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第三話「吹奏魔法《ソノル・アルカナ》」
「この世界は、“音”が力を持つ世界じゃ」
フィリナの言葉で、俺の異世界レッスンが始まった。空中庭園のような場所で、俺は座り込んで話を聞いていた。
「すべての魔法は、奏でることで発動する。これを《ソノル・アルカナ》、すなわち“吹奏魔法”と呼ぶ」
「演奏が魔法になる……?」
「うむ。風の律者であるわらわは《笛》による風魔法を得意とする。だが、そなたの持つ“トランペット”は、失われた金属の神具。“音の波”そのものを増幅させる、伝説の楽器じゃ」
つまり、俺は音を鳴らすだけで、魔法の発動ができる……?
「やってみろ、奏人」
言われるままに構え、軽く息を吹き込む。低く、落ち着いたB♭(ベー)の音が辺りに響く。
——バサッ!
草むらが風圧で一瞬にしてなぎ倒された。
「……マジかよ」
「これは“音圧系”の基本魔法じゃな。だが、そなたの音はそれだけではない……その楽器、目覚めておる」
俺の手にあるトランペットは、ふふんと鼻を鳴らすように輝いていた。
「俺を吹けば、お前の心の音が、世界に響くぜ」