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異世界転生について

「異世界転生についてどう思う?」

「は?」


放課後の教室、スマホをいじりながら相馬は俺に尋ねてきた。

もちろん目の行く先はスマホだ。俺の方など見ていない。


「別に何も思わないけど…」

「流行りすぎだと思わない?」

「ああ、たしかに」


それは思う。

何が引き金になったのかは分からないが、唐突に投稿数が増え、書籍化漫画化アニメ化と順調に行く傾向にある。

まあそれはつまり、異世界転生ものにハマってる人が多い、流行っていると言っていいだろう。


「もはや社会現象だよな」

「だろ~?そこで、だ」

「え?」


相馬の目がスマホからこちらに向いた。


「どうやったらこの社会現象が収まると思う?」

「え、どうでもいい」


別に収まらなくてもいいだろう。人気というものはそのうち廃れていくのだ。何も今無理やり収める必要はないだろう。

俺は真顔だが、相馬は真剣だ。


「俺は異世界転生ものについて物申したい」

「え、はい」

「何故異世界転生したやつらはあんなにコミュ力が高くて魔法が強くてうんたらかんたらでやばいやつらばかりなんだよ。何が平凡だ、何が平凡だ!!」


二回言った。しかも語彙力がない。だがしかし言いたいことは分かる。


「つまり僻みってこと?」

「うん」

「急に落ち着くな」


素直だった。

でも気持ちは大いに分かる。何故なら俺らは友達がいないからだ。しかも顔も学力も平々凡々のそこら辺にいるふつーーーーーーーの男子高校生。

異世界に行ってもきっと、魔法は使えないし「あ…」だの「えっと…」だのしか言えない、ちょっとマシなカオナシ程度だろう。


「俺ら人見知りだもんな」

「うん」

「素直だ…」

「だから物申したいワケ」

「ギャル…」


とは言っても、相馬のスマホ画面にはあからさまに異世界転生ものの漫画がうつっている。

物申したいとは言ってもこいつもハマっているのだ。


「今はいいんじゃない?無理に収めなくても。俺らが飽きたら考えよう」

「飽きる気がしない」

「じゃあ尚更いいじゃん」

「物申したい、この社会現象に」

「だから友達いないんだよお前」


案外頑なだ。


「憧れてんだろ、きっと。この現実が嫌で疲れてるんだよ皆。だから異世界転生ものを読んで、もしかしたら異世界に行けるかもしれないって希望と刺激が欲しいんだよ」

「納得した」

「安直だな」


相馬の目はまたスマホに戻った。

スマホ画面をスライドさせる相馬を、肩肘をつきながら見守る。

ちなみに、俺らは授業中の手紙交換がバレて居残りさせられてる最中だ。小学生か。

手紙交換の内容もこんな感じで他愛もないものだ。


「なあ、理央」

「おん?」

「理央は異世界に何か持って行けるなら何がいい?」

「異世界転生ものにおける禁忌を犯してないか、それ」


普通スキルとかだろ聞くとしたらそこは。

しかしこの質問は簡単かと思えば難しい。持っていけるものは限られているだろう。そして大前提一つだ。言葉が抜けているが、相馬は大前提に一つを置いていると見た。

つまり、簡単に「この枕じゃないと寝れないから枕!」とか言えない状況だ。


「うーん、やっぱりスマホかな。現代人として手放せない。でもなあ、スマホあったら現実から目を逸らせないよな。どうしよう…」

「スマホかあ…」

「逆にお前はどうなんだよ」


相馬はスマホから俺に目をやる。

そして真剣な顔で、


「理央、かな」

「………うるさい」


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