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第十三話「森に眠る第一楽章」
最初の目的地は、《ユーフォリアの森》。
そこには“木管の調べ”が今なお揺れているという。
「森って、嫌な予感がするんだけど……音が反響しすぎると、ルゥが機嫌悪くなるの」
「うるさい……別に怒ってない」
ルゥが口を尖らせる。確かに、木々の間を抜ける音は不気味なほどクリアだ。
その奥、古びた祭壇に封じられていたのは、フルート型のスコアの断片だった。
が——
「来たか。和音を捨てた者ども」
姿を現したのは、無律協会幹部・“ディスコード三姉妹”の長女、セレナ。
「旋律は支配。調和など、弱者の逃げ場にすぎない」
セレナの音は、無音だった。いや、**“逆位相”**の音——鳴っているのに、聴こえない。
「耳じゃ聴けないなら、体で感じろ!」
俺はラッパを構え、《スパイラル・スクリーム》を発動。
空気をねじり、逆相の音を叩き壊す。
「……あなたの音、まだ未完成ね。でも悪くないわ」
セレナはその場を去り、スコアの欠片だけが残った。