第二十四話「沈黙の狩人」
《エンディング・フィールド》を歩く時間は、異様に長く感じられた。
空はずっと同じ鉛色。どれだけ進んでも、風景は変わらず、灰の地面と黒ずんだ岩の影が続くだけだった。
「……ソラ、この道で合ってるのか?」
俺が問いかけると、彼女は首を横に振った。
「“道”なんてものはない。ただ、スコアの気配がかすかに感じられる……そんな気がして、進んでいるだけ」
それだけが頼りだった。
歩を進めていくと、岩陰の向こうから小さな“音”がした――ような気がした。
「……今、何か聞こえなかったか?」
ルゥが眉をひそめる。
全員が動きを止めた。
沈黙が広がり、世界から色さえ奪うようだった。
……そのとき。
「——ッ!!」
突然、ミーレが飛び込んできて、俺の肩を押し倒す。
直後、俺たちがいた場所に、黒い影のような“何か”が通り過ぎた。
空気が震えた。けれど、“音”は出なかった。
音すら殺すその存在は、まるで空間の断片だった。
「気をつけて……! あれが、“沈黙の狩人”よ」
ミーレが呟いた。
「音じゃない、“気配”を狩る化け物。目も耳も持たず、ただ“違和感”に反応して襲ってくる……!」
息を呑むことすら、恐ろしくなる。
音を出すわけにはいかない。けれど、何もせずにいれば、いつかあいつに“気づかれる”。
この大地に潜む、最初の“試練”が牙を剥いた。