7-物語: Link park 3
「私の目標は何だろう?」 「私の存在意義は何だろう?」 「私の動機は正しいのだろうか?」
魔法学院では、リュウガがダンテとの戦いに勝利したことで祝賀会が開かれていた。突然、学級代表のディクシーがリュウガに尋ねた。
「ねえ、リュウガ。故郷には君を待っている人はいないの?」
リュウガは答えた。
「世界で一番の親友がいる。名前はアキだ。少し臆病なところがあるけれど、僕がとても信頼している人だ」
ディクシーは言った。
「それなら、その友達はきっと素晴らしい魔法の才能があるのね。君がそんなに信頼しているなんて」
リュウガは無頓着な声で答える。
「アキは魔法を持っていない」
驚いたディクシーは言い返す。
「魔法がない奴が友達だって? きっとただの奴隷でしょ」
リュウガは怒って言った。
「お願いだ、アキのことをそんなふうに言わないでくれ。彼は魔法を持っていないし、いろいろなことを怖がるけれど、幼い頃からの親友だ。彼は本気になれば大きなことを成し遂げられると僕は知っている」
ディクシーはさらに言う。
「なんで魔力のないやつを擁護するの? 彼らはこの世界では無価値よ。魔力のない者は何も成し得ないし、何者にもなれない」
リュウガは答えた。
「それは君の知るところじゃない。僕はアキが……大きなことを成し遂げられると知っている」
一方、リンクパークではアキが灰の魔術師ダザイと戦っていた。ダザイは、アキがどうやって一撃を与えられたのか、そしてなぜあれほど身体能力が高いのか疑問に思っていた。突如、ダザイの口から血が溢れ出す。アキは、リンクパークの経営者であるO.E.Oがダザイに与えた傷の場所を狙って攻撃していたのだ。ダザイは息が詰まりかけ、アキは自信たっぷりに言う。
「どうした? 腹でも痛いのか?」
ダザイは視界がにじみ始めていたが、まだ立っていた。心の中で思う。
(こいつはいつの間にか急激に速くなった。用心しなくては。俺の呪いは自分を灰に分離させることができるが、その分離には一定の速度が必要で、正確さが要求される。どうしてこんな臆病者が、突然そんな速度と精度を手に入れられる?)
ダザイは息を整え、かけていた眼鏡を直すとアキに言った。
「お前は速い、カラス。認めよう。でも納得がいかないものがある。お前の目的だ」
アキは困惑する。ダザイは続けた。
「女の胸を触ることだと? そんな動機は漫画やアニメにしか存在しない愚かなものだ。人は偉大さへと導く堅い目的を持つべきだ。例えば、俺の目的はスターシップ社の史上最大の将軍になることで、それが今の俺を作ったのだ」
アキは死神の言葉を思い出した。
(動機とは、朝起きて人生を進める力になるものだ。何であれ、それが困難に立ち向かう力を与えるなら、女の胸を触ることでも、普通の生活を送ることでも、大学を卒業することでも、伝説の英雄になることでも、どんな動機も愚かではない)
そしてアキは静かにダザイに言った。
「あなたの言う通りかもしれません。私のあなたとの戦いの理由は愚かなものかもしれません。でも、それは私が人生で最初に望んだことだと思う。私はこれまで本気で何かを望んだことがなかった。魔力がないことで人に制限されてきたし、私を信じてくれた人は少なかった。今、あなたはそういう人の一人を捕えている。だから…」
アキは超音速の速度でダザイに突進した。速度はあまりにも速く、ダザイは自分を灰に分離して攻撃をすり抜けさせる時間がなかった。アキは空に向かって叫んだ。
「私の最初の友達になった女の胸を返せ!」
アキの攻撃はダザイを遠くへ吹き飛ばし、ダザイは観覧車に激しく衝突してそれを破損させた。衝撃で、ローズが粉となって閉じ込められていた瓶が落ちるが、アキは猛スピードで飛んでいき、その瓶を無傷で受け止めた。アキは一瞬安堵したが、戦いはまだ始まったばかりだった。ダザイは観覧車に深手を負い、瀕死の状態だった。
(どうしてこんなガキに俺が……) (勝たねば) (勝たねば) (勝って彼女を守らねば) (キャッツを守らねば) (組織で最強にならねば)――そうした言葉がダザイの脳裏を支配し、やがて彼は結論に至る。
(すべてを殲滅せねば!)
「Pulvis et cinis」――それがダザイの“再生”の直前の最後の言葉だった。
強烈な砂と灰の嵐が観覧車を包み込み、それを粉末へと変えていく。遠くの人々は突如として破滅的な気配を感じた。
キャッツは言う。—「ダザイが“再生”を選んだのね。あら、私の可愛い恋人、お願いだからそれが私たちに会うのを邪魔しないでね」
観覧車の周りには砂の竜巻が生まれ、その竜巻は触れたものを次々と粉に変えて飲み込んでいった。月明かりに照らされたその粉は星の欠片のように輝いた。アキの直感は迫る危険を警告する。瓶の蓋が突然開き、粉の姿だったローズは元の姿に戻った。どうして可能だったのか。ダザイは死んだのか――その考えがアキの頭を巡る。だがダザイは死んだのではなく、彼は“再生”を選んだのだ。
「このカラスの小僧め! 任務なんてくそくらえだ! 全部くそだ! 今すぐお前を殲滅してやる!」
その声は遠くから響いた。ダザイは別の姿、灰でできた人型のような存在となり、全身を覆う粉の鎧を纏っていた。ダザイはアキとの戦いの間、自らを抑えていたのだ。この変身とは何か――その疑問がアキの頭を離れない。すると、意識を失っていたローズが突然目を覚まし、アキに言った。
「隠れて…早く」
アキは本能でローズを抱えて全速力で逃げた。しかしどれだけ遠くへ走っても、危険の予感は消えない。やがてダザイは全力で砂の竜巻を爆発させ、触れたものをすべて粉に変えた。リンクパークにいた人々は安全な場所へと逃げた。爆発は避けられず、園内のすべてが粉塵にされようとしていた。ダザイは破壊の前に最後の思いを抱いた。
(どうしてこんなことに……キャッツ、許してくれ、約束を果たせなかった。実は約束を破ったのはこれが初めてだ。君と出会った日を覚えている。最初は君が小さな子供だと思ったし、年齢に似合わず子供っぽい振る舞いをするとも思った。君とはうまが合わなかったが、時とともに君を愛するようになった。今でも君を愛している。君は俺が世界で最も愛する存在だ。この任務を受けた理由は、ただ組織で昇進したかったからだけではない。この任務を成功させれば、組織が俺たちを一緒に逃がしてくれると約束されたのだ。キャッツ、君が俺の動機だ。さようなら。)
砂の竜巻は爆発し、リンクパークは粉塵となって消えた。ゾンビになった人々さえ粉になった。あの日は「リンクパークの悲劇」として記憶されることになる。しかしアキたちはどうなったのか。アキはその速度でローズと共にリンクパークを脱出できたが、粉塵の爆風で負傷し、全身を張ってローズを守った。リンクパークの従業員たちも無事に脱出でき、重傷を負っていた経営者も間一髪で救出された。キャッツも助かったが、涙を流しながら声を上げた。
「ダザイ……あなたは嘘つきね! 男はみんな同じ!」
彼女は仲間を思って泣き崩れた。やがて粉が晴れると、そこには倒れたダザイの身体が横たわっていた。キャッツは駆け寄り、まず彼の鼓動を確かめた。奇跡的にダザイの心臓はまだ鼓動しており、それを知ったキャッツは喜んだ。
そのころアキは、以前と同じ場所で再び死神と出会い目を覚ました。死神はアキに紙吹雪を撒いて祝福し、こう言った。
「おめでとう、子どもよ。さあ目を覚まして報酬を受け取れ」
アキは突然起き上がり、「おっぱい!」と叫んだ。手が何か柔らかく大きなものに触れ、沈み込む。その正体はローズの胸の一つだった。ローズは冷たい視線でアキに言う。
「起きたのね、変態」
アキは顔を真っ赤にして気絶したが、すぐに目を覚ましローズに謝った。自分が包帯だらけで自分の部屋にいることに気づいた。ローズは何が起きたのかを説明し、瓶の中で粉の状態だったとき、囚われながらもすべてを聞いていたこと、そして「胸を触る」ということまで聞こえていたと告げた。アキはひどく恥じて布団の下に隠れる。心の中はこう考えていた。
(ローズに殺される! 彼女が私を殺す! あの魔女に殺される!)
するとローズは蔓でアキをベッドの下から引き出し、少し頬を赤らめながら言った。
「で、さあ…触ってみなさい」
アキは戸惑いながら尋ねた。
「え?」
ローズは恥ずかしそうに言った。
「言ったでしょ、胸を触っていいって! 言い直させないでよ!」
アキは聞き違いかと信じられない様子で言った。
「本当に? 冗談じゃないのか?」
ローズは答えた。
「冗談じゃないわ。あなただってあそこで頑張ったし、私のせいで怪我もしたでしょ。だから…早くして。誰にも見られて誤解されたくないの」
アキは完全にショックを受けた。村で何度も拒絶され、女性たちからひどく扱われてきた過去が一気に甦る。アキの頭は情報を処理するのに時間を要し、やがて一つの結論にたどり着いた。
「ローズ…君は魔女なんかじゃない…君は天使だ!いや、もっと正確に言えば女神だ!」
つづく…
エピローグ:
リネサンス(再生):呪いがその全能力を引き出す状態。これは等価交換の法則に従い、何かを差し出すことで何かを得る。呪いごとに再生を発動させる要因は異なる。再生は身体に強い負荷を与えるため、発動後に死に至る可能性や、死に近い状態に陥る可能性があるため、最後の手段の術とみなされる。




