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転生したら悪役にされがちな騎士団の“おかん”になってました~この騎士たち、どこか弟に似てて放っておけない~  作者: k-ing☆書籍発売中


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22.黒翼騎士団、再び舞い上がる ※レオ、エルドラン視点

「どうしよう……ソウタが……」


 俺は母さんに抑えつけられ、ただ大事な友達が連れ去られるところを見ることしかできなかった。

 店の中は汚れ、あるのは床に落ちたパンやスープ。

 毎日必死に作ったものが、『貴族の騎士』という理不尽な存在に汚されていく。


「レオにい、ソウにいが……」


 隠れていたノアとノエルが急いで駆け寄ってくる。

 二人ともケガはなく、どうやら無事だったようだ。


「母さん、俺エルドラン団長のところに行ってくる!」


 俺は店を後にして黒翼騎士団の騎士を探すことにした。

 エルドラン団長の顔は怖いが、不器用な心優しい人だ。

 ソウタを俺のところに連れてきたのも、エルドラン団長の優しさだと思っている。

 今、この状況を変えられるのは黒翼騎士団ぐらいだろう。

 だって、ソウタを連れて行ったやつらは俺らから嫌われている青翼騎士団だからね。

 そもそも騎士団の印象を悪くしたのはあいつらが原因だろう。

 あんな横暴な姿を見せられたら、誰も関わりたくない。


 街の中を歩くと、話は俺の店の出来事で溢れかえっていた。


「レオくん、無事だったのね!」

「おばさん! ソウタが誘拐された!」


 俺の声にさらに街の中はざわめき出す。


「ソウタは大丈夫かしら?」

「でもあの子も黒翼騎士団の一員なのよね?」

「私たちじゃ、どうすることもできないわ……」


 みんなから心配する声が聞こえてくるが、相手が貴族の騎士相手だと何もできない。

 そもそも貴族の騎士は、本人も貴族なのが問題だ。

 貴族に俺たち平民が刃向かったら、最悪殺されてしまう。

 だから、母さんも俺が飛び出さないように、声を潜めて抑えつけることしかできなかった。


「黒翼騎士団の人を見ていないですか!」

「せめて黒翼騎士団員を探しましょう!」


 おばさんも一緒になって声をかけていく。

 ただ、帰ってくる言葉は――。


「今日は黒翼騎士団の見回りがないわね……」

「いつもならどこかにいるはずなのに」


 普段なら街の警備や見回りをしてくれているのに、黒翼騎士団員を誰一人見ていなかった。


「黒翼騎士団の家に行ってみる!」

「それはやめた方がいいわ」


 黒翼騎士団の庁舎は、一般人が近づいていいところではない。

 それが平民たちの認識だ。

 だが、このままだとソウタが何をされるかわからない。

 きっと今の黒翼騎士団なら問題ないだろう。


「どっかで団員をみたら、声をかけてください」

「えぇ……」


 おばさんの反応からして、まだ黒翼騎士団員に声をかけるのは苦手のようだ。

 俺は無心で黒翼騎士団の庁舎に走った。


 ♢ ♢ ♢


 魔物の討伐を終えた俺たちはソウタが待つ庁舎に帰っていく。

 今日のお弁当も相変わらず美味しく、力がみなぎってたくさんの魔物を討伐した。

 ソウタが来てからは、団員全体のやる気も上がり、昔の黒翼騎士団とは別物だ。


「エルドラン団長、今日は何が食べたいですか?」

「あー、俺はトンカツが食べたいな」


 隣で副団長のエリオットが話しかけてくる。

 彼も何がきっかけになったかはわからないが、以前より距離が近くなった。

 少し前まではツンケンしており、何を考えているかわからなかったからな。

 きっと今は――。


「また揚げ物ですかって顔をしているな」

「昨日もエルドラン団長のわがままでゆーりん……ちーでしたっけ? 鳥の唐揚げ似のやつが出てきたじゃないですか」

「俺が団長だから仕方ない」


 ソウタは毎朝早起きした人に夕食のメニューを聞く癖がある。

 だから、俺は酒もやめて毎日早起きするようになった。

 他の騎士団員も似たようなものだが、俺が起きた後はみんなの部屋の前に荷物をひっそりと置いたりして邪魔をしているからな。


「なんか町の中が騒がしいすね?」


 ジンが町の異変を感じたようだ。

 そういえば、ソウタが来てからは街も変化があったな。

 みんな俺たちを怖がらなくなったし、時折声もかけられる。

 それも全部ソウタのおかげだ。

 あいつは誰構わず話しかけるし、その辺のおばさんと長いこと立ち話するぐらい。

 この間、夫に家事を手伝わせるにはどうしたら良いかと、ソウタに聞いているおばさんもいた。

 俺らはそんなソウタを眺めていることが多い。


 俺たちはそのまま庁舎の前に向かうと、入り口に小さく丸まって座っているやつがいた。


「黒翼騎士団に何かようか?」


 声に反応して、ビクッとする。

 俺は周囲を見渡して、ソウタがいないか確認する。

 こんなところをソウタに見られていたら、今頃怒られていただろう。

 顔が怖いから荒っぽい言葉は使わないようにって言われているからな。


「団長!」


 立ち上がって近づいてきたのは、宿屋のレオだった。

 ソウタがいるはずなのに、庁舎の入り口に座り込んで何をしていたのだろうか。


「ソウタが……ソウタが大変なんだ!」

「ソウタがどうしたんだ?」


 ソウタに何かあったのだろうか?

 今頃なら、いつものように調理場で……俺たちの帰りを待っている時間帯のはずだ。


「騎士団に誘拐された!」


 その言葉に俺は……いや、俺たち黒翼騎士団の時間が止まった。


「それはどこの騎士団だ?」

「ヒィ!?」


 俺の声が低く沈むと、レオはその場で怯えたように震える。

 あれだけソウタにビビらせないようにと言われていたのに、俺は約束を破ってしまった。

 でも、今はそれどころではない。

 レオは涙を滲ませながら答えた。


「青色の服を着たやつらだ」


 一瞬、空気が張り詰めた。

 次の瞬間、いつもは無表情なエリオットが大声で笑い始めた。


「ははは、兄さんは何をやらかしてくれたんだ!」


 感情を表に出さないエリオットの笑いに、俺は冷静になる。

 エリオットの兄は青色騎士団の副団長を務めている。

 そして、エリオットがこの黒翼騎士団にいるのは、その兄に手柄を横取りされたからだ。

 それと同時に全く見覚えのないミスを兄になすりつけられて、黒翼騎士団にやってきた。

 その当時は爵位の発展のためと言われ、無理に納得していたが今は違う。


「次は許さない」


 エリオットが剣の柄を手にかけると、ジン、ゼノとともに走り出した。

 怒りと決意が、全員の瞳に宿っている。

 団員の誰かが呟いた。


「ソウタを奪われたままで、黙っていられるか!」

「行くぞ黒翼騎士団! どんな手を使ってでもあいつを取り戻すぞ!」


 三人を追うように他の団員も足を動かす。


「知らせてくれて助かった。もう大丈夫だ」


 俺はレオの頭に手を置き、ゆっくりと撫でる。

 俺たちを怒らせたら、どうなるのか思い知らせてやろう。


 折れた黒い翼は、再び空へ舞い上がる――怒りとともに。

お読み頂き、ありがとうございます。

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マッチョ売りの令嬢、今日も筋肉を売っています。〜筋トレのために男装してたら、王子の護衛にされました〜

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