、第一フェーズ最後の試合を前に、選手たちはアルファ組織の大広間に集められていた。
長いテーブルには高エネルギー食と異星の果実。
だが誰も、味を楽しむ余裕などない。
それぞれが、来る戦いを思っていた。
ヴァンダーは豪快に笑いながら食べ続けている。
リーとリウは小声で戦術を確認している。
その少し離れた場所で――
ララは俯いていた。
レオンがそっと隣に立つ。
◆過去
炎に包まれた大広間。
アレスの襲撃。
崩れ落ちる柱。
血を流すローラが幼いララを抱き締めている。
そこへ現れたのが、ディレクター・ドリアだった。
彼の隣には幼いダリアム。
「あなたと娘は、私の庇護下に置く。」
ドリアは静かに言った。
「誰も二度と触れさせない。」
その日から、ララはドリアの家族のように扱われることになる。
だが。
それは保護であり――同時に、鎖でもあった。
時は流れる。
惑星G26。
若き日のダリアム。
傲慢。力に溺れ、常に中心にいる男。
十八歳でK11に戻った彼は、成長したララを見た。
その瞬間。
恋ではなく、所有欲が芽生えた。
だがララの視線は――
レオンへ向いていた。
その笑顔は、本物だった。
そしてその時。
ダリアムの心に生まれたのは、愛ではなく憎悪だった。
◆現在
「大丈夫だ。」
レオンが静かに言う。
「俺たちは準備してきた。感情に飲まれるな。」
ララは顔を上げる。
「……うん。」
遠くでダリアムが二人を見ていた。
拳を強く握り締めながら。
ドリアは息子に近づく。
「怒りに支配されるな。」
「勝ちたいなら、冷静に戦え。」
ダリアムは目を細める。
「分かっている。」
だがその瞳には、炎が宿っていた。
リーがレオンに歩み寄る。
「緊張してるか?」
「少しだけ。」
レオンは笑う。
「でも、始まれば消える。」
リーは肩を叩く。
「驚かせてみろ、弟。」
その時。
黄金の光が大広間を包む。
ローラが現れた。
ララを強く抱き締める。
「誇りに思うわ。」
「でも無理はしないで。」
ララは母の腕から離れる。
その瞳は揺れていない。
「私の目的はダリアムじゃない。」
「お兄ちゃんを止めること。」
リーは遠くから見守り、わずかに微笑んだ。
闘技場の鐘が鳴る。
第一フェーズ最後の試合。
レオンとララが階段を上る。
反対側から、ドリアとダリアムが現れる。
家族。
約束。
歪んだ想い。
すべてが交差する。
四人が中央で向き合う。
空気が凍りつく。
――始まる。
(続く)
第85話を読んでくださり、ありがとうございます。
本日は新しいワンショットも公開しました。
本編とは少し違う雰囲気の物語になっていますので、ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
また、作者ページでは:
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・外伝ストーリー
も掲載しています。
ブラジルで働きながら、少しずつ書き続けています。
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次回、第86話はいよいよ激突です。




