『砂と血』
星々のあいだでは、誰も知らない戦いが続いている。
それは剣や力だけの争いではない。信仰、選択、そして心の戦いだ。
人間の少年レオンは、人生に意味を見いだせずに生きていた。
しかしある夜、彼の前に“イエス”が現れる。
そして彼は宇宙の真実を知ることになる――
天使の反乱、堕落した種族、滅びに向かう世界。
その中で、レオンは最も恐れられた戦闘種族「クリザード」の力を与えられてしまう。
光と闇。
自由意志と運命。
救いと裁き。
これは、ただの戦いの物語ではない。
世界を救うために選ばれた、ひとりの少年の“信仰”の物語である。
第2話『砂と血』
眩い光が消えた瞬間、レオンの肌を焼くような熱風が吹きつけた。
振り返っても、そこにあるはずの光の門はすでに消えている。
視界いっぱいに広がるのは、どこまでも続く砂の海だった。果ての見えない砂丘と、容赦なく照りつける太陽。
レオンは目を細め、額に手をかざした。
「……マジかよ。
どうしてイエスと一緒の試練って、いつも砂漠なんだ?」
隣に立つイエスは、静かに微笑んだ。
「砂漠には余計なものがない。
だからこそ、本質だけが残る。
ここで、君は本当の自分を知ることになる。」
レオンは大きくため息をついた。
「“本当の自分”ね……
とりあえず干からびて死ぬとか、勘弁してほしいけど――」
その時だった。
遠くから、車輪と蹄の音が響いてきた。砂煙を巻き上げながら近づいてくる一団。武装した商人たち。そして、その後ろには鎖で繋がれた十人ほどの人影。
一人の商人がレオンを指さした。
「おい見ろ!
ガキが一人だ!」
「ツイてるな。
囲め!」
次の瞬間、レオンは取り囲まれていた。
「待て! あんたたちは――」
言い終える前に、後頭部へ重い一撃が叩き込まれる。
視界が暗転した。
次に目を覚ました時、レオンは冷たい床の上に転がっていた。
手足は拘束され、湿った空気が肺にまとわりつく。遠くから、地鳴りのような歓声が響いていた。
「……ここは……?」
答えはない。
一方その頃、豪華な控室。
壁にもたれながら闘技場の様子を映す水晶モニターを見つめる青年がいた。鋭い眼差しの男――リー。
「今日は何か面白いのはあるか?」
側にいた補佐が答える。
「商人が連れてきた少年がいます。
戦闘力はほぼゼロ。ですが……主催者は試しに闘技場へ出すようです。」
リーはわずかに眉を上げた。
「……弱者ほど、予想外を見せるものだ。」
歓声が爆発する。
次の瞬間、レオンの体は巨大な闘技場の中央へと投げ出された。
人工の太陽が容赦なく照りつける。
高台から、老いたクリザード族の主催者が笑った。
「新しい玩具だ!
肥料になるか、楽しませてくれるか――見ものだな!」
重い鉄門が開く。
現れたのは、全身に傷を刻んだ巨漢。巨大なハンマーを担ぎ、獣のような眼でレオンを睨みつける。
「潰せ! 潰せ!」
観客の叫びが響く。
レオンはふらつきながら立ち上がった。
「……なにが……起きてる……?」
次の瞬間、ハンマーが振り下ろされる。
レオンは咄嗟に転がり、間一髪で回避した。地面が砕け、砂が舞い上がる。
(……遅い……?
いや……時間が歪んでる……?)
胸の奥で何かが脈打った。
心臓が戦太鼓のように鳴り響く。
視界が揺らぐ。
茶色だった瞳が、黄金の光へと変わる。
風が渦巻き、体が軋む。
黒い毛が全身を覆い、爪が伸び、牙が現れる。
――黒き狼の姿。
闘技場が静まり返った。
「……なんだ……あれは……」
次の瞬間、惨劇が始まった。
レオンは獣のように跳び、爪で裂き、牙で噛み砕く。巨漢の抵抗は無意味だった。血が砂を染め、闘技場が震える。
控室で、リーの目が見開かれる。
「……ありえない。
クリザード族ですら、あんな変異は……」
やがてすべてが終わった。
レオンは人の姿へ戻り、その場に倒れ込む。震える手を見つめ、血に濡れた指先を見て呟いた。
「……俺は……何だ……?」
意識が闇へ沈んだ。
夜明け前。
特別牢の扉が静かに開く。
フードを被った男が入ってきた。
「……誰だ……?」
「この囚人は買い取った。
二人きりにしろ。」
低く威圧的な声。
兵士たちは渋々去っていった。
レオンは壁際へ身を寄せる。
「……あんた……見たのか……?」
「ああ。だから来た。」
リーは小さなチップを差し出した。
「時が来たら合図する。
その時、お前をここから出す。」
「……なぜ……?」
リーはわずかに目を細めた。
「もしお前が、俺の考えている存在なら――
この世界はお前を必要としている。」
足音が近づき、リーは一歩退いた。
「生き延びろ、少年。」
光が揺らぎ、彼は消えた。
暗闇の中、レオンは自分の手を見つめ続けた。
(俺は……
どんな怪物になろうとしている……?
なぜ……俺なんだ……)
砂漠の風の音と、心臓の鼓動だけが静かに響いていた。
――続く
はじめまして、作者のレオンです。
この物語は、バトルや異世界だけでなく、「なぜ人は生きるのか」「なぜ苦しみが存在するのか」をテーマにして書いています。
私は日本の作品やアニメが大好きで、その影響を受けてこの作品を作りました。
まだ日本語は完璧ではありませんが、心を込めて書いています。
少しでも楽しんでもらえたら、とても嬉しいです。
よろしくお願いします!




