9 -物語: 仲間たち
リンクパークのことがあってから1か月が経った。僕は比較的「普通」の生活を送ると決め、それを真剣に続けている。最後に話して以来、リンクパークの連中は現れていない。多分、何か問題が起きたらまた現れるのだろう。僕は少しずつ、社会の中で人々が「普通」と呼ぶことをしようと努力している。
リューガやローズ以外にも友達を作ろうとした(魔力がないという理由で皆にのけ者にされた)。
勉強を頑張ろうとした(魔法が必要な科目では毎回ゼロを取るので先生たちからは劣等生扱いされる。数学や歴史のような魔法が不要な科目では成績は良いが、先生たちには関係ないらしい。アキには魔力がないからだ)。
いろいろ試してみた(意味がなかった、だってアキには魔力がない)。
しかし、何もうまくいかなかった!この世のすべてに魔法が必要なのか?それが本当に落ち込む。ローズはずっと応援してくれているのに、その支えが無駄になっているのがつらい。現実というのはそういうものだ。どれだけ夢や希望を持っても、魔法がすべてを支配している。魔法のある世界で魔法を持たない主人公たちを見習おうとしたこともあるけれど、うまくいかなかった。彼らは肉体の力に頼っているが、自分は石すら持ち上げられない。魔力がなくても何かできると考えた自分はとても慢心していたのだと思う。夢や目標を持つなんておこがましかった。呪いが発動しているときは強くて大胆になれるけれど、普段の自分は何もできない。
(ローズが現れて蹴る、叫ぶ)
ローズ: 「何言ってるのよ?そんな簡単に諦めるつもり?あなたもっと男らしいと思ってた!」
アキ: 「だって…やることなすこと全部失敗するんだ。みんなが言ってる通り、僕は役立たずで、死ぬべきだって…」
ローズ: 「もう泣くのはやめて!そんな簡単に諦めちゃダメ!何度でも挑戦しなきゃ!そしてお前を馬鹿にする奴らの尻を蹴ってやれ!」
アキ: 「言うのは簡単だよ」
ローズ: 「その通り。千の言葉より一つの行動。さあ町に行って、あいつらにお前が誰かを見せつけよう」
アキ: 「本気?町で誰かに見られたら、あんたが魔女だってバレてアンチウィッチ部隊が来て、伝説の勇者に引き渡されるかもしれない。それに俺の呪いはどうするんだ?」
ローズ: 「それじゃあ、呪いは制御できるようになったの?今、縛ってた蔓をつけてないけど普通に見えてるじゃない」
アキ: 「本当だ!」
あの死神との出来事以来、彼に「夢で満たせ」と言われてから、カラスに変身していない。使う必要も感じなかったのだ。普通の生活を送ることに集中していたから気づかなかった。そういえばあれ以来、彼とも話していないし、夢の中にも現れていない。考えるだけで混乱して頭が痛くなる。いろいろあって、結局ローズと町へ向かった。今のところ順調だ。誰もローズや僕が「魔女」だと気づいていない — 正確には「呪いの保持者」と呼ぶのが正しいかもしれない。村の人たちはローズと僕をじっと見つめていたが、僕は不思議に思わなかった。昔からこの村の人たちは僕をじっと見てきて、いつも同じだったからだ。そして予想どおり、僕の陰口を言っていた。
「魔力のないあの少年だ」
「今度は女をナンパしてるの?きもちわるい」
「赤い髪のあの子はあの魔力なしのアキと一緒で大変だろうな」
そうした囁きはリューガと一緒にいるときもあった。すると突然、謎の声が近づいてきた。アレイスターとその取り巻きだ。彼らはいつも僕をいじめる。唯一の良いことは、彼らのおかげでリューガと出会えたことくらいだ。アレイスターはこの村で高い魔力を持つ数少ない者の一人で、高等呪文を知っているが、決してリューガほどではない。村では力のある者が好き放題する。彼が近づいてきて言った。
アレイスター: 「おやおや、クズのアキか。リューガに見捨てられて、今度は誰を狙ってるんだ?情けないな」
リューガはいつも僕を守ってくれたが、彼がいない今は好き放題されている。
アレイスター: 「お前の“親友”に見捨てられたなんて気の毒だ。リューガくんは天才で、お前なんて存在しちゃいけない落伍者だ」
アキ: 「違うよ…リューガは僕を見捨てたんじゃない。僕が彼を学園へ行くよう説得したんだ」
アレイスター: 「哀れだな。自分に嘘をついているんだ。いつまでも否認しているつもりか。お前はただの価値のない人間だ。誰もお前なんて求めてない。リューガがいない今、このつまらない村は俺のものだ。まずはこの汚い農民たちの心を掴まねば」
アレイスターは大声で叫んだ。
アレイスター: 「皆聞け!この美しく哀れな令嬢は、魔力のない下賎なアキに襲われているのだ!」
村人たち: 「気持ち悪い!」「女の敵だ!」「当然だ!」
アレイスターは続けた。
アレイスター: 「この赤い髪の少女は助けを求めてきた。俺は高潔な心を持つ者として拒めなかったのだ」
村人たち: 「やっちまえ!」「助けてくれ!」「頼む!」
アレイスター: 「それでは参る!」
ズバッ!
突然、僕は殴られた。全く見えない速さの一撃で、床にうずくまるほど強かった。村人たちは笑い、アレイスターに拍手した。いつもこうだ。彼は僕を人間と扱わない。リューガがいれば止めてくれただろう。この数か月ローズと一緒に過ごして、少しは変われたかもしれないと期待していた自分がいた。でも普段の僕は弱くて惨めなんだ。
アキ(心の声): 「しくしく…自分でも人間だと思ってたのに…」
アレイスター: 「お前は何でもない、誰でもない。いつまでもそうだ。お前なんて死んだ方がいい」
彼がとどめを刺そうとしたその時、何かが起きた。
パン!
ローズがアレイスターの頬を叩いた。皆が唖然とした。誰もが驚いた。
ローズ: 「お前何様のつもりでアキにそんな口をきくの?人をそんな風に扱う権利があるの?アキに魔力がないかもしれないし才能がないかもしれない。でも彼はいい奴よ。私が友達だと言えることを誇りに思う。私に言わせれば、お前が一番のクズだ」
ローズ: 「お前らみんな腐ってる!人をどう扱うかなんて誰にも決める権利はない!アキに何をした?恥を知れ!アキは私の友達よ、堂々と言う!誰かがまた彼を虐げるなら、この村ごとぶちのめす覚悟だ!わかった?」
ローズがあれほど怒る姿は見たことがなかった。リューガ以外にここまで守ってくれる人がいるとは思っていなかった。彼女は「あなたが私の最初の友達でうれしい」とも言ってくれた。涙が止まらない。ありがとう、ローズ。本当にありがとう。彼女は僕の手を取ってその場を去った。村の人々はしょげていた。ローズの言葉が響いたのだろう。いつも僕は下を向いてリューガに頼っていたが、今はもう少し自分に自信が持てそうだ。
その後、僕たちは近くの公園へ行って落ち着いた。母さんが残してくれた小遣いがあったのでローズに渡し、彼女は二人分のアイスを買ってきてくれた。僕はアイスが好きだ。ローズが買いに行っている間、ベンチに座っていろいろ考えていた。
アキ(心の声): 「本当は僕がローズを守るべきなのに、今日は彼女の方が僕を守ってくれた。僕ってやっぱり情けないのかな…」
そのとき、見知らぬ女性が突然隣に座ってアイスを食べながら話しかけてきた。
謎の人物: 「アキ、好きなアイスの味は何?」
誰だこの女は?何を聞いてくるんだ?敵か?ローズに言うべきか?
謎の人物: 「友達に電話してカラスに変身しちゃう前に答えて。私、ダブルフレーバーが好き。二つ選べて両方食べられるから。あなたは?」
アキ: 「え…うん、僕もダブルが好きかな」
女はじっと僕を見て、遠くからは殺意すら感じたが、にっこり笑って言った。
謎の人物: 「合格ね。違う味を選んでいたら殺していたかもしれないけど、正解をくれたから助けてあげる」
そう言うと彼女はベンチを立ち、悠然と去っていった。
謎の人物: 「私は敵じゃないし、薔薇の魔女のことにも興味はないけど、望むなら手助けしてあげるわ。これから街の酒場で相手を探して寝るつもり。いつかまた会いましょう、シニガミ」
彼女は去った。僕はただ「今の何だ?」と呆然とした。ローズがアイスを持って戻ってきて聞いた。
ローズ: 「アキ、大丈夫?」
アキ: 「うん」
ローズ: 「はい、ダブルのアイスだよ、注文どおり」
アキ: 「ありがとう…大好きな味だ」
夜になった。ローズと一緒に一日を過ごしたのに、出かけた本来の目的は果たせなかった。村の誰もがローズが魔女であることに気づかなかったのは驚きだが、魔女はたいてい人に気づかれないものだ。むしろ、僕がどうしてあのとき気づいたのかが不思議だ。二人で並んで歩くと恋人同士に見えた…本当に恋人みたいだ!
ローズ: 「アキ、顔赤いよ。大丈夫?」
アキ: 「うん…大丈夫」
夜は静かで穏やかだった。空には月が輝き、星が散りばめられていてまるで名人の絵のようだ。こんな夜が続けばいいのに、と願った刹那、僕の悪運が炸裂した。
ドカーン!
巨大なムカデが突然襲ってきた。ムカデは村の大部分を破壊し、砂塵が舞った。そして正体不明の男が現れた。
男: 「もう少しで死んでいたな」
不意打ちの攻撃でローズと僕は重傷を負った。ほとんど動けず、呼吸も苦しく、空気を吸うたびに肺が焼けるようだった。
ムカデ使い(ドク): 「おとなしくしていろ。俺の攻撃を受けた者は特殊な毒に侵される。無闇に動けば死ぬ。ただし皮肉なことに、その毒は動くと激痛で悶えるようにする」
僕は地面に倒れてローズが無事かどうかもわからなかったが、突然ローズの蔓が現れて敵に向かって攻撃した。
ローズ: 「くそ…アキの母さんに借りた服が台無しだ…覚えてろ!」
ローズは傷だらけだったが動けた。
ドク: 「二人とも毒を侵しておいた。特にお前のはガキより薄めにしたが、騒げば毒が悪化して死ぬぞ。おとなしくしていろ、美人さん」
ローズはその言葉に怒り、蔓を次々伸ばして攻撃したが、ドクは防いだ。彼の力は触れた物をムカデに変え、それを自在に操るらしい。それらは鞭のように速く動いた。
ドク: 「薔薇の魔女、お前の呪いは触れた場所から棘つきの蔓を育てる。俺と似たような使い方ができるが、お前の蔓は魔力を吸収したり、呪いを無効化したりできる。しかし弱点もある。脆く燃えやすい。守りに使うなら何層も重ねて弱点を隠さねばならない。あのカラスの腕に蔓が埋まっているのが見えるし、足にもあるようだな」
ドクはローズを徹底的に調べてきたようだ。彼は戦う前に標的を調査する。彼の呪いは接触したものをムカデに変え、己も含めて操る。ムカデの毒は強烈な痛みを与え、アナフィラキシーや心筋虚血、神経毒性など致命的な副作用もある。感染経路によっては細菌やウイルス、寄生虫も媒介するかもしれない。一方でローズの蔓は魔力を吸収して呪いをやめさせる力があるが、脆く燃えやすい。ローズはアキに植えた蔓で彼の毒を一部吸い取ったが、その蔓は小さく、吸収限界を超えた瞬間に枯れた。それでも致死量にはならない程度には減らせた。ローズは救出の方法を考え、ムカデ使いに正面から蔓で攻めたが、彼はムカデを放って防いだ。実はその攻撃は囮で、ローズは地下を移動する複数の蔓を伸ばして彼を捕らえたが、蔓が繊細だったため彼は脱出した。そしてローズとアキはすでにいなかった。
ドク: 「ふっ、逃げられたか。だが毒はまだ体内に残っている。蔓が吸い終わる前に追跡してやる」
村を離れた先で、ローズはアキの体に残った毒を蔓で吸い尽くしていた。
ローズ: 「危なかった」
アキ: 「ローズ…助けてくれてありがとう」
ローズ: 「どういたしまして」
……
ローズとアキ: 「今日は楽しかったね」
(笑い声)
アキ: 「ねえローズ…こんな風に僕を守ってくれた人は初めてだよ」
ローズ: 「それってどういう意味?」
アキ: 「ダンテの件で村であったこと、あのときほど僕を守ってくれた人はいなかったよ」
ローズ: 「リューガはどうなの?いつも守ってくれてなかった?」
アキ: 「ダンテはそこまではしなかった。リューガがいつも止めてくれたから。みんなリューガがいない今、僕は完全に孤立したと思ってるけど、ローズがいてくれて嬉しいよ」
ローズは黙り込んだ。今は穏やかだが、あのムカデ使いがまた見つけてくるのは時間の問題だ。それでもその瞬間は平穏だった。
ローズ: 「アキ、あのね…」
バン!
さっきの巨大ムカデが再び現れた。どうやらドクが追跡してきたらしい。
ドク: 「速いな、カラス」
幸い僕は攻撃が当たる前に変身できた。死神と話したあの時以来、久しぶりにカラスの姿になった。
ローズ: 「今は意思で変身できるのね。それなら力をもっと制御できるってことね、アキ」
アキ(カラス): 「危なかった…!死ぬ前に女の子にキスしたかったんだ!」
ローズ: 「変態」
ドク: 「この野郎、どういうつもりだ?」
どうやらアキはまだ呪いを完全に制御していないらしい。
そのとき、さっき公園で会った謎の女が現れた。状況にもかかわらず、彼女は平然としていた。
ローズ: 「あなたは誰?あの人と繋がってるの?」
謎の人物: 「カラスの知り合いよ」
ローズ(心の声): 「アキには他に友達がいないと思ってたけど、この女は胡散臭い」
謎の人物: 「ねえ、シニガミくん。キスしたことないって言ってたわね?」
アキ(カラス): 「え?」
謎の人物: 「この相手を倒したら、私が心を込めてちゅーってしてあげる」
キ、キ、キス!?
謎の人物: 「その顔を見ると興味あるみたいね。でも君の友達はそれでいいの?」
ローズ: 「別に構わないわ。この変態が何しようと知ったことじゃない」
ローズが了承するの?でもこの女の提案を受けるべきかどうか分からない…どうするべきか?
主人公のジレンマだ──知らない人の申し出を受けるか否か。
つづく…




