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悪役令嬢にされたお姉様が○○されるのを断固阻止します!  作者: 夜宵
第二章 学び舎の影と、覚醒の輝き

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13:憎悪の踏みにじりと、公爵家の安息

 ナターシャへの極秘接触から数日後。ロレンツォ教官は、リルセリアを再起不能な精神状態に追い込むため、罠の舞台を設けた。


 それは、Aクラスと、皇太子シエルを含む一部の上級生が参加する合同魔術訓練だった。


「さて、皆さん。先日の多層防御結界の失敗は、アルバレート嬢の繊細さに欠ける魔力操作の証左でした」

ロレンツォは、合同訓練の冒頭で大勢の生徒の前で言い放った。


 リルセリアの顔が羞恥で紅潮する。ティアは、すぐ隣でロレンツォの魔力から発せられる嘲笑のノイズを感知し、拳を握りしめた。


「本日は、それを補うための応用的な魔力伝達を試みます。アルバレート嬢」


 ロレンツォは、リルセリアを再び指名した。


「殿下の婚約者たる者、失敗を恐れてはなりません。この場に殿下がいらっしゃるのは、君の成長を期待されているからですよ」


 彼は言葉巧みに、リルセリアに「ここで失敗すれば、殿下の期待を裏切る」という強烈なプレッシャーをかけた。


 ロレンツォの指示は、精神的な動揺が魔力に直結する複雑な連動魔術の展開だった。リルセリアは汗をかきながらも、懸命に魔力を操作しようとする。


「なぜできないのですか、アルバレート嬢。これは初歩的な応用です。殿下は、将来を共に歩むパートナーに、もっと迅速な理解と、安定した精神を求めていらっしゃるのではありませんか?」


 ロレンツォは、上級生全員が聞いている中で、リルセリアの最大の不安である婚約関係を攻撃した。


(憎たらしい! あの男、お姉様の心を破壊しにかかっている!)


 ティアは、魔力迷彩を維持したまま、静かに、癒やしの魔力をリルセリアの足元に向けて流した。それは、ロレンツォの魔術を打ち消すほどの強さはないが、リルセリアの極度の動揺をわずかに鎮め、思考をクリアにする効果があった。


 リルセリアは一瞬息を吐き、魔術を完成させたが、それでも展開は不完全だった。


「ふむ。ギリギリ成功、といったところでしょうか。残念ですね、アルバレート嬢。殿下も落胆されていることでしょう」ロレンツォは、わざとらしく残念そうな表情を浮かべた。


 その言葉に、シエルは表情一つ変えなかったが、その無表情こそが、リルセリアには決定的な拒絶に見えた。


◇◇◇◇◇


 その日の夕方。公爵家の玄関に戻ったリルセリアは、制服のまま、ほとんど生気がない状態だった。


「ただいま、……ティア、お兄様」


 玄関で出迎えたティアとレオンハルトは、リルセリアの様子を見て、すぐに事態を察した。


「お姉様!」ティアはすぐにリルセリアの手を取り、その冷たさに眉をひそめた。


「ロレンツォ教官の公開処刑か。いつまで経っても、あの男のやり方は陰湿だな」

レオンハルトは低い声で言った。


「ううん、大丈夫よ。殿下の期待に応えられないのは、わたくしが未熟だから……」

リルセリアは、弱々しく首を横に振った。


 ティアは、そんな姉を優しく抱きしめ、レオンハルトを見上げた。レオンハルトは小さく頷くと、すぐに侍女たちに指示を出した。


「今日は、夕食も入浴も全て、リルセリアの部屋で済ませる。リルセリアの部屋付の使用人以外は、誰も部屋に近づけるな。特に、学園の話は一切禁止だ」


 レオンハルトは、リルセリアを外部のプレッシャーから完全に遮断した。


 ティアとレオンハルトは、リルセリアを部屋まで運び、まず彼女をソファに寝かせた。


「お姉様。今日はもう、何も考えなくていいわ」ティアは姉の額に優しくキスをした。


「お兄様が、とっておきの秘密のおやつを用意してくださるわ」


「そうだよ、リル」レオンハルトは普段の厳格な態度を崩し、優しく言った。


「公爵家では、君は王太子の婚約者ではない。僕たちの、大切な妹だ」


 彼は、自ら手を動かし、キッチンから暖炉で温めたミルクと、リルセリアが幼い頃から好きだった蜂蜜パイを持ってきて、ソファの前のテーブルに並べた。


「食べて、そして僕たちにとことん甘えなさい。僕たちが、君を全力で甘やかし尽くす」


 リルセリアは、その温かいミルクと、二人の兄妹の無条件の愛情に、張り詰めていた感情が緩むのを感じた。


「……っ、ありがとう。ティア、お兄様」

 彼女の瞳から涙が溢れた。その夜、リルセリアは、ティアとレオンハルトに挟まれて、久々に安らかな眠りについたのだった。


◇◇◇◇◇


 リルセリアが眠りについた後、ティアはレオンハルトに、ロレンツォの行動パターンと、ナターシャへの接触を報告した。


「ロレンツォは、精神的な追い詰め方が目的だわ。彼の魔術の痕跡は、憎悪と支配欲で満ちている」


「やはり悪質だな。しかし、ナターシャ嬢への接触は危険すぎたのではないか?」

「危険を冒す価値はあったわ。彼女の心に、希望の種は蒔いた。あとは、ロレンツォの魔力の出所を探るだけよ。彼が学園外のヴァルドとどう連携しているか、その手がかりを掴めば、一気に反撃できる」


 レオンハルトは、卒業まで残りわずかとなった日数を数え、表情を引き締めた。


「わかった。僕は、学園の財務記録と、ロレンツォの経歴を洗う。君はオルセン教授と、奴の魔術の痕跡を追え。時間がない」

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