「創造主」
いつも読んでくださり、ありがとうございます。
この章では、レオンの物語の裏側――リーの過去と、物語の核心に近づく重要な出来事が描かれます。
それぞれの人物が背負っているもの、そして彼らがなぜ戦うのかを、少しずつ明かしていきます。
まだ多くの謎が残っていますが、すべてはこれから繋がっていきます。
どうか最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。
第5話「創造主」
超空間を進む宇宙船の窓の向こうで、無数の星々が光の線となり、長い回廊のように流れていた。
操縦室に一人立つリーは、星座座標を映し出すホログラムを静かに見つめている。
(あの種族……あの惑星……)
(何かが引っかかる。すべてと繋がっている気がする……)
胸の奥の違和感が消えなかった。
救出された戦士たちは、組織内の広い部屋に収容されていた。
金属製のベッドが並び、柔らかな人工照明が、かつての闘技場の残酷な光を忘れさせるように照らしている。
包帯を巻いた者、無言で座り込む者。
自由になったはずなのに、まだ鎖が残っているかのような沈黙だった。
そこへレオンが入ってくる。
真剣な表情だった。
一人の戦士が立ち上がり、感情をこめて言った。
「神に感謝するよ。あの日、戦いの前に必死に祈ったんだ」
レオンは静かに答えた。
「そうは思わない方がいい。
もし、あそこから出られた理由を知ったら……君はその神に失望するかもしれない」
戦士は眉をひそめる。
「どういう意味だ?」
「僕の仕える神が、僕に現れた。そして、助け出すと言った」
別の男が興味を示す。
「どんな神だ?」
レオンは迷わず言った。
「三位一体の神――父と子と聖霊だ」
周囲がざわめく。
「聞いたことがないな」
レオンは穏やかに続ける。
「文化が違えば、神の現れ方も違う。
……“創造主”という存在を聞いたことは?」
部屋の奥にいた老人がゆっくり立ち上がった。
「若いのに……なぜそれを知っている?」
レオンの目が輝く。
「あなたは知っているんですか?」
老人は頷いた。
「私の星の預言では、創造主はいつか宇宙を滅ぼすという。
人々の行いが、もはや喜ばれないからだと」
彼は遠くを見る。
「長く生きて分かった。
この宇宙は、ずっと前から壊れている」
レオンは静かに言った。
「僕は創造主ではなく、その“御子”を見ました。
僕の星で、大きな犠牲を払った存在です」
部屋が静まり返る。
「人々が罪に沈んだとき……
その方は肉体を持ち、すべての人のために命を捧げました」
別の戦士が鼻で笑う。
「どの星にもいるさ。希望を語る英雄気取りがな」
レオンは怒らなかった。
「……かもしれない。
でも、絶望した人に希望を与えることが間違いですか?」
男は苦く笑った。
「正しく生きて得たものは苦しみだけだった。
闘技場が世界の真実だ――戦うか、死ぬか。
だから神なんて捨てた」
そして言う。
「どうせ、その神も人に殺されたんだろ?」
レオンは黙ってうつむいた。
男は笑った。
「やっぱりな」
ヴィデウ星。
霧と赤い警告灯に包まれた廃墟の街を、リーは一人歩いていた。
細い路地の奥、赤い扉へ続く階段がある。
ノックしようとした瞬間――
扉が勝手に開いた。
(入れ、リー。待っていた)
心に直接声が響く。
中は蝋燭だけが灯る小さな部屋。
テーブルの前に、ひどく年老いた預言者の女が座っていた。
「座りなさい」
リーは従う。
彼女は真っ直ぐ見つめた。
「時が来た。
創造主は宇宙を消そうとしている」
リーの目が揺れる。
「それを止める鍵は……あの少年だ」
彼女の声が鋭くなる。
「何があっても命をかけて守れ。
育てよ。
そして――妹を彼から離すな」
静寂。
「彼女は、この物語の要となる」
ゆっくりと目を閉じる。
身体が前に倒れた。
リーは瞬間移動し、抱きとめる。
言葉が出なかった。
ヴィデウの墓地。
黒い墓石と灰色の空。遠くで雷が鳴る。
リーは墓の前に立つ。
「どういう意味だ……?」
「リムに関わるあの恐怖……クリザード神カイロスが戻るのか?」
空を見上げる。
「もし覚醒すれば……災厄になる」
小さく呟く。
「創造主……本当に存在するのか……?」
雷が空を裂いた。
組織本部。
白い光の廊下をリーが歩く。隊員たちが敬礼する。
彼は会議室の扉を開いた。
立ち止まる。
すでに――
クスプリアン評議会の全員が揃っていた。
半円状に座る指導者たち。儀式服姿。
リーは入口に立ち尽くす。
扉が背後で閉まった。
――暗転。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
この物語は「戦い」だけでなく、「選択」と「信念」をテーマにしています。
登場人物たちはそれぞれの正義を持ち、時にはぶつかりながら前に進んでいきます。
もし少しでも続きが気になったり、面白いと感じていただけたら、評価や感想をいただけるととても励みになります。
次の話もぜひ読みに来てください!




