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こんなにズルい方法があって本当に良いの?

屋敷の敷地内にて修行を初めて2週間程立っていた。

筋力や持久力といった肉体の修行に、オーラの絶対値と操作性、魔法の練習をそれぞれ複合的に交互に行っている。

修行のメニューは自己流だ。

元々、パソコンを操作するだけのガリガリのもやし男に、効率的なトレーニング方法はわからない。

映画や、漫画やアニメで見聞きしたような方法を試しているだけである。

俺のトレーニングメニューを晒したいと思う。


まずは持久力のトレーニングから。

大きなリュックサックを自作し、その中に岩や屋敷にあった金庫等の重いものを詰め込んで、ずっしり重くなったそれを背負う。

オーラを肉体強化と負荷のため魔法『バインド』と半々に割り振り、結界内ギリギリをランニングする。

体力とオーラが尽きたら、結界小屋でオーラを回復しつつ、食事と休憩。

オーラが回復したら、今度は同じ負荷状態で逆立ちして敷地内を回る、上半身への負荷トレーニングだ。


肉体トレーニングの他には、オーラトレーニング。

循環オーラ量を最大まで増やした状態をキープし続ける。

オーラがどんどん消費されつつ、生み出される。

当初は5分とその状態を維持できなかったが、今では30分以上維持可能だ。


魔法も勿論練習している。

魔法発動までの時間の短縮や、命中精度や速度に威力の向上の為に考えた修行。

自分の対面方向から、自分に向かって魔法を放つ。

魔法の属性、威力、速度、タイミングそれらは全てランダムで自動的に行うプログラムを組んだ。

俺は俺に向かってくる魔法を迎撃しなければ、ダメージを負うことになる。

放たれた魔法を分析し、相性の良い属性を選び、丁度相殺できる威力のオーラを込めたものを、射線を予測し迎撃すべく魔法を放つ。

最初はなかなか上手く迎撃できず、直撃を受けたり、魔法の投射数を増やして対応し消耗が激しかったりした。

今はだいぶ慣れて、迎撃には最小限のオーラの消費で可能になりこの修行の時間も増えた。


このような自己流の修行ではあるが、修行の効果は着実に出ている。

各能力値は順調に伸びていた。

能力値を数値化して確認がとれるというのは本当に便利だ。

効果のない修行をおこない、ただいたずらに時間を浪費している状況を防げるし、何よりやる気モチベーションに繋がっている。

現在の俺の総合力は200レベル。

修行開始前と比較すると倍のレベルに到達している。

倍になった言っても、例えば修行前の俺を2人相手にして互角の戦いになるという単純な強さの比較ではないという自身がある。

100レベルの相手なら10人を相手にしても勝てる気がする。

特にオーラ量の伸びが良い。

修行前のオーラ量を100とすると、現在700を超えている。

最初に撃ったファイアーボールなら単純計算すると140発撃ってもオーラは枯れないということになるが、そんなに単純ではなく。

常時生み出され回復するオーラ量も5倍以上に増えているので、ゆっくり撃つ分には無限にファイアーボールを撃ち続けられるかもしれない。


更に修行を続け、1ヶ月目を過ぎた。

俺のレベルは250となった。

最近、各種ステータスの成長が鈍化してきている。

レベルの上昇に合わせて、負荷を増やし、修行の濃度は増やしてはいるのだが明らかに減速している。

成長が止まったわけではないのだが、壁に突き当たった感じだ。


冷蔵貯蔵庫の食料にはまだ数か月程度は食っていける余裕がある。

だがこのままのペースだと目標としている600までは到底遠い。

時間が経ち食料が尽きて、強制的に屋敷の外に出ないといけなくなった際に、森の魔物達に対抗できるレベルに至っていないことはそれすなわち、この異世界生活の詰みを意味する。

餓死か、魔物に殺されるかの二択を迫られるという最悪の事態に陥るのは避けたい。


自己流の修行に限界と焦りを感じ始めた頃、何時ものように結界内をランニングしていると、結界の直ぐ傍でバッファローのような魔物を見つける。

実は見慣れる程度には、魔物は現れている。

結界が優秀なおかげで、俺がその近くをランニングしていても気付かれることがなかった。

何時ものように気にかけずに一周走ってくると、さっきの魔物がまだ同じ場所に居て、地面に伏せて休んでいた。

魔物をよく観察すると、口元に血の跡が見受けられる。

他の魔物を捕食して、お腹一杯になって休んでいるというところか。


『エクスアナライズ』


魔物を魔法で分析する。

レベルは315あった。

まだまだ全然強敵だ。

筋力は俺の倍近くあり、外殻も固い。

俊敏に動くダンプカーのイメージが浮かんだ、それより断然強い。

しかし、高い物理防御力に比べてオーラに対する抵抗力が若干低いようだ、加えて雷属性への耐性も低い。

つまりこの魔物の弱点ということだ。

こうやって度々エクスアナライズを使うことで、情報が少しずつ蓄積してきて各種ステータスの強弱や耐性・抵抗力等も分析出来るようになってきた。

俺のレベルも上がり、オーラも強化されたことによって森の魔物へのエクスアナライズの使用も以前ほど苦ではない。


オーラ抵抗力が低い…、弱点は雷属性。

ふと俺はあることを思いつく。

しかし、それを行うのはリスクが伴う。

だが、修行が煮詰まりつつある現状をこのまま送り続けるのもまた、リスクだ。


「セレスティ」


「はい、英史様」


呼びかけると、セレスティは幼い少女の姿で隣に現れた。


「ちょっと修行の方針を変えようと思っている…どう思う?」


「最適な答えです」


俺とセレスティの思考は繋がっており、考えは筒抜けになっている。

これから、もしかしたら今のこの安全な修行環境を壊しかねないことをやろうとしている。

そのことを事前に、同居人のような存在のセレスティに相談したのだ。

同居人もこう言ってることだし、やってみるか。


オーラの出力を最大に、肉体強化も念のため最大にしておく。

放出されるオーラが渦を巻くように炊き上がっていく。

近くでこれだけオーラを出しても、魔物は気づいていない。

よし、結界は機能している。

放出されるオーラを右手に集めていく。

オーラの塊が右手から解き放たれ、上空に浮かんでいる。

それに更にオーラを込めていく。

込めて、込めて、込めてバスケットボール程の大きさの光り輝く球体へと育つ。


『ライトニングランス』


凝縮されたオーラが稲光と共に、電流を帯びた槍状に変化する。

目標をバッファロー型の魔物に定め、雷の槍を放つ。

放たれたライトニングランスが音速を超えて飛翔する、落雷のような音が起こるが魔物は地に伏せたまま。

結界を出たところで、魔物は異変に気付いたのかピクリと動いた。

しかし、時すでに遅し、高速で穿たれた雷の槍が魔物を直撃襲う。

辺りを眩く照らす閃光と共に、熱量と衝撃波を辺りに振りまく爆発が起こる。

貫通したライトニングランスが、魔物の先の地面も深く抉り穴が開き、巻きあがった土や石が森の方へと舞い上がり、降られていった。

魔物の身体はライトニングランスの着弾点を中心に大きく抉られ、更に真っ黒に焼かれていた。

少しの間、ピクピクと痙攣していた魔物であったが、すぐに動きを止めた。

英史は槍を投擲した後のポーズで固まっていた。

作戦が成功するかという不安と緊張と大量のオーラを消費したのもあり、額から汗が滴り落ち、身体は小刻みに震えていた。

初めての魔物討伐…というより、転生前から数えてもこのような動物的な生物の命を初めて奪った。

ライトニングランスが外れていたら、作戦は失敗。

もしかすると、魔物が結界内に突入してきたかもしれない。

そうなると、オーラ残量の少ない英史にはなすすべなくやられていただろう。

命のやり取りに勝利したが、勝利の味は決して手放しで喜ばしいものには感じられなかった。


「勝った…」


「ギャー!ギャー!ギャー!」


木々の間から怪鳥型の魔物が複数飛び出してきた。


「うわっ!」


突然の出来事に、驚き悲鳴を上げてその場に力尽きて尻もちを付く。

怪鳥たちは、丸焦げになった魔物の上空を旋回するように飛んでいる。

今の戦闘に気付いて、結界の中に入ってくるんじゃないか…という不安がよぎる。

倒した魔物が、光り輝き始め、粒子状のオーラに変化する。

オーラの大半は結界内の英史の元にやってきて吸収される。

残りのわずかな分が、上空の怪鳥たちに吸収された。

怪鳥たちは気持ちよさそうに目を細めていたが、結界内に消えたオーラのことを不思議がるそぶりを見せて首を傾げた。

数刻の間、上空を旋回していたが諦めてように森の中へと降りていく怪鳥たち。


「はぁーーー…」


英史は大きく溜息を吐いて、地面の上に大の字に寝転ぶ。

身体へと吸収されていく元魔物のオーラ、この現象により細胞が活性化して喜んでいるようで、非常に高揚感を感じた。

この世界では、生物たちは命のやり取りをしてオーラを奪い合う。

他者のオーラを奪い、自分のものにするのはこの世界では当たり前のやり取りとのことだった。

この快感は、癖になるだろうな。

でも…英史には気持ちの良いものとは感じられなかった。

生態系の掟であって、快感の為に魔物といえどその命を奪うのは決して良くないはず。


『エクスアナライズ』


自身を分析する。

なんと驚くことに、先ほどまで250レベルだったのに、今は260まで上昇している。


「セレスティ、魔物討伐はこんなにレベル上がるものなのか」


「格上の相手のオーラを取り込むことは、相応の成長が見込めます。

今回、英史様が倒された魔物との、英史様の定めるところのレベル差は65レベル。

この差は本来、親と赤子程の差であります。

故に、それを成し遂げた戦果も大きかったということです」


「成る程、普通なら到底無理ということだよな。

しかし、親と赤子…か確かに無理だ。

ゾウと蟻、よりかは大分現実的になったものだが」


この作戦は、結界あってこそのものだ。

絶対に感知されない安全地帯から、一方的に攻撃を加えることができるというやり方。

更に、如何に一方的に攻撃が可能とはいえ、相手の装甲を貫通してダメージを与えられないといけない。

しかも一撃で致命傷を与えなければ、標的はその場から逃げるだろうし、最悪、結界内に突撃してくるかもしれない。

加えて、もし俺が近距離攻撃主体の戦い方であったらこの作戦は使えない。

なんだか、何もかもが俺に都合がよくて、逆に怖くなってくる。

だが、この作戦は大成功の結果といえる。

トレーニングによる修行に限界を感じていたいま、この方法は突破口になる。


英史は複雑な心境の中、立ち上がると屋敷へと戻っていった。

とりあえず今日は修行はお終い。

熱いお湯を頭から浴びて、気分を変えたかった。


翌日、気分がリセットされて再開したトレーニング。

成長速度が少し上がったようだった。

セレスティ曰く、魔物のオーラを取り込んだことにより、細胞が成長の壁を越えたことによる影響とのことだった。

他にも修行に変化があった。

魔物を見かける度、討伐をすることにした。

方法は同じ。

安全地帯からの見敵必殺戦法。

対象の弱点属性の魔法で一撃撃破を狙うもの。

実は、成功率は思ったほど高くなく、結構失敗していた。

最初の状況が優しすぎただけで、あのバッファローのように気を抜いている魔物は居らず。

こちらの攻撃に気付いて回避されたり、致命打にならず森の中に逃げられてしまったり。

魔法を練り、隙を伺っている間にオーラが切れてしまったりと、そこまで楽勝な作戦ではないと思い知った。

なので、基本的にはトレーニングを軸にし、状況次第で魔物討伐も行った。


そうしている間に、更に1ヵ月が過ぎて俺は350レベルまで成長していた。


ここまでご視聴、本当にありがとうございました。

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