19/42
第十九話「鼓動、揺らぎ始める」
塔を離れた後も、ルゥは時折、右手を押さえていた。
「リズムが、うまく刻めない……。自分の音が自分のじゃないみたい」
共鳴されて以降、ルゥの鼓動が乱れている。まるで、心拍を他者に奪われたかのように。
「彼女……あたしの“核のリズム”を喰ったんだと思う」
“核のリズム”——演奏者にとって、生命と直結する根源のビート。
「それを取り戻す方法が、空にあるって聞いたことがある」
ソラが口を開く。
「古の島。空に浮かぶ都市跡、そこに眠る“空の旋律”は、演奏者の魂を増幅させる」
目的地は、天空の浮遊島。