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悪役令嬢にされたお姉様が○○されるのを断固阻止します!  作者: 夜宵
第二章 学び舎の影と、覚醒の輝き

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16:支配の崩壊と、魔術師の末路

 講堂でロレンツォの悪意ある糾弾が続く中、レオンハルトはオルセン教授の魔力迷彩アンプルを使い、その魔力を無害な一般生徒に偽装した。


 彼は、ティアが用意した地下倉庫への地図を手に、学園の古い廊下を駆け抜けた。


(リル、ティア、必ず間に合わせる)


 地下倉庫は、学園の創設期から封鎖されており、重い石の扉で閉ざされていた。レオンハルトは、次期公爵としての必須教養として学んだ古代建築の知識に基づき、扉のロック機構を解析した。彼は精密な魔力操作を伴う高等な開錠術を使い、瞬く間に扉の鍵を解除した。


 倉庫内部は埃っぽく、ほとんど何も置かれていなかったが、床の中央には、ティアが指摘した通り、複雑に組み合わされた古代の魔方陣が描かれていた。それが、学園全体に「不協和音」を拡散させる中継点だ。


 魔方陣は微かに脈打つように光り、その魔力は、ヴァルドの邪悪な意志を帯びていた。


 レオンハルトは躊躇なく、オルセン教授から託された虹色の液体が入ったアンプルを取り出した。


(教授の言った通り、この禁術は精神支配に特化している。逆説的に、単純な物理的な破壊ではなく、魔力的な反作用でしか崩せない)


 レオンハルトは、アンプルの先端を中継魔方陣の中心にある最も魔力が集中している一点に押し当て、液体を一気に注入した。


 チリチリという異音が響いたかと思うと、次の瞬間、魔方陣全体が強烈な虹色の光を放ち始めた。虹色の魔力が、魔方陣を構成する古代文字一つ一つを内部から腐食させ、パリン! と音を立てて砕いた。


 学園全体を覆っていた粘着質な「不協和音」の魔力が、パッと音を立てて霧散するのを、レオンハルトは感じた。


「やった!」


 レオンハルトは急いで倉庫を後にし、講堂へと引き返した。


◇◇◇◇◇


 その頃、講堂では、ロレンツォが勝利に酔いしれていた。


「――よって、アルバレート嬢は、王太子の婚約者として不適格であると、ここに裁定いたします!」


 ロレンツォは、演壇を叩きつけ、満面の嘲笑をリルセリアに向けた。その瞬間、彼の身体を流れる魔力が、急激に、そして不自然なほどに停止した。


(あれ? なぜだ? 支配の魔力が、ヴァルド様からの流れが、突然――)


 ロレンツォは、支配の中継点として利用していた魔方陣が破壊されたことで、ヴァルドからの支援魔力と精神的な接続を完全に断たれた。


 彼の表情から、邪悪な高揚感が一瞬で抜け落ち、顔は蒼白になった。彼の内面に潜んでいた恐怖と不安が、抑えきれずに表面に湧き出てきたのだ。


 ロレンツォは、演壇の上でガタガタと震え始めた。


「ま、まさか……。この裏帳簿も、魔力の中継点も、全てバレていたというのか……」


 彼は錯乱し、リルセリアを罵っていた憎悪の言葉は、今度は恐怖の叫びに変わった。


「ち、違う! 私は、言われた通りにやっただけだ! ヴァルド様に、強制されていたんだ!」


 その醜態に、講堂全体が静まり返った。観客席のティアは、ロレンツォの周囲の魔力が、ヴァルドの支配魔術から来る『不協和音』から、彼の純粋な『恐怖』という感情へと変化したのを明確に感知した。


 ロレンツォは、誰も聞いていないところで禁術への関与を大声で暴露したのだ。


 その時、観客席にいたシエルが、静かに立ち上がった。


 シエルは、ロレンツォの崩壊した様子を、感情のない瞳で見つめていたが、ティアは、彼の瞳の奥の「不協和音」が、一瞬の自由を得たかのように、乱れ、そしてクリアになったのを見た。


(今、殿下を支配していた魔術が、完全に剥がれた!)


 シエルは、演壇に歩み寄り、錯乱するロレンツォの肩に手を置いた。


「ロレンツォ教官。私は、あなたが何者かに操られていると、薄々感づいていました」


 シエルの声は、数日前のリルセリアとの

面会時の空虚な声とは全く違い、王太子としての、力強い意志に満ちていた。


「貴公は、私の婚約者リルセリア、そして学園の生徒たちに、計り知れない損害を与えた。君の言動は、全て調査の対象となる」


 シエルは、静かに衛兵を呼び寄せ、ロレンツォをその場から連行させた。ロレンツォは「ヴァルド様!助けてください!」と叫びながら、講堂から引きずり出されていった。


リルセリアは、事態の急変に呆然と立ち尽くしていた。


 シエルは、衛兵に指示を終えると、すぐに壇上の中央で震えるリルセリアの方へ向き直った。


 彼の表情は、先ほどまでの冷徹な皇太子ではなく、深い安堵と、悔恨に満ちていた。


「リルセリア嬢」


 シエルの声は、柔らかく、温かかった。ティアが面会室で聞いた空虚な声とはまるで違う、彼本来の声だった。


「君に、多大な屈辱を与えてしまった。この数ヶ月間、私は……何者かに操られ、君の気持ちを全く理解できない状態にあった」


 シエルは、リルセリアの前に静かに跪いた。


「本当に、すまない。君が受けた苦痛は、全て私の責任だ。公爵令嬢としての品位も、君の努力も、全てが真実だと知っている。君を愛している。どうか、信じてほしい」


 彼はリルセリアの手をそっと取り、その冷たさに心を痛めた。


 リルセリアは、シエルの言葉と、その瞳の奥に見える偽りのない愛情に、涙を抑えきれなくなった。彼女の心は、ロレンツォによって深く傷つけられたが、今、婚約者であるシエルの本心からの謝罪によって、一気に満たされた。


「……殿下……!」


 ティアは、観客席からその光景を見届けた。これで、リルセリアの婚約破棄と破滅という未来は、完全に回避されたと確信する。


 ティアは、安堵の息を吐きながらも、すぐに気持ちを引き締めた。シエルの支配は解けたが、黒幕ヴァルドはまだ健在だ。そして、もう一人、助けなければならない者がいる。

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