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第二十三話「音の届かぬ大地」
風が止んだ。
俺たちはついに、《エンディング・フィールド》に足を踏み入れた。
空は鉛色、地面は灰のように乾いている。音は、まるでこの場所を恐れて逃げ出したかのようだ。
「……本当に、何の音もしない」
ルゥが小さくつぶやく。けれどその声すら、ここでは違和感を放っていた。
「この大地では、音を発することが“死”に繋がる」
ソラが険しい顔で言った。
「音に反応して動く“何か”が潜んでいる……」
トランペットの重みが、今は恐ろしく感じる。
けれど、ここを越えなければ“焔の調べ”には辿り着けない。
「……それでも進む。音がなくても、俺たちは止まらない」
音なき世界に、俺たちは一歩を踏み出した。