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悪役令嬢にされたお姉様が○○されるのを断固阻止します!  作者: 夜宵
第二章 学び舎の影と、覚醒の輝き

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17/29

17:救われた心と、迫る新たな危機

 ロレンツォ教官が連行された直後、講堂は騒然となった。ティアは、シエル王太子がリルセリアの心を癒やしているのを確認すると、すぐにレオンハルトと視線を交わした。


「お兄様。ナターシャよ」

「わかっている。僕がリルを連れて行く。君は魔力迷彩を再度使え」


 ティアはすぐに魔力迷彩のアンプルを使い、Cクラス棟へと急いだ。


 古い資料室。ティアが静かに扉を開けると、ナターシャ・バレリーは前回と同じ場所に座っていたが、その様子は全く違っていた。


 ナターシャの周りに漂っていた粘着質な「不協和音」の魔力は、完全に消え失せ、彼女の瞳には、涙と、感情が戻っていた。


「ティアリア様……!」


 ナターシャは立ち上がり、ティアを見るや否や、駆け寄って深く頭を下げた。


「あの時、私の心が支配の鎖で締め付けられている瞬間、あなたの『あなたは誰にも操られていない』という声だけが、私の中に残っていました。あの言葉が、私が私でいられる最後の錨でした」


 ナターシャは、堰を切ったように泣き出した。


「私は……殿下の妃の座を狙う卑劣な駒として、リルセリア様を傷つける役割を負わされていました。全て、ヴァルド・エインズワースの命で、ロレンツォ教官が……!」


 ティアは、ナターシャの肩を抱き、優しく頷いた。


「もう大丈夫。ロレンツォは連行されたわ。そして、中継の魔方陣は破壊された。あなたはもう、誰の駒でもない」


 ナターシャは、ティアへの深い感謝と、リルセリアへの懺悔の念を強く抱いた。彼女は、恩人であるティアの力になることを誓った。


「ティアリア様。私がヴァルド様の魔術の詳細を知っているわけではありません。でも、彼が時折、王太子殿下に直接、秘密の魔術具を送っているのを知っています。それは、陛下の目を欺くための、特別なものだと……」


 ティアは緊張した。ナターシャの情報は、シエルが城に戻った際に、再び支配下に置かれる可能性を裏付けていた。


 その日の午後遅く。リルセリアは、シエルとの短い時間の中で、彼の本心と、未来への希望を確信した。


「リルセリア。私は今、君とティアリア嬢の行動で、ようやく自由を得た。だが、宮廷に戻れば、また何者かの監視下に戻る可能性がある」シエルは、不安を隠さなかった。


「殿下……。わたくし、殿下のお言葉を信じます。殿下は、わたくしを愛してくださっている。それだけで十分です」


 シエルは、リルセリアを力強く抱きしめた後、衛兵団を引き連れて学園を去った。


 ティアは、シエルの後ろ姿を見送りながら、胸騒ぎを覚えた。彼の魔力の波動は、中継魔方陣の破壊で一度は清らかになったが、彼の魔力の核自体には、ヴァルドの魔術の痕跡が深く刻み込まれていた。


「お兄様。殿下は、宮廷に戻ればすぐにヴァルドの直接支配を受けるわ」


 隣に立つレオンハルトは、真剣な面持ちで頷いた。


「おそらく、そうなるだろう。ロレンツォという手を失ったヴァルドは、今、焦っているはずだ。最も重要な駒である殿下への支配を、より強固にするだろう」


 レオンハルトは、ティアを見つめた。


「ティア。ロレンツォ教官を崩壊させたのは、君の才能が導いたものだ。そして、ロレンツォの自白で、ヴァルドの関与は明らかになった」

「つまり……」

「そうだ。ヴァルドの次の標的は、この計画を崩壊させた君だ。君が、殿下を救うための最後の、最も重要な鍵となった」


 学園内に安堵の空気が流れる中、ティアとレオンハルトは、真の黒幕との最終決戦が迫っていることを悟った。

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