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最先端、受け継ぐもの、新しいこと

俺の不安は無駄であった。


魔物達の襲撃のあと、改めて屋敷の中を探索してまわった。

やはり、この屋敷はもう使われておらず、暫くの間は人が生活していたような跡が見られない。

ただ幸運なことに、食料の不安は解消された。

地下室があり、そこが冷凍貯蔵庫になっていて大量の食料が保存されていたのだ。

冷蔵貯蔵といっても、電気を使った冷蔵庫があるのではなく、セレスティの分析では外の結界と同じような設置型の魔法ということらしい。

冷蔵貯蔵庫だけではない、なんと浴室は水とお湯まで出る。

台所も水が出て、コンロからは火も出る。

庭に小さな小屋があり、そこには大きな魔具が設置されていて今も稼働している。

その魔具が森の豊富な魔素を取り込み、オーラに変換し結界や各施設へ供給していることで各機能が稼働していた。

自然エネルギーを利用している、という意味では元の世界もびっくりのハイテクっぷり。

これらの設備を作るのはこの世界でもかなりの実力者とのことだ。

同等の設備を有しているとなると、国王クラスでそれも数えるほどらしい。

それだけの実力者だったここの家主は恐らくもうこの世にはいないだろうということが、残されていた手記でわかった。

家主は女性で、各地を冒険し様々なダンジョンを攻略し財と実力を築いたが、何者かに命を狙われこの地に逃げてきた。

森を開拓し、自ら屋敷を立て、外の結界を張った。

追跡者に怯えながら、隠遁生活を送っていたが最後の戦闘で受けた呪いによって徐々に蝕まれていき、最後は死んだ。

王族クラスの施設を持つ実力者となれば、さぞ名を馳せた者だったろうになぜこのように隠遁していたのか。

手記の最初と最後が空白になっていたため、それ以上のことはわからないが、ここはそんな家主が暮らしてきた屋敷ということだ。

空き家荒らしで大変申し訳ないのだが、俺も誰かさんの思惑で、出るに出られない結果として軟禁状態。

森を抜ける準備が整うまで感謝して大切に使わせて頂きます。


「南無阿弥陀仏、成仏してください」


家主の使っていただろう書斎の椅子と机に向かって合唱した。

書斎全面に置かれた本棚には、かなりの書物が並べられていた。

見たこともない文字だったが、何故か読めたし理解ができた。

これも転生の特典で得た能力で、オートで転生前の知識に合わせてフィルタリングしているらしい。

歴史や文化、地理、生物、植物に魔物等の図鑑があったことは本当に助かった。

更にオーラに関すること、魔法に関して書いてある書物もあった。

全ての情報は視覚からスキャンされて保存領域にフルオートで保存、分析、仕分けされていった。


転生直前にゼウスと話し合って貰った特典、異世界での活動を優位にするための恩恵と言えるもの。

それは、端的に説明すると自身にスーパーコンピューターやハイスペックスマートフォン並みの処理能力と機能を付与するというもの。

ゼウスはなぜそんな能力なのだと疑問視された。

以前の転生者までは生存率を直接上げるために皆、英雄に見劣りしない身体能力の向上や自動で戦ってくれる強力な武具を得ることを選んでいたという。

しかし、俺はもともと肉体の脆弱な日陰者ハッカー。

付け焼刃の力を得たところで、それに振り回されて上手くつかえる自信はなかった。

そりゃ、強靭な肉体を得てかっこよく活躍し、羨望のまなざしを向けられたくはないかと言われれば、素直にいいえとは答えられないが。

そこをぐっと堪えて、得意分野に沿った能力を求めたのだ。

事前に説明のあった世界観でも、魔法やら精霊やら不思議パワーのことは聞いていたので、それらをうまく使うためにも有効だと判断。

まぁ、いきなり魔物に襲われるというハプニングも、英雄様のように強かったら軽く乗り切ったかもしれないのだが。

兎にも角にも、自分の選択を信じて現状を打開すべく、行動していくしかないのだ。


早速、収集した魔法の本の情報を元に魔法の行使に挑戦してみようと思う。

魔法は、体内のオーラを消費して発動させるものらしい。

オーラを放出し、放出したオーラを魔法へと変化させる。

言うのは簡単だが、自分のオーラを操作するという感覚を掴むまでに何日も修行して試すものと記載されてあった。

汗を自在にかけと言われるようなものだとすると、確かにそれはできるようになるまで相当な練習が必要そうだ。

なので、俺は貰った能力を駆使して実行する。

オーラに関する書物と魔法に関する書物から得た情報から、実行プロセスを構築し、実行させる。

体内から熱いものが、手の先端まで流れていき手の上で眩く輝く光球が現れた。

同時に、わずかながら喪失感を感じる。

自身のオーラを消耗したことによる反動だろう、無事、オーラを変換し魔法として発動させることに成功。

更に「ファイアーボール」と呟く、光球に詠唱というなの式を付与する。

光球はメラメラと燃え上がる火球に変化した。

庭にある大きな岩めがけて火球を投げつける、火球が手元を離れたと同時にオーラを込めて推進力を与える。

剛速球となった火球が岩にあたって爆散した。


「おー、魔法凄い魔法凄い」


自然と拍手をしていた。自分に?魔法に?

初めての魔法ファイアーボール、岩が壊れるほどではなかったが、それなりの威力に見えた。

でも対戦車ロケットよりは全然弱い位かな?

しかし冷静になると、財力あるならロケット砲を大量に用意して撃ったほうが誰でもちょっとした練習で火力出せるようになる。

魔法を撃つまでの準備も大変だ、こんなに隙だらけなら狙撃銃で撃たれてしまって終わりではないか?

ファンタジーの王道で誰もがテンションのあがる魔法に対し、とりあえず無駄が多すぎるというのが正直な感想だ。

魔法書の知識によると、修行と知識を深めることにより、より大出力でより素早く発動させられるらしい。

それでは体を鍛えてより強力なパンチを繰り出すのと同じではないか?

少し俺流で先ほど実行した魔法の発動方法を組み替えてみて、それを実行する。

俺の全面から火球が飛び出し、岩に当たって爆散する。

更に続けて火球が次々と岩に向かって飛んでいく。

火球以外に水球に雷球も打ち出されては岩に命中し四散した。


魔法の行使方法をプログラミングし、実行したのだ。

魔法の発動方法を分析すると、それはプログラミングと同じようなものだった。

書物に載っていた魔法発動までのプロセスは、無駄な段階が多すぎた。

プログラミングは以下に無駄なコードを減らして同じ結果を出力できるか、これはセンスがいる。

一応、転生前は四六時中パソコンを触れていたプログラマー件ハッカーということもあり、プログラミングには自信があった。

火球の威力や速度を早くしたり、遅くしたり、出すタイミングや火や水といった属性を定期的に変化させたり。

それを自分の思考無しで自動的に、任意のタイミングで発動するよう自動化させた。

例えば、魔物が十数メートルまで近づいたら自動的に魔法発動という風に。

作業の自動化は、プログラマーには絶対必要な工程だ。

しかし、なんだこれめまいが…。

と気づいた時には倒れていた。


「英史様、大丈夫ですか?」


地面にぶっ倒れた俺の視界に覗き込むセレスティの姿が映る。


「敵襲?俺は何か攻撃を受けた?」


「いえ、オーラ切れの症状かと存じます」


調子にのって魔法を自動発動させていたので、俺のオーラが尽きたらしい。

そういえば、書物にそのような情報があったかもしれない。

失敗からしか学べないのは、なんとも悲しいことだ。

しかし、学んだのなら忘れないように、次回繰り返さないようにしなければいけない。

オーラ残量に対するリミッターをかけて、自動的に発動を停止するようにしなければ…。


ここまでご視聴本当にありがとうございました。

差し支えなければイイネ・感想・レビュー・またはブックマークしていただければ、

今後の執筆活動の励みになります。

よろしくお願いいたしますm(_ _)m

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