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第二十五話「気配を読む譜」
“沈黙の狩人”は、再びゆっくりとこちらに向かって動いていた。
ソラが手で制止の合図を出し、全員が一斉に呼吸を浅くする。
その瞬間、地面に落ちた小石が転がる――
狩人が跳ねた。ルゥのすぐ横を風が切り裂いた。
「ダメだ、このままじゃやられる!」
俺は咄嗟に譜術を思い出す。“音”を使わずに発動できる補助術——『無音記譜』。
心の中で旋律を思い描く。空気の振動ではなく、心象で紡がれる音楽。
《風の遮断》。俺たちの周囲の気配がぼやけ、狩人の認識から一時的に外れた。
「今のうちに——走れ!」