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悪役令嬢にされたお姉様が○○されるのを断固阻止します!  作者: 夜宵
第四章 深紅の執着と、金色のイレギュラー

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48:解析の代償と、逃がさない視線

 婚約式から一夜。ティアリアは、ルイスフォルテから押し付けられた「通信用魔導具」を自室の机で分解し、その内部構造を食い入るように見つめていた。


「……信じられませんわ。この術式、既存の理論を三段階は飛び越えています。これをあの方が独学で組み上げたというのなら、恐ろしい才能ですわね」


 一晩かけて解析した結果、分かったことがある。この魔導具は、作り手であるルイスフォルテの膨大すぎる魔力を「あえて浪費させる」ことで、彼の肉体が魔力酔いするのを防ぐ緊急避難用の安全装置でもあったのだ。


(前世で彼が若くして亡くなった理由……おそらく、この溢れ出す魔力に肉体が耐えきれず、内部から焼き切れたのでしょう。……このまま放置するのは、私の流儀に反しますわ)


 翌日。ティアリアは迷いなく、2年生の校舎を離れ、上級生が通う4年生棟へと足を踏み入れた。


「あ、あの……ティアリア様? ここは4年生の……」

「用件があるのです。通していただけますか?」


 周囲の困惑を涼しい顔で受け流し、彼女が辿り着いたのは、廊下の隅にある日当たりの悪い読書スペースだった。そこには案の定、周囲の喧騒から逃れるように背中を丸め、分厚い魔導書に顔を埋めている青年がいた。


「ルイスフォルテ様。昨日の続きを話しに来ましたわ」

「ひいいっ!?」


 椅子から転げ落ちそうになった彼の肩を、ティアリアは逃がさぬよう両手で机に押し留めた。至近距離で覗き込まれ、ルイスフォルテの金色の瞳が激しく泳ぐ。


「て、ティアリアさん!? な、なんで……! ごめんなさい、昨日の魔導具、やっぱり変だったよね!? 捨ててくれていいから……!」

「捨ててなどいません。むしろ解析が面白すぎて寝不足ですわ。……ルイスフォルテ様、貴方の第五回路の組み方、あれは一体どういう計算ですの? 今すぐ説明してください。あと、その猫背。魔力の循環を阻害しています。……背筋を伸ばしてください」

「あ、う……あ……っ」


 ティアリアに有無を言わさぬ勢いで詰め寄られ、ルイスフォルテは顔を真っ赤にしてフリーズした。だが、魔導の話になると、彼は消え入りそうな声ながらも、驚くほど正確な理論を語り始めた。二人が術式を巡って火花を散らし始めたその時、背後から影が差した。


「……ルイス。お前、いつの間に私の義妹をそんなに熱心にさせているんだ?」


 そこには、眉間に皺を寄せたシエルが立っていた。シエルは、真っ赤になって震える親友と、彼を逃がさぬよう距離を詰めている妹を見て、呆れたような、けれど心配そうな表情を浮かべる。


「ルイス。お前に忠告しておく。ティアリアは一度興味を持った対象を、納得がいくまで徹底的に調べ尽くす。関わるなら覚悟しろ。命がいくつあっても足りないぞ」

「し、シエル……! 助けて……! ティアリアさん、怒ってるわけじゃない……んだよね……?」

「怒っていません。……ただ、これからは貴方の体調管理を含め、私が責任を持って指導させていただきますわ。ルイスフォルテ様、放課後は毎日、オルセン教授の研究室へ来てください。あそこなら誰にも邪魔されず、じっくりと魔力の最適化を進められますから。よろしいですね?」

「え、ええええっ!? お、オルセン教授の……!? あそこ、立ち入り禁止じゃ……」

「許可は既に取ってありますわ。よろしいですね?」


 有無を言わせぬティアリアの視線に、ルイスフォルテは小さく「はい……」と頷くしかなかった。シエルはその後ろ姿を見送り、「……あいつも災難だが、あんなに必死に誰かと話すルイスは初めて見たな」と、小さく独り言ちた。

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