第百八十五話『預言の覚醒』
人は、どこまで自分でいられるのか。
絶望の中で、
力に身を委ねるのは簡単だ。
だが――
それでも抗うことに意味はあるのか。
――鼓動。
ドクン。
ドクン。
世界が揺れる。
レオンの視界は崩れていた。
音が遠い。
体が重い。
そして――
声。
『レオン……』
低く、深く、甘い声。
『もう抗うな』
闇が広がる。
『ガマリエルを倒せるのは……我だけだ』
レオンの意識が沈む。
「……違う」
かすれた声。
『受け入れろ』
『力を』
――その瞬間。
目が開く。
色が変わる。
黄金と深紅。
融合。
そして――
“それ”は目覚めた。
黒き翼が広がる。
大地が裂ける。
空が赤く染まる。
神殿が崩壊する。
ララが叫ぶ。
「レオン……!」
その姿は、もはや人ではなかった。
カイロス。
完全顕現。
レニが息を呑む。
「……あれが」
ナンドが立ち上がろうとする。
「クソ……やばすぎるだろ……」
ジラの声が震える。
「……預言通り」
静寂。
次の瞬間。
世界が爆ぜた。
カイロスが消える。
そして現れる。
ガマリエルの目の前に。
拳が振り下ろされる。
衝突。
衝撃波。
神殿が吹き飛ぶ。
ガマリエルが弾き飛ばされる。
柱を貫き、壁を砕く。
轟音。
空間が悲鳴を上げる。
ナレーションのように、空気が震える。
――預言が、現実となる。
ガマリエルが立ち上がる。
翼が焼けている。
それでも笑う。
「見たか……!」
声を張り上げる。
「これがカイロスだ!」
エテルノたちがざわめく。
恐怖。
混乱。
「私は正しかった!」
ガマリエルの声が響く。
「これを封じるために、私は戦ってきたのだ!」
空気が歪む。
一方で――
ララが前に出る。
震えながら。
それでも。
「違う!!」
声が響く。
「あなたが壊したのよ!」
涙がこぼれる。
「神は離れてなんかいない!」
ガマリエルが笑う。
「ならば見ろ」
指を指す。
カイロスの破壊。
壁が崩れる。
光が消える。
「これが答えだ」
沈黙。
ララは歯を食いしばる。
「違う……!」
叫ぶ。
「レオンは……負けてない!!」
その瞬間。
カイロスが動く。
五つの元素が集まる。
炎。
雷。
風。
水。
大地。
すべてが混ざる。
凝縮。
「終わりだ」
低い声。
世界が震える。
その力は――
“消滅”。
誰も動けない。
ナンドは倒れている。
レニも。
ジラも。
誰も間に合わない。
ただ一人。
ララだけが走る。
「レオン!!」
光を纏う。
爆発の中へ。
「お願い……!」
叫ぶ。
「戻ってきて……!」
彼女は止まらない。
恐怖を越えて。
絶望を越えて。
ただ、信じて。
目の前に立つ。
腕を広げる。
涙を流しながら。
「あなたは……あなたでしょ……!」
沈黙。
カイロスの目が揺れる。
ほんの一瞬。
ほんのわずかに。
人間の色が戻る。
だが――
力は止まらない。
振り下ろされる。
その瞬間。
世界が白に染まる。
――閃光。
――轟音。
――そして。
完全な静寂。
何も見えない。
何も聞こえない。
ただ。
一つだけ。
残された問い。
――彼は、まだレオンなのか。
第百八十五話を読んでいただき、ありがとうございます。
ついに、預言の核心である「カイロスの覚醒」が描かれました。
圧倒的な力と、それに飲み込まれそうになるレオンの存在。
そして、ララの想いがその中でどう作用するのか。
この戦いは、ただの力の衝突ではなく――
「心」と「選択」の戦いでもあります。
次回、衝撃の結末へ。




