黒き天使(ブラック・エンジェル) 第二期 第36話 「最後のヴィデウ」
いつも『黒き天使』を読んでくださり、本当にありがとうございます。
前回まで、物語は大きく動き始めました。
リーはクライザードの未来のために戦い続け、宇宙全体を揺るがす存在になりつつあります。一方でレオンは、力ではなく「言葉」と「信念」で人々を救おうとしています。
今回のエピソードは戦闘中心ではありません。
レオンが初めて、個人ではなく“多くの星の指導者たち”に向けて真実を語る回になります。
剣で救うのか、言葉で救うのか。
この作品のテーマの一つが、少しずつはっきりしていく回です。
それでは、第36話をお楽しみください。
灰色の雲に覆われた未知の惑星。
大気は重く、放射の霧が空を濁らせ、生命の気配すら感じられない世界だった。
その地の奥深く、巨大な洞窟の中で、一人の男が膝をついていた。
――ヴィデウ。
彼は涙を流しながら、声を震わせ祈り続けていた。
「……どうか……どうかお赦しください……」
暗闇しかなかった洞窟に、突然、光が差し込んだ。
柔らかく、それでいて圧倒的な光。
男は顔を上げる。
そこに立っていたのは、一人の存在だった。
言葉が出ない。だが、本能で理解した。
――この方だ。
光の中に立つその存在は、静かに語りかける。
「恐れることはない。」
穏やかな声が、洞窟全体に響いた。
「あなたに使命を与える。これから起こることを見せよう。」
その存在――イエスが、ヴィデウの頭に手を置く。
次の瞬間、視界が白く弾けた。
無数の光景が流れ込む。
戦争、炎、崩壊する星々、そして――一人の少年。
レオン。
ヴィデウの目から、さらに涙が溢れた。
その頃、アルファ組織の母艦では、会議が開かれていた。
中央に青いホログラムが浮かび、全ての視線がそこに集中している。
光が揺れ、映像が結ばれる。
現れたのは――リーだった。
「心配するな。」
落ち着いた声で彼は言う。
「俺は自分のやっていることを理解している。アレスの宮殿には内通者がいる。スピルリアンは介入しない。これは……クライザード族の戦いだ。」
部屋がざわめく。
「トーナメントには戻る。」
通信が終わると同時に、空気が一気に張り詰めた。
ザイプリアの評議員が苛立った声を上げる。
「見ましたか、ロード・ヴァロン!あの少年は誰にも敬意を払わない。王になれば、もっと危険です!」
ヴァロンは無表情のまま答えた。
「……だからこそ、敵に回すな。」
その一言で、会議室は静まり返った。
その時、艦のコンピュータが警告音を鳴らした。
新たな通信が入る。
映像に現れたのは、惑星ホルタの指導者だった。
「ローラ様。リーの騒動は聞いています。しかし、我々の目的は別です。」
彼は真剣な目で続けた。
「“黒き天使”の少年に話をしてほしい。100以上の惑星の指導者と、5000人の代表が集まっています。彼の語る神について、聞きたいのです。報酬は支払います。」
レオンとララは顔を見合わせた。
ララが微笑む。
ローラは迷い、ヴァロンを見る。
「……受けよう。」
その言葉で決まった。
レオン、ララ、リウはホルタへ向かうことになる。
惑星ホルタは、これまでのどの星とも違っていた。
空は深い緑に染まり、巨大な樹木が大地を覆い、野生の獣が大地を駆けている。
巨大な切り株の上に、レオンは立った。
数千の観衆が静まり返り、彼を見つめている。
彼はゆっくり口を開いた。
「すべての始まりに、神はすでに存在していました。」
観衆の空気が変わる。
「そして神の言葉によって、最初の存在――イエスが生まれました。」
ドローンが空中に映像を投影する。
創造、天使、そして反逆。
ルシファーの堕落。
カイロスの反乱。
神を名乗った存在たち。
「偽りの神々は宇宙を壊しました。でも、神は独裁者ではありません。強制された崇拝を望んでいない。」
レオンの声は強くなる。
「あなたたち自身が選ぶんです。」
彼はララを見る。
「俺はクライザード。ララはザイプリア人。それでも理解し合えた。」
彼は観衆へ向き直る。
「なら、宇宙も変われるはずです。」
静寂。
次の瞬間――拍手が湧き上がった。
涙を流す者。
膝をつく者。
祈りを始める者。
ララは目を潤ませ、微笑んでいた。
帰還の艦が宇宙へ上昇していく。
惑星ホルタが小さくなっていく中、ナレーションが響く。
――戦争と陰謀が広がる宇宙で、真実の言葉は確かに芽吹き始めていた。
だが、それを望まない者たちもまた、動き始めていた。
静かに、確実に。
新たな嵐が近づいていた。
後書き
第36話を読んでいただき、ありがとうございます。
今回は戦いではなく、「言葉」が中心の回になりました。
レオンは剣ではなく、信念で宇宙に影響を与え始めます。
しかし、思想は力よりも危険です。
レオンの言葉は希望を生みますが、同時に大きな敵も生み始めています。
そして、ヴィデウが見た未来――それがこれからの物語の重要な鍵になります。
次回もよろしくお願いします!
第36話まで読んでいただき、ありがとうございました!
この回はアクションよりも「意味」を重視したエピソードでした。
レオンはまだ強さではリーに届いていません。ですが、彼にはリーとは違う力があります。それが「心に触れる力」です。
リーは“争いの中で未来を切り開こうとする者”。
レオンは“救いを通して未来を変えようとする者”。
そしてアレスは“支配によって平和を作ろうとする者”。
この三人の思想の衝突こそが、『黒き天使』の物語の中心になります。
また、今回登場したヴィデウの存在と彼が見た未来は、今後の展開に大きく関わってきます。
これから物語はさらに大きく動き始めます。
作者ページには、キャラクタープロフィール・外伝・そして作品世界の音楽も公開していますので、よければそちらもぜひご覧ください!
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
次回もよろしくお願いします!




