アンジョ・ネグロ — 第五季 第204話「犠牲」
守るために戦う者と、
守るためにすべてを捨てる者。
その違いが――
世界の運命を分ける。
K11の衛星。
終わりの瞬間が迫っていた。
カウントダウン。
00:00:14
レニは地面に膝をついたまま、
ヴィニーを強く抱きしめていた。
震える声。
「……俺は……何をしたんだ……」
涙が止まらない。
その姿を見ながら、レオンは静かに武器を握る。
巨大兵器。
完全に充填されていた。
止める時間は、もうない。
レオンは理解した。
「……壊せない」
小さな声。
だが、その瞳は揺れていなかった。
深く息を吸う。
「なら――」
握る。
天の剣。
五つの力が解放される。
炎。
水。
大地。
風。
雷。
すべてが彼の周囲で渦を巻く。
レオンはレニを見る。
そして――
優しく言った。
「娘を守れ」
その言葉に、レニは顔を上げる。
だがもう遅い。
レオンは走り出していた。
一直線に。
兵器へ。
――――――――――
母艦。
全員が見ていた。
カウントダウン。
00:00:03
誰も息をしていない。
00:00:02
ナンドの拳が震える。
00:00:01
ララの目から涙が溢れる。
00:00:00
発射。
――――――――――
光。
それは、終末そのものだった。
巨大なエネルギーの奔流。
宇宙を裂き、一直線にクライザドへ向かう。
だが。
その前に――
一人の影が立つ。
レオン。
彼は剣を構える。
「うおおおおおおおおおおおお!!!」
光が衝突する。
BOOOOOOOOOOOM
衝撃が月全体を揺らす。
重力すら歪む。
レオンの体が押し潰される。
それでも――
止まらない。
止めない。
「絶対に……通さない……!」
歯を食いしばる。
剣が光を切り裂く。
だが。
圧倒的すぎる。
エネルギーが全身を焼く。
骨が軋む。
血が宙に舞う。
それでも。
彼は一歩も引かない。
「守るって……決めたんだ……!」
その瞬間。
月に亀裂が走る。
CRACK
さらに広がる。
CRAAAAAASH
地面が崩壊する。
世界が壊れていく。
それでもレオンは叫ぶ。
「まだだあああああああああ!!!」
光と闇がぶつかり合い――
そして。
すべてが白に染まった。
――――――――――
静寂。
母艦。
誰も動かない。
誰も話さない。
モニターには――
何も映っていなかった。
月は消えていた。
完全に。
ジラがその場に崩れ落ちる。
「……レオン……」
ナンドが地面を殴る。
「ふざけんなよ……!!!」
声が震える。
「戻ってこいよ……!」
――――――――――
隔離室。
ララの叫びが響く。
「レオオオオオオオン!!!」
その瞬間。
何かが壊れた。
彼女の中で。
瞳が変わる。
黄金。
獣の瞳。
身体が震える。
毛が浮かび上がる。
力が爆発する。
Xprianの光と、獣の本能。
混ざり合う。
暴走。
ラウラが息を呑む。
「ララ……!」
だがララは止まらない。
その視線はただ一人。
オーディンへ。
「……オーディン」
低い声。
冷たい殺意。
「あなたを……殺す」
――――――――――
広場。
影が開く。
ジラが現れる。
腕の中には――
レニとヴィニー。
彼女は最後の瞬間、
二人を引き戻していた。
レニは地面に崩れ落ちる。
空を見る。
何もない空。
「……俺は……」
涙が止まらない。
「何をしたんだ……」
ヴィニーが抱きつく。
泣きながら。
――――――――――
群衆の中。
ダリアムが笑う。
「これで終わりか」
冷たい声。
「いい気味だ」
――――――――――
オーディンの怒りが爆発する。
「計画が……!」
その瞳は狂気に満ちていた。
「全て台無しだ……!」
彼は叫ぶ。
「この責任は――必ず取らせる!」
その声が母艦全体に響く。
「Xprianの怒りは……止まらない!」
――――――――――
暗闇の部屋。
六つの影。
パトリアルたち。
彼らもまた沈黙していた。
計画は失敗した。
だが――
その目は、まだ死んでいなかった。
――――――――――
クライザド。
戦争の準備は続いていた。
誰も知らない。
自分たちが――
消えかけていたことを。
アレスは空を見上げる。
何も感じていない。
まだ。
――――――――――
母艦。
ララは空を見ていた。
壊れた月。
消えた光。
涙が流れ続ける。
「……レオン……」
風が吹く。
静かに。
そして――
遠く。
宇宙の深淵で。
小さな光が、ひとつ。
闇の中を漂っていた。
まだ消えていない。
――終わり。
彼は消えたのか。
それとも――
新たな存在へと変わったのか。
物語は終わらない。




