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虚空の囁き

※第2章の続きです。


ダンジョンの底で覚醒した健人は、《虚写》と《虚空因子》の力を使い、

闇の中で確実に“生きる術”を掴み始めた。


だが、その力はまだほんの一端に過ぎなかった。


《虚空因子》が強く反応し始めたのは、

ダンジョンの奥で“何か”が目覚めようとしていたからだ。


――欠陥勇者、再び虚空と交わる。

足音が岩に響く。

どれほど歩いたのか、時間の感覚が曖昧になっていた。

だが、分かる。

《虚空因子》が、何かを“呼んでいる”。


壁が脈打つように揺れ、

空間そのものが息づくようにうねっている。


「……近いな。」


息を整える。

《虚空因子》の反応が胸の奥を熱くする。

それは、まるで――呼吸のように同調していた。


突然、視界が歪んだ。

《虚写》が自動で発動し、空間を“写し取る”。

だが、そこに映ったのは見慣れたダンジョンの景色ではなかった。


世界が、反転していた。

黒と白が入れ替わり、

重力も、音も、温度も、意味を失う。


「……ここは……どこだ?」


足元に“影”が立っていた。

形が定まらない。

光でも闇でもない――存在の“間”にあるもの。


声が、響いた。


『……お前が、“失敗作”か。』


低く、どこか懐かしい声。

だが、それは確かに俺の中から聞こえていた。


「誰だ……?」


『我は虚空。

かつて世界を満たしたが、神に棄てられた“構造そのもの”だ。』


心臓が強く脈打つ。

《虚空因子》が共鳴している。


『お前は、神の欠陥。

だが同時に――我らの“修正者”でもある。』


「修正者?」


『この世界は、神のミスで出来ている。

だから、バグは生まれた。

そして、その修正として――お前が召喚された。』


息を呑む。

その瞬間、頭の中に無数の映像が流れ込む。

天と地、神と魔、世界の骨格が音もなく崩れていく。


そして俺は理解した。

自分が“勇者”でも“人間”でもないということを。


「……はは、なるほど。

 俺が欠陥なのは、そういう意味か。」


『違う。お前は――“世界を再構築する因子”だ。』


視界が光に満たされる。

《虚写》が《虚空因子》と重なり、

空間そのものを“写し取る”新しい感覚が生まれた。


青白い線が、世界の骨格を描いていく。

虚空が囁く。


『さあ、見せてみろ。欠陥勇者。

この腐った世界を――どう“写す”のか。』


その瞬間、俺の中の《虚空写し》が、静かに目を覚ました。

虚空との邂逅を果たし、健人はついに《虚空因子》の正体へと触れた。


それは神の創り出した「世界の修正機構」――

神のミスを正すために組み込まれた、唯一の“バグ”だった。


しかし、虚空はまだ健人を認めていない。

力を持つだけでは、虚空を歩む資格にはならない。


次に訪れるのは“虚空の試練”。

自らの過去、恐怖、そして心の奥に潜む“裏切り”と対峙する時が来る。


彼が何を見て、何を選ぶのか。

世界の歯車が、静かに回り始めた――。

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