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第九話「浮島都市オクタヴィア」
旅を続けた俺たちは、《浮島都市オクタヴィア》へと辿り着いた。
そこは音楽と魔法の首都——八つの属性が交わる“多重旋律の街”だった。
「うわ……でっけえ……!」
「演奏会場と魔法学舎、あと路上演奏認可区域まであるぞ。完璧な音楽都市だな」
「……こういう場所、苦手だ」
ルゥは人混みを避けるように帽子を深くかぶった。
街には、あらゆる楽器の音があふれていた。ストリートバンドにオーケストラ、さらには空中で踊るエアチェロまで。
「音が……多すぎる……!」
トランペットの俺には、興奮と混乱が同時に襲いかかる。
そんな中、耳に飛び込んできたのは——ヴァイオリンの旋律。
静かで美しく、それでいて不気味なまでに完璧。音が、心を縛ってくるような感覚。
「これは……魔力じゃない。支配だ……!」
音のする方へ駆け寄ると、そこに立っていたのは漆黒のローブをまとった女性だった。
彼女は演奏を止め、こちらを振り向いた。
「あなたが“即興奏者”……ね。興味があるわ」
目が合った瞬間、心臓が一拍、遅れた。