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第十六話「静寂のヴィオラと逆行の旋律」
「このヴィオラは、弦がない。だからこそ、時間を鳴らすことができるんだ」
ソラは塔に住み続け、時間の記録を採集していた。彼が求めていたのは、**“音の過去”**だった。
「君のトランペット、即興だろう? だったら一つ、頼みがある」
ソラは、塔の最下層にある“時間の核”へ案内してくれた。
そこには、第二のロスト・スコア——“反復と変奏”の断片があった。
「これを演奏すれば……君は、“世界が音を失った日”を視ることになる」
「……構わない。知りたい」
俺はロスト・スコアに息を吹き込む。
すると次の瞬間——
音が、すべて消えた。
空も、風も、俺の心音すらも。
そして現れたのは——
かつてこの世界に音を与え、そして“禁じられた調律”を行った存在。