第178話 — 「永遠の王国」
信仰は、失われるものではない。
ただ——
沈黙の中で試されるだけだ。
そして今、
その沈黙を破る者が現れる。
重圧が、すべてを押し潰そうとしていた。
艦は軋み、金属は悲鳴を上げる。
外では——
“永遠の者たち”が、無数にこちらを取り囲んでいた。
「この領域に、異物は不要だ」
声が響く。
それは音ではない。
存在そのものが語りかけてくるような圧だった。
「排除する」
その瞬間。
レオンが一歩前に出た。
静かに——
しかし、確固たる意志で。
彼の手に、光が集まる。
顕現する。
天の剣。
刃が空間に触れた瞬間。
圧力が砕けた。
まるでガラスのように。
ナンドが叫ぶ。
「やばいぞ!船がもたねぇ!」
艦体が崩壊を始める。
警報。
振動。
崩壊。
「守る!」
ララが前に出る。
両手を掲げる。
黄金の光が広がる。
「光の盾!」
その瞬間。
すべてが静止した。
崩壊する艦の中で——
彼らだけが守られていた。
レニが窓の外を指差す。
「見ろ……!」
そこには——
広がる世界。
無限に続く、平面の王国。
光でできた都市。
宇宙の中に存在する、もう一つの“世界”。
「ここじゃ戦えねぇ……降りるしかない」
外では、永遠の者たちが動き始めていた。
「幻影展開」
ザイラが呟く。
その瞳が光る。
「星のヴェール」
空間が歪む。
艦が消える。
存在そのものが隠される。
「……消えた?」
永遠の戦士が周囲を見渡す。
「探せ。奴らは王国へ向かうはずだ」
数百の存在が散開する。
静寂。
幻影の中で、彼らはまだそこにいた。
ナンドが息を整える。
「……助かったな。でも長くはもたねぇだろ」
ララの呼吸が荒い。
「この盾……限界が近い……」
レオンは静かに言う。
「意味があるはずだ」
全員が彼を見る。
「俺たちは偶然ここに来たんじゃない」
レニが鼻で笑う。
「じゃあなんだ。神様が呼んだってか?」
ララが微笑む。
「そうかもしれないよ」
その言葉に、ザイラが反応する。
一瞬だけ。
彼女の中で何かが揺れた。
その時。
レオンの瞳が変わる。
暗く。
深く。
カイロス。
「地に足をつけた瞬間——」
低い声が響く。
「奴らは俺の存在に気づく」
空気が凍る。
「そして知れば——」
間。
「お前たちは死ぬ」
ナンドが怒鳴る。
「やめろよ、それ!余計なこと言うな!」
レオンの瞳が戻る。
静かに。
「……行こう」
外。
黄金の盾がゆっくりと降下する。
だが——
それを阻むものがあった。
透明な壁。
世界そのものが拒絶している。
衝突。
ひび。
崩壊。
ララが膝をつく。
「……通れない……!」
その時。
レオンが前に出る。
剣を構える。
「なら——切る」
一閃。
見えない壁が裂ける。
光が割れる。
道が開く。
ララが最後の力を振り絞る。
盾を再展開。
全員を包む。
彼らは——
王国へと降り立った。
そこは、異世界だった。
光の塔。
流れる光の河。
星のように輝く存在たち。
すべてが調和していた。
ザイラが呟く。
「……綺麗……」
だが、その瞬間。
すべてが止まった。
無数の視線。
一斉に向けられる。
「……感じる」
一体の守護者が前に出る。
光が燃え上がる。
「この気配……」
沈黙。
そして——
叫び。
「カイロスだ!!」
王国が揺れる。
鐘のような警報。
光が荒れる。
「侵入者だ!」
「排除しろ!」
「王国を守れ!」
司令官が叫ぶ。
「奴らはカイロスを連れている!」
怒りが渦巻く。
光が武器に変わる。
「捕らえろ」
冷たい声。
「そして——創造主に届ける」
完全包囲。
逃げ場はない。
レオンたちは構える。
静かに。
だが確実に。
戦いは——
避けられない。
ついに足を踏み入れた“永遠の王国”。
だがそこは楽園ではなく、
過去と信仰が交差する戦場だった。
カイロスという存在。
創造主への想い。
すべてがぶつかる時——
次回、
「永遠の裁き」




