黒の天使 第二期 第46話「組織の叫び」
いつも『黒の天使(Anjo Negro)』を読んでいただき、本当にありがとうございます。
前話では、レオンがアレスの要塞へ単身突入し、戦いがついに全面衝突へと向かい始めました。
そして今回の第46話では、戦場の外側――「残された者たち」の物語が描かれます。
英雄の物語は、強い者だけで作られるものではありません。
守られた人々、救われた人々、そして待ち続ける人々。
彼らの決意もまた、戦いの一部です。
リーは多くを語らず行動する人物ですが、
彼の行動がどれだけ多くの命を動かしたのかが、今回の話の中心になります。
これは救出作戦の始まりであり、
同時に――組織が「組織」ではなく「仲間」になる瞬間でもあります。
それでは、第46話をお楽しみください。
静まり返った指令室。
それは軍艦特有の静けさではなかった。
重く、胸を締め付けるような沈黙だった。
ララは床に膝をついていた。
胸を押さえる手は震え、涙が止まらない。隣ではラウラが彼女を強く抱きしめている。まるで今にも娘を失ってしまうかのように。
部屋の中央に、ヴァンダーのホログラムが揺らめいていた。
「もう言ったはずだ。」
冷たい声が響く。
「ノアへ向かう者は誰一人いない。あの要塞は基地ではない……墓場だ。」
ララはゆっくり顔を上げた。
赤く腫れた目でホログラムを睨む。
「……なら」
声は震えていた。
「私が一人で行きます!」
空気が凍りついた。
「兄を見捨てるなんて、絶対にできない!」
ホログラムが揺れ、そして消えた。
沈黙が戻る。
ラウラは娘の手を握る。
「ララ……」
震える声だった。
「リーが死んだら……私は耐えられない……」
ララは目を閉じた。
その瞬間だけ、彼女は戦士ではなく、ただの妹だった。
秘密の集まり
数分後、ララは急ぎ足で通路を歩いていた。
扉が開く。
中にはリウ、闘技場から解放された戦士たち、そして“岩の民”の女性たちがいた。全員が彼女を見つめる。
ララは深呼吸した。
「……リーが捕まりました。」
誰も言葉を発しない。
「ヴァンダーは救出を禁じました。」
闘技場の元戦士の一人が前へ出る。体には無数の傷跡。
「もしリーがいなければ……俺はまだ檻の中で獣のように戦わされていた。」
拳を握る。
「命をもらったんだ。黙っていられるか。」
ジュンが岩の民の女性の手を握る。
「リーは、私たちのために一人で軍隊に立ち向かいました。」
ララを見つめる。
「今度は私たちの番です。」
その時、リウが口を開いた。
「……結論は出ている。」
腕を組む。
「行くぞ。」
決意
一人、また一人と頷いていく。
「彼が倒れるなら……一人じゃない。」
元闘士が言う。
「最後まで共に行きます。」
岩の民の女性。
ジュンがララを見る。
「レオンはもう向かっています。彼一人に背負わせるわけにはいきません。」
ララは拳を握りしめた。
涙は止まらない。
だがその瞳には、恐怖ではなく光が宿っていた。
「……決まりね。」
顔を上げる。
「ノアへ行く。」
ヴァロンの介入
警報が鳴り響いた。
ホログラムが出現する。
ロード・ヴァロンだった。
「やめろ。」
重い声。
「お前たちはノアを知らない。軍勢ですら消えた場所だ。行くな。」
誰も動かない。
リウが一歩前に出る。
「失礼を承知で言います。」
まっすぐ見つめた。
「俺たちは軍隊じゃない。」
一拍置く。
「仲間です。仲間を見捨てることはしない。」
ホログラムは消えた。
ヴァロンは、それ以上止めなかった。
出発
ハンガーが開く。
補助艦の準備が始まる。
ララは母の手を握った。
ラウラは抱きしめる。
「待ってて、リー……」
ジュンがララの肩に手を置く。
「彼は私たちを救った。」
微笑む。
「今度は私たちが。」
エンジンが点火。
船はゆっくり離陸し、やがて宇宙へと飛び出した。
最後の場面
窓の外、星々が流れていく。
誰も話さない。
だが全員が同じ想いだった。
命令に背き、
恐怖に抗い、
不可能へ向かう。
リーはただの戦士ではない。
彼は――
彼らがまだ「信じる理由」だった。
そして今、彼らはその理由を取り戻しに行く。
第47話へ続く――
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
今回は大きな戦闘はありませんが、物語の中ではとても重要な回です。
このエピソードは「力」ではなく「想い」がテーマになっています。
リーという人物は、仲間を作ろうとして動いたわけではありません。
むしろ彼は一人で背負おうとしたキャラクターです。
しかし結果として、彼の行動は多くの人の人生を変えていました。
誰かを救う行為は、その場だけで終わりません。
時間が経ってから、別の形で返ってくることがあります。
レオンは信念で動き、
リーは覚悟で動き、
そして今回、仲間たちは「恩」で動き始めました。
次回はいよいよ、救出隊がノアへ到達します。
アレスの要塞での戦いは、さらに激しくなっていきます。
ブックマークや感想、本当に励みになっています!
また次の話で会いましょう!




