【作者後書き】
― 欠陥という名の、理解 ―
この物語を書き終えて、ようやくひとつ息がつけた感じがします。
最初にこの物語を考えたとき、俺は「裏切り」の話にするつもりでした。
王国を、仲間を、神を――全部裏切って、自分だけの正義を貫く勇者の話を。
でも、書いているうちに気づきました。
俺が本当に描きたかったのは、“裏切り”じゃなかった。
むしろ、**「本当の正しさとは何か」**を探す旅だったと。
人間って、誰もが矛盾を抱えてる。
正しいと思ってやったことが、誰かを傷つけていたり、
信じたものが、実は作られた幻想だったり。
ゼル=イグナシア(健人)は、その矛盾を最後まで見つめていたと思います。
見なかったふりをせず、ちゃんと「間違っている」と言えた。
彼が手にした“虚空”という力は、何かを破壊するためのものじゃない。
“世界の歪みを整えるための理解”だった。
その力を通して、俺はずっと自分自身にも問い続けていました。
「俺は本当に、正しいと言える選択をしているだろうか」って。
書きながら、私自身がゼルに教えられた気がします。
欠陥とは、壊れていることじゃない。
完成を拒んで、まだ考えようとする意志のことだと。
人間は不完全です。
でも、その不完全さの中にこそ、“考える力”があるんだと思います。
ゼルは世界を整頓したけど、それは終わりじゃない。
彼の中に、そして私の中にも、理解の旅はまだ続いていると思います。
この作品は、私にとっても“問い”でした。
矛盾を見抜く目と、本当の正しさを考える心。
それを失わない限り、人は欠陥なんかじゃないと思います。
――欠陥勇者。
このタイトルに込めたのは、そんな祈りみたいな願いです。
読んでくれたすべての人に、心から感謝を申し上げたいと思っています。
そしてもし、この物語のどこかに少しでも“あなた自身の矛盾”が映ったなら、
それを恥じずに、考え続けてほしいです。
それが、この作品を通して私が伝えたかったすべてです。
――鈴木 健人
最後までお読み頂きまして、ここより感謝を申し上げたいと思います。
ありがとうございました。




