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第十七話「音の始祖《プリモ》と黙示の記譜」
夢とも記憶ともつかない空間に、誰かがいた。
「汝、奏でる者か……それとも、黙す者か?」
声は、直接心に届いた。
「俺は……奏でる者だ」
「ならば、選べ。調律を進めるか、それとも“原音”に還るか」
その手には、一冊のスコアが握られていた。まるで黒く燃えるような譜面——黙示の記譜。
「これは……世界を終わらせる音だ……!」
その瞬間、俺は時間の流れに引き戻される。
目を覚ますと、塔の最下層。スコアの一部は俺のトランペットに取り込まれていた。
「君は……それでも演奏を続けるのか?」
ソラがそう問う。
「もちろん。だって俺は、音で世界を救うって決めたから」