アンジョ・ネグロ 第二部 ― 第11話「過去の鎖」
前書き:
第11話を読みに来てくださり、ありがとうございます!
今回は少し雰囲気の違う回になります。
これまであまり語られてこなかったリウの過去――
彼がなぜ戦い続けているのか、その理由に触れる物語です。
派手な戦闘は少ないですが、物語にとってとても大切なエピソードになります。
最後まで読んでいただけたら嬉しいです!
アルファ組織の基地は、かつてとは別の場所のように変わっていた。
訓練場では兵士たちが武器を振るい、整備区画では技術者たちが宇宙船の修理に追われている。
補給庫には資源が積み上げられ、格納庫には新たな艦が並び始めていた。
ギガ2での作戦以降、各惑星から支援が届いているのだ。
かつては百人しか残らなかった組織が、再び動き始めていた。
しかし――
その賑わいの中で、一人だけ静かに座っている男がいた。
リウである。
彼は壁にもたれ、目を閉じていた。
周囲の喧騒が、まるで遠い世界の音のように聞こえている。
そして意識は、ゆっくりと過去へ沈んでいった。
それは、まだ彼がアルファの制服を着る前の話。
ヴァルドラという惑星があった。
豊かな森と川に恵まれ、空には翼を持つ鳥が飛び交う美しい星。
そこが彼の故郷だった。
「見て、父さん!」
幼い少年が手をかざす。
小さな光の輪が、指先で揺れていた。
「できた! 光ったよ!」
リウは微笑む。
「上手だ。だが覚えておきなさい。
鎖は縛るための力じゃない――守るための力だ」
娘が走ってきて、彼の腕に抱きつく。
その様子を、妻が優しく見つめていた。
「あなたは“師”と呼ばれても、やっぱり父親ね」
彼は苦笑し、家族を抱き寄せる。
それが、彼の最も幸せだった時間だった。
ある日、空が暗くなった。
雲ではない。
巨大な影が大気を覆っていた。
無数の艦隊――
クライザディアンの侵攻だった。
轟音が大地を揺らし、閃光が都市を焼き払う。
ヴァルドラの戦士たちは必死に抵抗するが、力の差はあまりにも大きかった。
リウは鎖を展開し、敵兵を次々と打ち倒す。
だが数が違う。
妻の叫びが届く。
「リウ! 子どもたちを連れて逃げて!」
彼は子どもたちの手を掴み、走り出す。
――その瞬間。
爆発が起きた。
視界が白に染まる。
衝撃で吹き飛ばされ、彼は地面に叩きつけられた。
顔を上げた時、見えたのは炎だった。
崩れ落ちる建物。
燃え上がる街。
そして――
家族の姿が、炎の中へ消えていく。
「やめろ……」
声が震える。
「やめろ……!」
彼は叫んだ。
「やめろぉぉぉぉ!!」
鎖が暴走する。
光が荒れ狂い、地面を打ち裂く。
だが、何も守れなかった。
気づいた時、彼は瓦礫の中に倒れていた。
街は沈黙し、煙だけが空へ昇っている。
生き残った者は、ほとんどいなかった。
彼は血に濡れた手を見つめる。
(どうしてだ……)
(力があったのに……なぜ守れなかった……)
涙が頬を伝う。
彼はそのまま、意識を失った。
やがてカメラのように視点は遠ざかる――
いや、ただ時間だけが過ぎていく。
ヴァルドラは滅びた。
そしてこの日、
一人の男の心もまた砕けた。
それが、アルファ組織の戦士リウの始まりだった。
第11話 終わり
後書き:
第11話を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
リウという人物は、強い戦士であると同時に
大きな喪失を抱えた一人の人間でもあります。
彼の過去は、これからの物語やレオンたちの選択にも影響していきます。
また、『アンジョ・ネグロ』の世界をより楽しめるように、
作者ページにいくつかのコンテンツを公開しています:
・世界観音楽(テーマ曲/挿入歌)
・外伝ワンショット(短編ストーリー)
・キャラクタープロフィール(設定資料)
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次回も引き続きよろしくお願いします!




