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悪役令嬢にされたお姉様が○○されるのを断固阻止します!  作者: 夜宵
第二章 学び舎の影と、覚醒の輝き

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24:作戦の失敗と、聖魔力の覚醒

 公爵家が総力を挙げた反撃作戦は、極秘裏に実行された。


 ランドールとレオンハルトは、ヴァルドの注意を、政治的な追及に引きつけるという陽動作戦を仕掛けた。


 ランドールは、ロレンツォの不正を議題とし、ヴァルドの権威を揺るがすための王室の重鎮を招いた公式会議を終えた直後、敢えて警備を手薄にし、公爵邸へと戻った。


 これは、ヴァルドが政治的な動きの直後に、ランドールを排除しようと動くと読み、公爵邸へ引き寄せるための陽動だった。


 だが、ヴァルドの狡猾さは、ランドールの予想を上回っていた。


 公爵邸の裏庭で、警戒を強めていたランドールに対し、突如として強大な遠距離攻撃魔術が炸裂した。


「チッ、ヴァルドめ、遠距離攻撃魔術を使うとは!」


 ランドールは、自身の防御魔術で即座に対応したが、その攻撃は、彼を暗殺するためにヴァルドが40年の研究で編み出した古代禁術を応用したものだった。


 ランドールの防御魔術は耐えきれず、ランドールは左肩に魔術の直撃を受け、血を噴き出して倒れた。


 王城地下への潜入直前だったティアは、父の危機を家族の魔力接続を通じて即座に感知した。


「お父様!」


 ティアは、作戦続行を叫ぶレオンハルトの制止を振り切り、魔力炉への潜入を一時中断し、全速力で公爵邸へと引き返した。


「ナターシャ、お兄様。わたくしが戻るまで、絶対に動かないで!これは陽動ではない、本気の暗殺よ!」


 公爵邸の庭。ティアが到着したとき、リディアと、その場に居合わせたリルセリアが、倒れたランドールの傍に駆け寄っていた。


「お父様、しっかりして!」


 ティアは父の傷を見た。左肩の傷は深く、ヴァルドの魔術が細胞組織を壊死させている。


 その光景を目の当たりにしたリルセリアの顔色は、恐怖と悲しみで真っ白になった。


(お父様が……!私たちの家族が、こんな目に遭うなんて……!)


 リルセリアは、これまでのロレンツォからの屈辱、殿下の無関心、そして家族の安寧が破られた深い絶望を感じた。そして、その絶望は、ティアやレオンハルト、両親から受け取った途方もない愛情と、シエルへの確かな愛によって、強烈な「守りたい」という意志へと反転した。


 その瞬間、リルセリアの身体から、白く、温かく、全てを包み込むような光が溢れ出した。

 それは、ティアが前世の記憶でも、今世の解析でも見たことのない、純粋で神聖な魔力だった。


「お父様を……治して!」


 リルセリアが、その覚醒した魔力をランドールの傷口に両手で触れさせた瞬間、ヴァルドの邪悪な魔力によって黒く壊死していた細胞組織が、白い光に包まれ、瞬く間に再生していった。


 ティアとリディアは、その光景に言葉を失った。


「これは……聖魔力……!お姉様……!」


 それは、伝説にしか存在しない、負の魔力を浄化し、傷を癒やす、奇跡の魔力だった。リルセリアの魔力は、前世の運命を打ち破ろうとする強い魂と、今世の家族への深い愛によって、ついに覚醒したのだ。


 ランドールの傷は完全に治癒した。しかし、ヴァルドが家族の命を狙って本気で動き出したという事実は、彼らを震え上がらせた。


 ティアは、覚醒したばかりで消耗し、意識を失ったリルセリアを抱きしめながら、決断した。


「お父様!ヴァルドが私たちを本気で排除にかかっているわ。そして、リルお姉様の聖魔力こそが、奴の40年の禁術を完全に浄化し、破壊できる唯一の力よ」


 ランドール公爵も、意識を失い消耗した娘を見て、冷静な判断を下した。


「そうだ。作戦は中断する。レオンハルト、王城へ急ぐな。最優先は、リルセリアの保護と回復だ。彼女が目覚めるまで、一歩も公爵邸から出すな。リディア、君はリルセリアに付き添い、万全を期せ」


 公爵家は、最終決戦を前に、最強の守りの布陣を敷いた。ティアとレオンハルトは、回復を待つ間、リルセリアの聖魔力を最大限に活かすための最後の、詳細な潜入計画を練り始めた。



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