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転生したら悪役にされがちな騎士団の“おかん”になってました~この騎士たち、どこか弟に似てて放っておけない~  作者: k-ing☆書籍発売中


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25.兄ちゃん、兄を語る

「翼が折れた騎士団のくせに何様だ!」

「そもそも自称騎士団の平民が貴族街に近寄るとバカがうつるぜ」


 青翼騎士団の部下二人が煽ったことで、ジンさんとゼノさんは見たこともない怖い顔をしていた。

 眉は吊り上がり、見開いた目は獣のような異常な鋭さを帯びている。


「俺らよりも弱いくせに威勢だけはいいすね!」

「私は貴族だし、お前らよりは頭の出来が違うけどね」


 ジンさんとゼノさんがさらに挑発に乗ると、もう僕には止められない。

 青翼騎士団が掴みかかったら、その場で殴り合いになっていた。

 持っていた剣で斬りつけるのかと思ったが、喧嘩ならまだ良いだろう。

 よく弟も喧嘩をしていたからね。


「おい、ソウタ無事だったか!」

「大丈夫ですか!?」


 エルドラン団長とエリオットさんが遅れてやってきた。

 その後ろには他の黒翼騎士団員たちがいる。


「エルドラン団長、二人を止めてください」


 体が小さい僕では喧嘩を止められる気もしないので、黒翼騎士団たちに手を振ると、すぐに駆け寄ってきた。


「ああ、騎士たちの殴り合いなんて死ななければ大丈夫だ」


 死ななければ喧嘩をしても良いってさすがにやりすぎな気もする。

 すでに青翼騎士団の部下二人の顔には痣がいくつもできている。


「それよりもこの揚げ物料理はなんだ!」


 エルドラン団長は近くに置いてあるじゃがいも料理が気になったのだろう。

 残ったポテトチップスを口に入れていた。


「あっ、団長せこいです!」

「俺も食べたいですよ!」


 他の団員もエルドラン団長に続くように、残ったじゃがいも料理を食べ始めた。

 外を見たら日が沈んできている。

 働いてお腹が空いて我慢できなかったのだろう。


「バリー兄さん、ソウタを勝手に連れて行かないでください」

「なんだ、使えない弟か」


 華美な服を着ていた青翼騎士団の上司、バリーさんは鼻で笑う。

 顔が似ていると思っていたが、どうやらエリオットさんとは兄弟のようだ。

 ただ、兄弟にしては仲が悪いのだろう。

 二人して俺の手を引っ張り出した。


「また俺のために働いてくれたんだろ? こんなに料理ができるシェフを――」

「違う! あれは私が未熟だったからだ……。それに罪を擦りつけたのはバリー兄さんではないか」


 なにやら兄弟喧嘩にしては、内容が重たすぎる気がした。

 それにエリオットさんに罪を擦りつけたってどういうことだろう。

 さっきも『翼が折れた騎士団』や『自称騎士団』と言われていた。

 ひょっとしたら、すでに悪役としての道を歩んでいるのだろうか。


「爵位の発展のためには、弟の手柄は兄のものだ。そんなもの当たり前――」


 どこに弟の功績を奪う兄がいるのか……いや、ここにいたのか!


「当たり前じゃない!」


 僕はバカ兄のバリーさんを睨みつける。


「お兄ちゃんは弟や妹に優しくするのが当たり前だ!」


 僕だってまだ子どもだけど、そんなことくらいはわかる。


「それを弟の手柄を奪ったって……僕の弟をいじめるんじゃない!」


 僕はバリーさんの手を振り払って、エリオットさんの前に立ち塞がる。

 でも……エリオットさんの方が大きいから、全然隠れてないよね?


「はぁん? 出来損ないが――」

「……出来損ないなのはあなただ! エリオットさんはいつもムスッしていて、ハムスターみたいに無言でモシャモシャご飯を食べているけど……」

「んっ? ソウタそれは……?」


 僕はエリオットさんをギュッと抱きしめる。

 

「誰よりも優しくて、みんなのことを一番思っている温かい人なんだ!」


 口数は少ないけど、みんなを見ている時のエリオットさんは優しい顔をしている。

 いつも仲間を大事にしているのが、表情から伝わってきていた。


「だから、功績を奪ったバリーさんのことだって、自分の未熟さのせいにしているじゃないか!」


 エリオットさんの目が少しだけ揺れていた。

 まるで今になって何かに気づいたようだ。

 きっと優しいエリオットさんは、バリーさんに功績を奪われたことは何も思ってないのだろう。

 それよりも信じていた兄から裏切られたことに対して悲しんでいた。


「弟のことを考えないと兄は兄じゃない! エリオットさんは僕の弟だ!」


 こんなバカな兄を持ったエリオットさんが可哀想だ。


「もう帰るよ!」


 僕はそのままエリオットさんの手を掴んで、玄関の方に向かっていく。


「ほら、みんなも人の家に勝手に上がり込んでご飯を食べないの! 僕はそんな風に教えたつもりはありません!」

「えっ……ソウタ……まさか……」


 僕の言葉にポテトチップスを食べていたエルドラン団長は手を止める。

 他の騎士たちもどこかあたふたとしている。


「今日の夕ご飯は抜きです!」


 その言葉に黒翼騎士団員は固まった。

 今まで夕ご飯を抜きにしたことはなかった。

 だが、さすがに今回はやりすぎだ。

 部屋はぐちゃぐちゃだし、青翼騎士団の部下は顔や体が痣だらけだ。

 警察に通報されないだけ、マシだと思っ……いや、騎士がこの世界の警察みたいな存在か!


「うちのバカな弟たちが申し訳ありません。今後はこのようなことがないように気をつけます」


 ちゃんと兄として謝らないといけないからね。


「おい、ソウタ待ってくれよ! 夕ご飯を楽しみに帰ってきたんだぞ!」

「俺もやりすぎたっす! だから、夕ご飯なしだけは、勘弁してくれっす!」

「私もソウタの弟……いや、婿になりたい」


 僕たちを追いかけるようにエルドラン団長、ジンさん、ゼノさんが慌てて駆け寄ってきた。

 それにしても、ゼノさんは相変わらず変わり者だね。


「それならちゃんと反省してくださいね! おじゃましました!」


 僕は弟みたいな黒翼騎士団員を引き連れて、すぐに青翼騎士団の庁舎を後にした。

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