5-物語:Link Park 1
「娘よ、元気か?」
「はい、お母さん。大丈夫です。」
風を操るあの魔法使いを倒してから一週間が過ぎた。家はそのせいでひどく壊れたが、大事なものは失われなかったし、対魔女隊が手早く効率よく修理してくれた。本当に魔法の力は驚くべきものだ。だが修理が終わると、ローズは完全に私のクローゼットに閉じこもり、まったく外に出ようとしなかった。いつも食べ物は置いているのに、それでも出てこない。しばらくするとローズの皿が空になっているのを見つけた。なぜ閉じこもったのか分からないが、きっと大丈夫だろうと思った。リビングへ行き、母とテーブルに座ると母が尋ねた。
ユキ:「ローズちゃん、まだ出てこないの?」
アキ:「うん、俺には話しかけてもくれないよ。」
ユキ:「それでも心配じゃないの?」
アキ:(頬を赤らめて)「うーん…いや…俺は…別に…心配してるってわけじゃ…ないんだ…ただ…彼女が…」
ユキ:「ふふふ、まだ子どもね。本当に女心がわかってないのね。ローズちゃんはきっと何かあって落ち込んでるのよ。友達として彼女を元気づけるのはあなたの義務なんじゃない?」
アキ:「だって…女の子と話したことなんて…ないんだ…みんな俺を気味悪がって唾を吐くし…リュウガだけが唯一話せる相手なんだ。」
ユキ:「ところでリュウガくんとは最近話した?」
アキ:「ううん…」
リュウガが伝説の勇者とともに村を出てから一週間がたった。何度か手紙は出したが返事はない。勇者の魔法学校で彼はもっと強くなっているに違いない。ああ、寂しい。彼を勇者の弟子にするよう説得したのは俺だ。別れ際、彼は帰ってきたときには立派な勇者になって、俺は彼の右腕になると言ってくれた。
ユキ:「そうだ、仕事帰りにあなたの好きな本の最新刊を買ってきたの、特別なオマケ付きよ。」
アキ:「特別なオマケ?」
ユキ:「うん、そのオマケはLink Parkのチケット。作者がサイン会をするの。」
アキ:「Link Parkって…?」
Link Parkはとても人気がありながら秘密めいた遊園地で、行ける人はごく少数だという。あの遊園地のオーナーは恐ろしい女性で、公の場に出ることすら恐れていると言われ、かつて取材を試みた記者を片っ端から失踪させたとも噂されている。
ユキ:「チケットは二枚よ…ローズちゃんと行ってみたら?」
アキ:(赤面して)「なんで彼女と行かなきゃいけないんだよ!」
ユキ:「リュウガくんはいないし、私も仕事がある。それに、あなたが他の人と交流するいい機会よ。遊園地に行けばローズちゃんの元気も戻ると思うの。」
アキ:(赤面して)「でも…ローズは女の子だし、俺は男だし…血の繋がりのない男女が遊園地に行くとデートって思われるかもしれない…(必ずしもそうとは限らないけど)」
ユキ:「そういうわけで、ローズちゃんと行きなさい。」
アキ:(赤面して)「いやだ!」
ユキ:「質問じゃないわ、命令よ。私はあなたの母親なの。ローズちゃんを誘ってその遊園地に行きなさい。話は終わり。」
そう言って部屋へ向かい、クローゼットの扉を何度も叩いてローズを呼んだが返事はなかった。気まずい。女の子を誘った最後の経験は、リュウガに勧められてのことだったが、そのときの女の子は最悪の形で断り、唾を吐きながら「お前に彼女なんてできるわけない」と嘲笑った。翌日、その娘はリュウガに色目を使ったが、リュウガは友を傷つけた愚かな女に同じ言葉を返した。そんな過去を思い出しながら扉を叩き、全力で叫んだ。
アキ:「ローズ!Link Parkに行かないか?チケットがあるんだ!」
するとクローゼットの扉が少し開き、そこから靴下の人形が出てきた。
ローズの人形:「こんにちは!」
アキ:「こんにちは。」
人形:「ピィくんっていうの。あなたの名前は?」
アキ:「あ、俺はアキだ。」
ピィくん:「はじめまして、アキ!今ローズ、ちょっと落ち込んでるんだ。わかる?」
この人形、いったい何を言ってるんだ?ローズは俺の靴下でこれを作ったのか?
ピィくん:「ちょっと待って!ローズが呼んでる!」
(人形はクローゼットに戻り、また出てくる。)
ピィくん:「ローズは行くって。でもヒーローがこの町にいる間は絶対にクローゼットから出ないって。」
アキ:「ヒーローは一週間前に村を出たよ。」
ピィくん:「ローズはリスクを取りたくないんだって。」
アキ:「わかったよ…」
翌日、ローズと俺はLink Parkのサイン会に行った。なぜか彼女はクローゼットを持ち込んでいて、本気でそこから出るつもりはなかった。
アキ:「えっと、ローズ、何をしたい?チケットで園内は自由に回れるし、どのアトラクションも無料で乗れるよ。サイン会の時間までまだ余裕があるし。」
人形がクローゼットから出てきて言った。
ピィくん:「ローズはポップコーンと綿菓子とライトの飲み物が欲しいって。ダイエット中だからライトなの。」
そんなふうに一日中、あらゆるアトラクションや屋台を回った。ローズはずっとクローゼットにいて、人形が喋り続けたが、それでも楽しい時間だった。リュウガ以外と仲良くできた初めての経験だった。しかし、陰から誰かに狙われていることには気づいていなかった。
???:「あのクソガキが始末すべき相手か?見るからにバカだし、髪の色もおかしい。白か黒かハッキリしろ。両方の色ってありえないだろ。」
???:「ねぇダザイ!アイス食べたい!アイス!アイス!」
ダザイ:「黙れ、小娘!うるさいんだよ!見つかったらどうするつもりだ?」
小娘:「ごめんなさい!でも…デートでこんなに嬉しいの!」
ダザイ:「仕事で来てるんだ。デートじゃない。」
小娘:「仕事だってデートになるかも!」
ダザイ:「いい加減にしろ!ボスからカラス少年を捕まえて薔薇の魔女に引き渡すよう命じられている。失敗は許されない、わかったか、キャッツ?」
キャッツ:「了解!」
ダザイ:「よし、隙を見て襲おう。」
キャッツ:「カラスを倒したら、ロマンチックなディナーに誘うって約束してね?」
ダザイ:「この仕事が終わったらお前に最高のデートをやってやる。」
灰の魔術師:ダザイ。
ゾンビの魔女:キャッツ。
サイン会の時間が近づくと、作者の近くで大きな花火が上がった。花火は夜空の星のようで、見事な光景だった。そのときローズは少しだけ頭を出し、子どものような笑顔を浮かべていた。そうして彼女は言った。
ローズ:「花火が好き。特別理由はない、ただ好きなの。ここ一週間心配かけてごめんね。伝説の勇者を見てすごく怖くなってしまったの。」
アキ:「だって君は魔女だし、彼に見つかったら殺されるかもしれない。」
ローズ:「そういうことじゃないの。でも、アキ、あなたも今は魔術師なのよ。誰かにバレたらあなたも殺されるかもしれない。」
アキ:「正直、死んでも構わない。」
ローズ:「え?」
アキ:「ずっと臆病者で、人にゴミのように扱われてきた。生きている理由なんてほとんどない。自分を終わらせないのは母さんとリュウガのためだけなんだ。君に会ったとき、君に殺されるか、あの襲ってきた魔女に村の外で死ぬと思っていた。でもそうはならなかった。君を助けたとき、剣が俺を貫いたけど、そのときはせめて一度は勇敢に死ねると思った。でも死ななかった。ローズ、君に会えて後悔はしていない。」
ローズ:「それって…どういうこと?」
アキ:「感情を開いてただけだよ!」
ローズ:「ふふふ、馬鹿みたい。見栄を張ろうとしたの?」(笑い)
アキ:「笑うの好きなのかよ?」
???:「助けてー!」
突然、助けを求める変な男が現れ、俺の前で跪いて足を掴みながら叫んだ。
男:「助けてくれ!ここに二人の魔術師がいるんだ!」
ローズとアキ:「二人の魔術師?」
男:「そうだ。サイン会に来たら、眼鏡の男と子どもに見える女が、カラスの少年と薔薇の魔女を探しているって言ってた。見つかって殺されそうになって、君たちを見つけたんだ!」
この男は俺とローズのことを知っているのか?
ローズ:「アキ、こいつ敵かもしれない。始末しよう。こいつはスターシップの暗殺者かも。」
男:「違う!味方だ!守るために送られてきたんだ!あの人があなたたちにチケットを送って、安全にするためにここに来たんだ!」
あの人?誰だ?
アキ:「チケットを送ったのは誰だ?」
男:「遊園地のオーナーよ!あなたのお母さんに本とチケットを売ったのは彼女だ。ずっと数週間、君たちを見ていたんだ!」
Link Parkのオーナーが?何のために俺たちを見ていたんだ?意味がわからない。こいつはいったい誰だ?
アキ:「君は誰だ?」
ディラン:「ディランって呼ばれてる。」
キャッツ:「ほほう、さっきから見てたわよ。あんたと薔薇の魔女は理想のカップルね。さっきのやり取り、すごくロマンチックだったわ。残念だけど、あんたを殺して薔薇の魔女を連れて帰らなきゃ。うわあ、助けてあげたいくらい!そうしたらあんたは童話の王子様みたいに助けに来るのに!」
この少女は敵なのか?
ディラン:「来た!早くカラスに変身して!」
アキ:「何を言ってるんだ?」
キャッツ:「落ち着け男ども、こんな可愛い子の前で慌てるのは当然よ。でも逃げ場はないわ。私の愛しいペットたちに囲まれているの。」
その言葉の意味がすぐに分かった。我々はゾンビに囲まれていたのだ。どういうわけか彼女は園内の人々をゾンビに変えていた。
キャッツ:「愛しいペットが大好き!私の呪いは私に恋する人をゾンビに変えられるの。ただしその人がゾンビになれば、他の人に噛み付いてさらにゾンビにできる。感染者は私の命令に従う。さあ、カラスくん、ここからどうやって脱出するつもり?」
ダザイ:「(遠くから)キャッツ、短気ね。民間人を面白半分でゾンビにするなんて許せない。目立たないはずだったのに、これを利用して薔薇の魔女を捕まえよう。俺は自分がゾンビにされないように呪いを使う。」
ダザイは灰の魔術師だ。彼の呪いは触れたものすべてを灰や粉に変えることができ、自分自身も同様だ。飛び散る灰の方向と量を自在に操り、姿をくらますのに使うことから、完璧な暗殺者として知られている。
一方キャッツはゾンビの魔女で、彼女に恋する人をゾンビに変える能力を持つ。彼女はただ純粋にラブロマンスを求める若い女性で、その能力で人々を従わせてしまう危険性がある。かつて王を誘惑して王国全体をゾンビ化し、臣下をも奴隷にしてしまったこともある。見た目に反して、主人公の母親とほぼ同世代の大人の女性である。
ディラン:「逃げ場がない!死ぬ!」
アキ:「その通りだ!」
ローズ:「黙れ、泣き虫ども!あの女を倒せばいいだけでしょ!」
キャッツ:「“子どもみたいなバカ”って言った?私の方が年上よ!」
ローズ、アキ、ディラン:「本当に?」
キャッツ:「もちろんよ!なんでみんな私を子ども扱いするの?私は27歳!まだ結婚してないの!王子様が現れるまで身を守ってるの!“子ども”呼ばわりするなんて失礼よ!」
ローズ:「ごめんなさい…」
(キャッツがローズの胸を見下す。)
キャッツ:「このビッチ…!人前であんな胸を見せるなんて!年齢にしては異常よ!私だってあんな胸がほしかったのに、神は私を祝福しなかったのね!男どもは普通の胸を持つ女をわかってないのよ!」
ローズ、アキ、ディラン:「(この子、何かコンプレックスがあるんだな)」
キャッツ:「てめえ…殺してやる!胸を引きちぎってやる!ゾンビども、喰らいつけ!」
ゾンビがローズへ向かって突進し始めたとき、突然背の高い眼鏡の男が現れ、ゾンビの魔女を強く抱きしめた。
ダザイ:「落ち着け、我が愛しのキャッツ。静かな方が綺麗だぞ。」
キャッツ:(頬を赤らめ)「ダザイくん!」
ダザイ:「忘れるな、我が愛よ。薔薇の魔女を生け捕りで主に渡すのが任務だ。カラスは殺せばいい。速やかに静かに片付けようと思っていたが、お前が苛立っているのは我慢できなかった。」
キャッツ:「だって…あの子は胸が大きすぎて腹が立つの。私、胸にコンプレックスがあるのよ。もっと大きければみんなに好かれるのに。」
ダザイ:「お前はもう十分に美しい。体に問題なんてないさ。むしろその音で心臓の鼓動を聞いていたい。」
キャッツ:(頬を赤らめ嬉しそうに)「ダザイくん…何言ってるの、変態!」
ローズ:「糖分で病気になっちゃう!」
アキ:「吐きそうだ!」
ディラン:「あの二人、遠慮がないな!」
ダザイ:「よく聞け。俺はダザイ、スターシップ社に属している。こいつは相棒のキャッツだ。薔薇の魔女を連れてこい、カラス。だが薔薇の魔女を渡せば命は助けてやる。」
ローズを引き渡せと?
ダザイ:「薔薇の魔女を守る理由はないだろう?無辜の者を殺すのは嫌だが、俺は騎士でもある。取引はどうだ?」
彼の言うことは一理ある。ローズを守る確かな理由は見当たらない。引き渡せば元の生活に戻れるかもしれない。でも、本当にローズに出会う前の生活が“普通”だったのか?なぜ彼女を守っているのか?俺は魔力を持たない。ローズは自分で守れるほど強い魔女だ。
ディラン:(泣きながら)「カラス!ローズを連れて行かせるな!何かしろ!」
アキ:「俺に何ができる?」
ローズ:「アキ…私を行かせて。」
アキ:「え?」
ローズ:「アキ、隠してくれてありがとう、救ってくれてありがとう。でも私は自分でやっていける。かつて監禁されていた場所から逃げ出したことがあるし、また逃げられる。心配しないで。会えてよかったよ、魔力のないバカ。」
ローズ…お前…ローズ…リュウガがここにいたら…。
(ローズは首飾りを外す。)
本当にありがとう、ローズ。友達になってくれてありがとう。
(アキが変身する。)
アキ(カラス):「ローズ様を連れて行かせはしない!」
ダザイ:「そうか…ならキャッツ、カラスを始末しろ!」
キャッツ:「はい、ゾンビたちよ、カラス少年を喰らえ。そして大きな胸の鼻持ちならない女を捕らえろ。」
ダザイ:「君はアキだよね?なぜ彼女を守る?動機があるはずだ。」
ディラン:「きっとアキは友情で薔薇の魔女を守っているんだ!だよね、アキくん?友情の力だよ!」
アキは胸の奥にしまっていたローズとのわずかな思い出を思い出した。ほとんど知り合ったばかりだが、彼には大切な思い出があった。呪いのおかげでアキはその感情を声に出して言えた。
アキ(カラス):「俺の動機は…!俺が命を投げ出してまでローズ様を守る理由は…!ローズ様の胸を撫でるのが好きだからだあああああ!」
全員:「え?」
アキ(カラス):「一度だけなんだ、でもローズ様の胸は柔らかくて、それにとても大きかった。その感触は忘れられない。だからこそ俺はローズ様を全力で守る。彼女の大きな胸が大好きなんだ。」
場は凍りついた。
ディラン:「もう終わった…」
ローズ:「変態…」
キャッツ:「私にも限度があるわ、カラスさん。あなたは女性の敵、クズよ。」
ダザイ:「そんな動機って何だ?友情って言った方がまだ説得力あるだろ。呪いでカラスになったのか、それとも変態になったのか?」
アキ(カラス)は恥ずかしさで顔が崩れ、言葉が出なかった。
アキ(カラス):「そうだ、俺はクズだ。ゾンビに喰われて死ぬべきだ。」
ローズ:「馬鹿者、自分を哀れむのはやめなさい!」
そのとき、ディランに異変が起きた。
ディラン:「(恐怖)俺たちは死ぬ…死ぬ…死ぬ!」
突然、ディランから異様なオーラが放たれ、公園全体を覆うバリアを作り出した。
ローズ:「今のは何?」
アキ(カラス):「わからない。」
ディランは囁いていた。
ディラン:「大丈夫だ、俺の呪いが俺たちを守っている。」
ローズとアキはディランが何を意味するのか理解していなかったが、周囲を見渡すと気づいた。あたりの物が動きを止め、あるいは極端に遅くなっているのだ。
ローズ:「ねえ、説明してよ。今何が起こったの?」
ディラン:「(恐怖)俺の呪いはバリア、いや、周囲の時間を止めるか遅くする領域を作るんだ…ただし俺と俺が守りたい人には影響しない…」
ローズ:「それならどうして私たちは普通に動けるの?」
ディラン:「この領域は俺や、ここに留めたい人には影響しないんだ。つまり、外の時間が遅くなっているだけで、俺たちが普通に動いているように見えるんだよ。」
???:「計画は台無しね、諦めなさいガキども。私のやり方で行くわ。」
突然、謎めいた美しい女性が現れた。
ディラン:「ボス!」
ローズとアキ(カラス):「ボス?」
ディラン:「Link Parkのオーナーだ。名前はゼロだけど、“O.E.O”と呼ばれたいらしい。」
O.E.O:「お会いできて光栄よ、カラスとお姫様。」
アキ(カラス):「お姫様…?」
O.E.O:「知らなかったの?ローズの本名はローズ・ブラックモア。彼女は勇者の物語に出てくる呪われた姫君なのよ。ただの物語だと思ってたら、現実だったってわけ。」
ローズが呪われた姫の物語の姫だって…?ここで一体何が起きているんだ?
つづく…




