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006 案内役

 二階層は見渡す限りの荒野の階層。

 日差しが微妙に強くて、一階層が環境的に快適な部類だっただけに違いが顕著に感じられる。

 まあ、私の神域魔法は結界内を環境を快適に保つなんて楽勝なので、まったく問題ないんだけれどね。


 ちなみに、ダンジョン内でも太陽光のようなものが存在していて、かなりの高さにある天井から降り注いでいる。時間経過で光量の変化もあって、夜には星こそ瞬かないけれど、月明かりくらいの明るさにもなる。

 あちらの世界では天井の一部をぶち壊して色々と調べたらしいけれど、ダンジョン外に持ち出すと光が消えてしまうので、ダンジョン内限定の不思議物質という結論が出ている。

 こちらの研究結果も似たようなものらしいけれど。


 二階層はまだ地図があるので、まったりのんびりてくてく散歩気分で進んでいく。

 地面が茶色で、植物はところどこにちょろっと生えている程度なので、この階層で薬草を探すのは無理そう。同様の理由で果物も無理っぽい。

 二階層でいきなり薬草採取ができなくなるってこのダンジョン終わってる気がする。もっと採取専門の人に優しいダンジョンにすればいいのに。




 採取もできないダメダメな階層なので、寄り道もなにもなく真っ直ぐに三階層まで向かったおかげか、夕方前には階段に到着できた。

 セーフティゾーンのある五階層を目指す探索者は、大体この階段前で一泊するらしい。

 階段は狭くてそこそこ段数があるので、寝るには正直向かない。

 さらには人間がいなければモンスターも階段を使うことはないけれど、階段の中にいる人間には襲いかかってくるし、そのまま階層を跨ぐこともある。その辺はこちらもあちらも同じなよう。


 二階層側には野営組はいないみたいなので、さくさくと階段を降りて三階層に到着。

 ここからは地図がないので手探りでの探索になるので、できれば目的地が同じっぽい探索者のあとをつけていきたい。

 幸運なことに、三階層側には野営準備をしている探索者のパーティがいたので、あのパーティのあとをつけて行こう。そのためにも私も野営の準備だ!


 私には神域魔法というさいつよすぎる魔法があるので、選んだ野営道具も居心地重視。防犯用品も結界があるので必要ない。

 テントはワンタッチで完成し、ご飯も収納空間にあるお弁当と飲み物で完璧。あとは眠たくなるまでタブレットでアニメ鑑賞と洒落込んじゃうよ! ダンジョンで見るアニメは最高だぜえ!


 ……とか思っていた時期が私にもありました。

 いや、モンスターに襲われたり、探索者に見つかって襲われたりなんていうハプニングはなかったんだけれど、ついついアニメを見すぎて寝るのが遅くなって……。


 起きたらあとをつけようと思ってた探索者パーティいなかったの! がっでむ! 私の案内人! かむばーっく!


 まあ、おいてかれたのは仕方ない。別にあのパーティに声かけてたわけでもなんでもないしね。アニメ面白かったし。

 野営道具一式をさくっと空間収納に閉まえば、出発準備も完了。地図がないから適当な方角を選んでてくてく歩いていく。


 三階層は草原と大きな丘が多数の非常に見渡しの悪い階層になっていて、案内役に任命した探索者パーティを探すのは難しい。

 ちょっと丘を超えたら次の丘のせいで先が見通せなくて、さらにはモンスターがスタンバっていたり、若干奇襲染みたことまでやってくるようになるみたいだね。

 私はモンスターに気づかれることがないので、丘の斜面で待ち構えているモンスターの横をささーっと降りていくだけなんだけれど。


 三階層では、この地形のせいで奇襲っぽいことをされるのが問題なのか、あんまり探索者をみかけない。

 丘のほかは草原のようになっているので、一応植物も生えているものの、買取対象のものはあまりみかけないので、採取でも討伐でも微妙な階層だと思う。

 これではこの階層で討伐や採取をメインに行おうとは思わないだろう。私も思わないし。




 ……いや広い! あのパーティを逃したのは本当に失敗だったわ!

 見通しが悪くて丘を何度も何度も超えて移動しないといけないので、肉体的には疲れなくても精神的にドンドンだるくなってくる。

 まだ、森を歩いていた方が気が楽だよ! 採取できるし!

 これで魔法の武器とかあればモンスター討伐してストレスも発散できるんだけれど、ないものは仕方ない。普通の武器じゃ倒すだけでも一苦労で逆にストレス溜まるやつだしね。


 諦めて今から帰るっていうのも、半分まできてるっていうのが悔しくて選べない。われ、神域の聖女ぞ? たかが三階層で逃げ帰るなぞありえん!


 とはいえ、全然階段が見つからない。

 ……もしや階段見逃してる? この階層は丘がたくさんあるので、登っては降りてを繰り返している。

 下りには高確率でモンスターがスタンバっているので、ささーっとスルーしているのであまり周りを気にしていなかったのだ。

 下りのところに階段あったら見逃してる可能性があったのだ。おかしいな? 私、あちらでいくつものダンジョンを踏破した猛者ぞ? あっれー?


 ……まあ、よく考えてみると。私のダンジョン探索って地図ありき、案内人ありき、探索用の魔道具ありきっていう……いやだって面倒じゃん! ダンジョン探索してた主な目的ってストレス発散だったのだもの!

 結界張るだけなら別にダンジョン踏破する必要なかったしさ……。


 色々と冷静になってみると、この階層みたいな丘が視線を遮っているだけの場所なら上から見ればいいんじゃね?ってことで、結界で階段作って登ってみた。

 ……うん。あったね。やっぱり下りの斜面だったわ。


 四階層に到着したらもうすっかりあたりは真っ暗だったので、精神的に疲れていたのもあって速攻野営準備をして寝ました。

 まあ、収納空間から展開済みのテント出して寝るだけなので超簡単なのだけれど。寝袋じゃなくてちゃんとしたお布団持ち込んでるしそのままになってるからね。




 たっぷり寝て精神的に回復したので、朝ごはんを食べていざ探索。

 四階層は深い森で、上から見て階段発見作戦は使えなかった。

 でもここさえ突破すればもう少し。

 

 上から見て階段こそ見つけられなかったけれど、わちゃわちゃと戦闘している探索者は何パーティか発見することができた。

 遠くてよくわからなかったけれど、荷物もあんまり持ってなかったっぽかったから五階層のセーフティゾーンを拠点にしてるパーティかな?

 その中でも一番近いところにいたパーティを目指していざ出発。


 モンスターは動物型が多いのか、深い森という環境を利用した奇襲、待ち伏せなどを十全に活用する曲者スタイルで襲いかかってくるみたい。

 こういうパターンも私にはまったく通用しないので、あちらでは逆に奇襲したり、奇襲したり、奇襲してたんだけれど、今はスルー。

 でも他の探索者は当然スルーできないので、全周警戒でゆっくり進んでいるご様子。おかげであっさりと追いつけたから、ヨシ!


 ……というか、あのパーティ私が勝手に案内役に任命したパーティじゃん。 まだこんなところにいたの? てっきりもうセーフティゾーンについてるものかと思ってたよ。

 でも、そういうことならここからは案内役に再任命してあげよう。

 三階層の二の舞はごめんだからね。地図も探索用の魔道具もない現状ではゆっくり進行の案内役でもいないよりずっとよい。精神的にね! ほんとにね!


 彼らの後ろをてくてくとついていく。

 進行速度は遅いけれど、戦闘自体は特に問題もなく、さくさくと討伐してはゆっくりと進んでいく。

 彼らほどさくさく討伐できても、奇襲や待ち伏せは進行速度を犠牲にしても回避する理由がある。

 それは彼らが大量に運んでいる荷物だ。

 六人パーティの全員が自身の身長よりも大きな荷物を運んでおり、重量も相当だと思う。よく見てみると、ダンジョン街でも大きなお店の店頭に飾ってあったパワーアシストスーツを着込んでいるのがわかる。

 このパワーアシストスーツは専用の収納パックが付随しており、その中に最大荷重で一トンほども持ち運べるのだ。そんな謳い文句のCM映像が店頭で流れてたのを覚えてる。

 店頭で見たタイプとは少し違うみたいだけれど、結構似ているので同じシリーズとかそんな感じなんだろう。

 だとすると、一台あたりの金額はとんでもない価格になるはず。店頭に飾ってあったのは一台二千万円くらいだったし。


 戦闘中は一瞬で脱ぐことが出来て、さらには荷物を保持した状態で自立できる。おかげで着るときも簡単。大重量を無理なく運べて、すぐに脱着できるので戦闘の支障もない。

 まさに探索者向けの道具なのだ。

 とはいえ、着たまま戦闘するのは推奨されない。何せモンスターの攻撃をまともに食らえば簡単に壊れてしまう程度の耐久力しかないらしいのだ。

 だからこそ、奇襲や待ち伏せを最も警戒しているのだろうね。

 パワードスーツではなく、パワーアシストスーツなのだから、まあそんなものだろう。


 ……私の素直な感想としては、収納空間使えないと大変だよねー! だけれど。


 ノロノロとのんびりしたペースの進行だけれど、彼らは迷うことなく一直線に森を突っ切っていく。

 たまに大きな木や、パワーアシストスーツでは登りづらい崖なんかは回避していくけれど、大体まっすぐ進んでいると思う。

 つまり、彼らはきちんと向かうべき場所がわかっているのだ。

 なんどかスマホを確認していたし、たぶん地図だろう。ネットは使えなくてもダウンロードしておけば確認できるし、方位磁石的な使い方は十分できるからね。

 GPSも当然使えないけれど、探索者向けのスマホでは単体で色んな便利機能が使えるのを売りにしてる機種もあったからね。

 私のやつは容量と画面の大きさとバッテリー容量にこだわったやつだね。探索者向けのやつじゃないよ。


 彼らの後ろでアニメを見ながらゆっくり歩いていると、ようやくお目当ての場所についた。

 あれこそが私が探し求めた五階層への階段! やったぞ! 私は成し遂げたー!


 でも、ここまで特に問題なくやってきた彼らはセーフティゾーンまで行かずに野営をするご様子。

 あれだけ問題なく戦闘もこなし、階段まで迷わずこれているのに、ボスは倒していない? ふむぅ?



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