表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なんか異世界きたっぽい。  作者: 加藤凛羽/潮もずく
第1章【村の救世主】
9/14

9 なんか魔物狩りに慣れてきたっぽい。


 はっきり言おう。

 ゴブリン狩りだなんだと言っておいて、自分とほぼ同じ体格もある、しかも人型の生き物を殺すことには抵抗がある。


 だから、まずはこの精神的な壁をどうにかする必要があった。


「どうするかな……」


 実際にナイフを持って、軽く振り回してみる。

 子供に戻ったような感覚で、厨二病心を目覚めさせて振り回すそれは、おもちゃなんかよりも遥かにしっかりと、命を刈り取る重さを感じた。


 少しだけ、心臓の鼓動が早くなる。

 これから俺は生き物を殺すのだ。

 喧嘩なんてしたことのない俺に、そんなことができるのか。


 森の中を注意深く進みながらそんなことを考えてしまう。


 一歩油断すれば命がないのは自分だとは頭で理解していても、どうにも平和な現代日本の感覚から離れられない。


 そんな時だった。

 ふと、ある動画投稿サイトに掲載されていた、古武術の達人の話を思い出した。


 曰く、人は生き物を殺すことに抵抗を感じる。

 だから、それができるようになるための訓練が、昔はあったのだと。


 その内容は確か……


「ひたすら草刈りをする、だっけ」


 しっかりと殺意を持って草を刈る。

 それに慣れてきたら徐々にレベルを上げていく。

 草の次は小さな虫を。

 虫の次はもう少し大きな虫を。

 その次は小動物を。

 その次はもう少し大きな動物を。


 心に殺意を満たして、ただひたすらに刈ることを繰り返すことで、殺すことに心を慣れさせる。


 本来は何ヶ月もかけて行われる訓練だが、今はそんな時間はない。


 ならば別のアプローチが必要だ。


 じゃあ、別のアプローチって?


 簡単だ。

 ここが現実ではない、ゲームの中の世界だと感じられればいい。

 ゲームの中なら、生き物を殺すことに忌避感は湧かない。


 俺は森の中を歩きながら自分に言い聞かせた。


 この世界はゲームだ。

 何をしても構わない、自由度が高いゲームだ。

 その証拠にこの世界にはレベルやHP、MP、魔法、スキルがある。

 モンスターもいる。

 倒せば経験値が入り、レベルが上がる。

 スキルポイントももらえる。

 これがゲームじゃないなら一体なんなんだ──。


「すぅ……はぁ……」


 深呼吸して、ドクドクと鳴り響く心音を落ち着かせる。


 ……自己暗示、完了。


 ***


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……おぇ」


 数十分が経過した。

 しばらく森を歩いて遭遇したゴブリンを、なんとか討伐することに成功した俺は、自分の下で滅多刺しにされたゴブリンの死体に荒い息をあげていた。


 いくら自己暗示したとはいえ、その効果は完璧には程遠い。


 なんとか1匹狩ることには成功したが、肉を切る生々しい感覚や、吹き出る血飛沫の臭いには正直吐き気を我慢するのに苦労する。


 しかし鑑定解析のギフトを横に表示したままにしておけば、なんとか正気は保てる。

 この世界がゲームだと、暗示をかけ続けられる。


「……これは、ちょっと危険だな」


 この状態を長引かせるとどうなるかを一瞬だけ想像して、眉を顰めた。


 この暗示は危険だ。

 これは要するに現実から目を逸らすもの。

 素人の見様見真似、不完全とはいえ、不完全だからこそ変な癖が残ることもある。


 主人格に影響があると困るし、戦闘時と主人格を分けるための何かを作っておかないと。


(今はとりあえず、このナイフかな)


 血みどろの短剣に、小さなため息をついた。


 その後も俺は、ゴブリンを狩り続けた。

 一度殺してしまえば2度目以降は驚くほど抵抗感が薄くなったし、冷静に相手の動きを見切れるようになってきた。


 合戦から帰ってきたら段違いに強くなったという話を何度か聞いたことがあるけど、多分これもそういうことなんだろうなぁ。


「ふぅ」


 もう何匹目かわからないゴブリンの死体を横目に、自分のステータスを確認する。


 森に足を踏み入れた当初、1しかなかった俺のレベルは5まで上昇していた。


⚪⚫○●⚪⚫○●


マーリン

性別:女性 10歳

Lv.5

HP:50/50

MP:50/50


職業:修道女見習い

称号:記憶喪失の孤児


STR:1

VIT:1

INT:1

AGI:1

DEX:1

LUK:11


ステータスポイント:5


ギフト

・異世界言語

・鑑定解析

・アイテムボックス


コモンスキル

・逃げ足(1/10)

・危険察知(2/10)

・魔力操作(0/10)

・恐怖耐性(1/10)

・自己暗示(1/10)

・短剣術(2/10)

・身体操作(1/10)

・隠遁術(1/10)


ジョブスキル

・家事(2/10)

・早寝早起き(1/10)

・癒しの奇跡(0/10)

・浄化の奇跡(10/10)


スキルポイント:5


⚪⚫○●⚪⚫○●


「かなりスキルが増えたな」


 ジョブスキルは変化がないが、それ以外のスキルが増えている。


(ふむ、行動によってスキルが増えていくのだろうか?)


 逃げ足や危険察知は、この世界に来た当初、ゴブリンから逃げ回っていた時に獲得したもので間違い無いだろう。

 その次の魔力操作はあの女騎士のものを見様見真似で頑張った時に得たものか?

 0/10というのは熟練度だろうか。

 一度も成功していないと0のままなのかもしれない。


「とりあえず、ポイントはどう振り分けるか……」


 まず回復系のスキルは大事だ。

 この世界には安心できる病院がない。

 スキルで全て解決できるのなら、ないに越したことはないだろう。


 しかし全てを回復に回すと、今度は攻撃力や防御力が足りずにこの後のダンジョン攻略で支障が出る。


 ゴブリンではそろそろレベルが上がらなくなる頃だろう。

 ここは慎重になったほうがいい。


「魔法は魔力が無くなれば使えない。

 なら、物理攻撃に割り振るのが吉……とすると、短剣術か?」


 しばらく悩む。

 悩みに悩んで、結果、以下のようにポイントを割り振った。


⚪⚫○●⚪⚫○●


マーリン

性別:女性 10歳

Lv.5

HP:50/50

MP:50/50


職業:修道女見習い

称号:記憶喪失の孤児


STR:1

VIT:1

INT:1

AGI:1

DEX:6

LUK:11


ステータスポイント:0


ギフト

・異世界言語

・鑑定解析

・アイテムボックス


コモンスキル

・逃げ足(1/10)

・危険察知(2/10)

・魔力操作(0/10)

・恐怖耐性(1/10)

・自己暗示(1/10)

・短剣術(3/10)

・身体操作(3/10)

・隠遁術(1/10)


ジョブスキル

・家事(2/10)

・早寝早起き(1/10)

・癒しの奇跡(2/10)

・浄化の奇跡(10/10)


スキルポイント:0


⚪⚫○●⚪⚫○●


 レベルを上げたスキルは短剣術、身体操作、癒しの奇跡の3つ。

 癒しの奇跡のレベルを上げることで回復スキルを担保。

 さらに魔物との戦闘で必要な短剣術と、それを補助するための身体操作を上げることで生存率をあげる。


(奇跡系のスキルは幸運値で効果が上がり、かつMPを消費しないというのはなかなか便利でいいな)


 それから俺は、さらにゴブリン狩りをしながらダンジョンを探した。


 身体操作のレベルが上がったからか、かなり疲れにくくなった気がする。

 スキルに応じて、無意識に体の動かし方が最適化されているのだろう。


 魔力操作のレベルをあげれば、無意識に魔法の使い方がわかるようになるのだろうか?


「やっと見つけた……」


 ゴブリンを殺し続け、レベルが8に上がった頃だ。

 ようやく俺は、件のダンジョンの可能性がある遺跡へたどり着いた……頃には、すっかり日が傾いていた。


⚪⚫○●⚪⚫○●


マーリン

性別:女性 10歳

Lv.8

HP:80/80

MP:80/80


職業:修道女見習い

称号:記憶喪失の孤児


STR:1

VIT:1

INT:1

AGI:1

DEX:9

LUK:11


ステータスポイント:0


ギフト

・異世界言語

・鑑定解析

・アイテムボックス


コモンスキル

・逃げ足(1/10)

・危険察知(3/10)

・魔力操作(0/10)

・恐怖耐性(1/10)

・自己暗示(1/10)

・短剣術(4/10)

・身体操作(3/10)

・隠遁術(1/10)


ジョブスキル

・家事(2/10)

・早寝早起き(1/10)

・癒しの奇跡(3/10)

・浄化の奇跡(10/10)


スキルポイント:0


⚪⚫○●⚪⚫○●

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ