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節目

作者: 哀原 暖鼠

 「成人式に行く?同窓会は?」


 短い問いに答えられない。受験を経て、今の私がいるというのに、たかが閉じた質問に答えることができない。価値や意義なんてものを考えると憂鬱になる。暗い思いの原因に心当たりはないが、何を考えても気が晴れないままである。それでも行かねば後悔するように思えて、参加するに投票する。それから、友人には一応行くと返す。友人は行かないという、私の苦悩は何であったのか。しかし、プライドだけは高い私には、今から怯え憂鬱であったとしても投票を変えることはできない。残念だねと捨て台詞を吐いてスマホを置く。


 投票は2か月も前であった。大学生は忙しいと自分に言い聞かせて、空虚で自由な時間をスマホで浪費する。勉強でもすればいいものであるが、怠惰であることは会うであろうあの頃を過ごした人も知るように変わりない。唯一、アルバイトでストレスを感じる時だけいつも通りの自分であった。当日になって、どちらかというと負の感情で過ごした2か月があの頃なら永遠に感じたのだろうに、もうかと下らないことで大人になったことを実感する。同窓会は出会いの場と言われるらしいが、出会いも何も顔くらいは認識してると、心の中で惨めに悪態をついて、式典を乗り切る。式典は別に、あの頃の始業式やらと変わらず、オトナの話を聞き流して、空想に耽るだけであり、途切れてもオトナに自分も括られるのかぁと、おっさんをチラりと見て、また再開するだけで何ともない。


 一先ず帰宅し、眠さにどうしようもなく抗えず仮眠を取り、アラームを数度負かしてから、時間がギリギリであることを理解して、途端に覚醒する。まだ少しの余裕はあれど、事実、寝ても覚めても憂鬱で、ノロノロと皺にならないように脱いだスーツを着る。会場に向かうまでも足が重い。入口で彼らの一部が煙草を吸っている。飾る言葉で表現したくなくて、適当な理由で回避するために、こちらから久しぶりと声をかける。受付に費用を、と僅かな会話で切り抜ける。よく分かってない自分が嫌になるが、茶封筒を用意しなくてよかったらしい。受付でもたついて、自己嫌悪する。少し喋れる、喋ってくれるであろう過去の友人を見つけ、隅で話す。何事もない。


 開始された同窓会では、当然ながら、話しかけねば話しかけられることもなく、知ってはいたけれど中心的であった人らは人に囲まれている。全員が知り合いという空間で特に、という人には声をかけて話す。大半の人の名前が出てこない上に、女子は女性であり、より分からなかった。そんなことをすれば、2時間はあっという間に過ぎ、2次会には参加せず、気負いしていたことが予想通りなんてこともなく終わって、見えない肩の荷が下りる。ここであの子が、という青春か何かがあれば良かったが、そんなこともなかった。もう少し話したかったなと思った彼らに帰ってから勇気を出してlineを送る。彼らが2次会に行くのであれば、私もと思うが、これもなく。それでも、それなりに楽しかったと言えるので、費用も良心的だったなと明るく、少し爽快になれた。


 全体で撮った写真に写る友人を見つけた。


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