か行について
「か行についてどう思う?」
「家業?」
「か、き、く、け、こ」
「ああ、そっちね」
相馬はいつも唐突だ。
「か行が何?」
「どう思う?」
「抽象的すぎて分からん、何が聞きたいわけ?」
「言いづらいと思わん?」
そういうことか。たしかに言いづらい。た行やな行、ま行より…………いや。
「なんで日本語ってこんな言いづらいひらがなが多いんだろう…」
「そこ考え出すとキリないから今日はか行に絞ろう」
「うん…」
日本語作った人出てきてくれ頼む。なんでこんな言いづらくて使いづらい日本語をたくさん作ったんだ。
「バイトしてて思ったんだよ。『お聞きください』だの『お伺いします』だのさ、言いづらくて噛むんだよ。そこで思った、か行をなくそう」
「なんでそうなるかな」
話が飛躍しすぎだ。
「敬語のか行が言いづらいんだろ?か行をなくす必要はないだろ」
か行は悪くない。そんな日本語を作った人が悪い。
「尊敬語、謙譲語じゃなくて別の敬語使えばいいんじゃない?普通に丁寧語とか」
「けんじょう、ご…?」
「あ、ダメだ頭悪かったこいつ」
しかも国語が大の苦手なタイプだ。こいつは日々脊髄反射で生きている。
「お聞きください」、「お伺いします」もきっと、バイト先で叩き込まれたのだろう。
だってそんな言葉使えるわけないもん相馬が。
「…今調べたら最初に『お』とか『ご』をつけるのを美化語って言うらしい!美化語をやめればいいんだ!」
「でもそれたしかに丁寧語になるけどさ、やっぱりお客さんに使う言葉じゃないんじゃないかな」
「じゃあどうすればいいんだよおおおおおおぉぉぉ」
頭を抱えだした。
今普通に昼休みだから大声出すのやめようね。だから友達できないんだよ。
「もう我慢して、口角意識して発音するしかないよ」
「ああんそんなめんどいことできましぇん」
「えろくするな」
おふざけでもやるな、友達がもっとできなくなる。
「じゃあどうするんだよ、今回は解決できないぞ」
「意識するしかないのか…」
「意識してゆっくり喋れば案外行けるって」
「そんな暇を与えてくれないんだよ客は」
そうか?いやたしかに急いでるときはそうかもしれない。
「なら途中で言うのやめられるから万々歳じゃん」
「………?…!たしかに!!」
今こいつブラジルにいたか?
「なあんだそっか!じゃあいいじゃん解決解決~」
これでいいらしい。安直なやつだ。
「じゃあ試しに新しく覚えた美化語使ってみてよ」
「ええ~めんどくせ、いいよ」
「理央、お好きです」
「………ん」
間違ってるし気持ち悪いけど、相馬の頭の悪さを考えて良しとしよう。




