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第十四話「旋律を喰らう者」
その夜、焚き火の中でルゥがぽつりと呟いた。
「……あたし、昔、一度だけスコアに触れたことがある」
「え?」
「子どもの頃……鼓動が消えるって感覚。怖かった。だから、ドラム叩くようになったの」
ルゥのリズムは、自分自身を生かすための鼓動だった。沈黙に抗う音。
「次はどこへ向かう?」
「《フェルマータの塔》。時間の旋律が残ってる場所だ」
そこには、時間属性の音が眠っているという。
——ただし、そこには“旋律を喰らう者”がいるという噂もあった。