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人形姫と召使い  作者: 杏月いろ
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呪われた子

他国の文明がまだ発展していなかったころ、とある一つの小国が歴史的発展を成し遂げた。

その国の王は世界の英雄と讃えられ、多くの少年少女に夢と希望を与えた。

今や世界の殆どの国が日々研究を進めさらなる発展を目指している。


そんな歴史的出来事の背景には隠された事実が存在する。

影の英雄であり人々の尊敬すべき存在…ではなく人々から卑しまれる存在、魔女。

なんの技術も持たなかった小国は彼女の魔法の力で大きく発展したのだった。


だが魔女。

魔法などという不要領なものに頼ったと他国に知られれば、やっとの思いで大きくしたこの国をどんなふうに扱われるのか、、そう思った王はこの真実を国家秘密とし、永遠に隠すことにした。


魔女はもちろん、激怒した。

そうして王にこう告げた。


"千年に一度、この国に呪われた少女が生まれるだろう"

この言葉は王室に多くの混乱を招いた。

呪いの子がこの国にいると知られれば、愛する子供やその後世が

どんな目にあうかわからない。


しかし対策を練るまもなく、

王とその側近まもなくして死亡。

この真実を知るものはいなくなった。


そして千年後、約束通り呪われた子供が城下町の幸せな家庭に生まれた。

彼女は不幸せだったかと言われるとそうでもなく、優しい両親と兄弟、街の人に囲まれて育ち、

愛する子供や孫たちに囲まれて、普通の人よりちょっと長い人生を終えた。


二代目呪われた子はスラム街に生まれ、その気味の悪さと軟弱さから多くの暴力を受けた。

そんなとき通りかかり拾ってくれた商人と恋に落ち、遠い地の果てへ旅立った。

決して楽な人生ではなかったが、愛する人と最期を共にした。


そして三代目。

国有数の豊かさで多くの財を持つリオネット公爵家に生まれた。

期待に期待された長子であり、多くの人がその誕生を待った。


しかし、生まれたのは体中に痣を持つ人形のような少女だった。


公爵はその子の存在を隠し、城の隅に追いやった。

一日一食、掃除されていない部屋、気味悪がり近寄らない使用人。


そんな毎日が続くなか、とある出来事が起こった。

リオネット家に新たに女の子が生まれた。

愛らしい瞳に元気な泣き声。

公爵は第一子が生まれたと正式に発表し、盛大に祝った。


呪われた子はそんなときも部屋の中。

静かに妹の誕生を祝っていた。


数年の年月が過ぎたとある日、大きな出来事が起きた。

好奇心旺盛な妹が屋敷の中で迷子になった。

屋敷の人間総出で探し出し、やっと見つけた彼女は離れの塔で怯えた様子で見つかった。


離れの塔、呪いの子がいる塔だった。


すっかり怯え涙を見せる娘に公爵は言った。

「大丈夫だ、あんな化け物人形、すぐに殺してやる」


その日から呪いの子を殺す計画が実行された。


しかし普通の人間なら死ぬことも、彼女には通用しない。

世界中の暗殺者や死刑囚が攻撃しては彼女の不死身に驚き、舌を巻いた。


実際のところ彼女は不死身なんかじゃない。

普通の人間より、ほんの少し、死にづらいだけなのだ。


あまりの死ななさに公爵はとうとう諦めた。

呪いの子を離れの塔から遠く離れた領地の中にある、東の森の城で生活させることにした。


従者は一人、持ち物は最低限。


事実上の離縁だった。


「いいのよ、呪い生まれた私が悪いのだから。」

そう呟き馬車に乗り込んだ彼女の体は風が吹けば折れてしまいそうなほど、細かった。


ーーーーー


「ウィル??」

はっと目を開けるとそこには美しい人形が立っていた。


「大丈夫?」

「すいません、少しぼうっとしてました。」


公爵家は呪いの人形を手放した。

と同時に大国との貿易の要という大きな仕事を取り付けた。

まるで呪縛から解き放たれたかのように。


「ここに来てから働き詰めだもの。」


でも公爵家は知らない。

手放した人形がどんなに可憐で


「体を壊す前に休んでちょうだい。」


優しくて


「私なら大丈夫だから!ね?」


強い少女かということを。


「ウィル?聞いているの?」


この人の価値がわからないようじゃ、

公爵家もまだまだだ。


眼の前の少女に笑いかける。


「俺は、お嬢様のもとを離れませんからね。」


「?!ちょっ、なんの話?!」










これは、美しい人形少女と一人の召使いのありふれた日常の物語。

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