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森、攻略開始 その5

昆虫の姿をした魔物に囲まれていた。


その数50体越え、探知魔法によって判明した数だ、それとは別に大樹の方から更なる魔物がやってきている。


とても相手できる数ではない、今すぐ逃げ出さなければならない、が退路は完全に絶たれている。


地上は通る隙間もなくひしめき合っていて、頭上は飛行型の魔物や樹にぶら下がっている魔物で抑えられている。


AI達を最大展開。


ワンからエイトまで8体のAI達が戦闘補佐を開始する。


『先ほどからの連戦で酷使してすまないが、これを切り抜けなければ全てが終わってしまう。各自、頑張ってほしい』


『了解、マスターのお命をお守りするため最善の行動を取ります』


ワンが8体を代表して答えてくれた。


絶望的な状況の中なんとも心強い。


早速魔法が展開されていく、周囲360度に対し魔法障壁が展開される。


魔物達はその障壁を攻撃し始める。


足止めされる魔物達に向かって攻撃魔法が次々と撃ち出されていく。


魔法障壁と攻撃の間を抜け素早い魔物が直接攻撃してきた。


ガガンッ


魔物の攻撃が魔法障壁に阻まれる。


ドーン!ドーン!


カウンターで撃ち出された魔法の槍によって貫かれる魔物、そのままオーラを四散し消滅する。


『もう一本の予備杖の使用を提案します』


『…!…了解!』


スリーの提案を受けて、もう一本の予備杖をベルトから取って装備する、両手に杖である。


『オーラブラストスタンバイ…』


両手に構えた杖の先端に、大きなオーラの光球が浮かぶ。


『ファイア』


ズァッ


オーラによる熱線の2本のレーザーで魔物達を薙ぎ払う。


ズババババッ


囲んでいた複数の魔物達が焼き払われた。


使える魔法の中で、最大威力である『オーラブラスト』


消費オーラ量が多いことと、溜めに時間がかかる為、使いどころを選ぶ言わば必殺技というべき魔法だ。


しかし、杖の能力である魔法ストックにストックすることでデメリットを無視して使うことができた。


便利であるが無限にストックできるわけではない、高威力故に1本の杖に3発までしかストックができないという制限がある。


既に大半のストックを使い切り、2本の杖に残り合計3発分のストックを残すのみ。


虎の子の『オーラブラスト』を同時に2発放って作った隙間だが、直ぐに後ろの魔物が入れ替わるように前に出てきて封鎖される。


逃げられない状況は変わらない。


ガガガガガッ!!!


進攻を防ぐ魔法障壁に攻撃する魔物達。


ズドドドドッ!!!


障壁に張り付く魔物達を撃つ攻撃魔法。


攻撃魔法の直撃を受けた魔物は倒されていく。


魔物達はこちらを攻めあぐねている。


先程4体の魔物達との闘いを制してレベルアップしたおかげで、障壁と攻撃の威力が一回り上がっている。


更に大きな恩恵が、AI達の戦闘経験だった。


既に1対多数を経験したAI達は、戦中戦後の間にその経験情報を元に、分析と評価を膨大に行っている。


アップグレードされた戦闘プログラムは、魔物達の行動を予測し戦いを有利に進めていた。


だが、こちらも物量で抑えつけられているのには変わらない上に、四方八方に展開している大量の魔法障壁と攻撃魔法によって、俺のオーラ残量は急激に消耗している。


倒した魔物のオーラで少しずつ補給しているが、オーラの枯渇が先か魔物達の殲滅が先かギリギリの戦いだ。


ピピピピッ!!!!


俺にしか聴こえない警告音が鳴る。


『後方にて魔物達の異常な活動を検知したことを報告します。』


ワンの報告通り、ヨーグダヴィスの樹付近に十数体の魔物が集まっているようだ。


そいつらも周りの魔物達と同じように大樹から出てきた昆虫型魔物のようだが、こちらを攻撃してくる様子がない。


魔物達の行動の変化に緊張が走る。


そちらも気にはなるが、俺を取り囲む状況の打破に手一杯だ。


バリッ!バリッ!バリバリバリッ!


離れて行動している魔物達の一体が、別の魔物を頭から食べ始めた。


バリバリ!ガツガツッ!


他の数体の魔物達も同じように、別の魔物を食べた。


「と…共喰い…だと…」


ショッキングな光景に思わずうめき声を出してしまう。


ザンッ!ザンッ!


更に別の魔物は、無抵抗な魔物を鎌状の両手で切り刻んでいる。


魔物達は突然、同士討ちを始めた。


数体の魔物が、無抵抗な魔物達を喰い、破壊している。


目の前で繰り広げられる状況に理解が追い付かず、困惑してしまう。


魔物達は気が狂ってしまったのか?


周りの魔物達は、そんな奴等にお構いないようで俺への攻撃の手を緩めてはいなかった。


ピピピピッ!!!!


再び警告音が鳴り響く。


『警告します。別働の魔物達に変化有』


警告と共に、分析レポートが表示される。


同士討ちしている魔物達のレベルが上昇している。


その行動原理に気付く。


『あいつら…、俺に対抗する力を得るために共喰いして強化してる…』


目的達成のための自己犠牲は顧みないということらしい、統率された昆虫型魔物達個々に意思があるのかわからない、しかし全体からは恐ろしい程の執念を感じた。


ダヴィスの実を奪った俺を、絶対に逃がさないという明確な意志。


強化を終えた数体の魔物達が戦闘に加わる。


バキバキッ!バキバキッ!


一撃で複数の魔法障壁が破壊される。


広範囲展開用に調整した障壁では、足止めにもならない。


一気に距離を詰められてしまう。


強度を最大に上げて再展開する、このレベルの障壁だと周辺に数枚の展開がやっとだ。


ボンッ!ボンッ!ボンッ!


「ぐっ…」


大きな火球が障壁に連続して衝突する。


衝撃と熱量がこの身を揺らした。


強化された魔物達の介入により、形勢が急激に悪くなっていく。


魔力障壁が時間稼ぎにもならなくなり、攻撃が直に届きだす。


『オーラブラスト、使います』


『頼む!』


ズァッ!!! ゴォッ!!!


2本の杖から、熱線が放たれる。


熱線を振り回し、辺りを薙ぎ払う。


照射を終えて杖の先端から煙が上がっている。


強化された魔物達はガードの姿勢を取り、防いでいた。


ダメージはあるようだが、致命傷には至っていない。


「なっ…嘘だろ…」


とっておきが全く有効打になっていないではないか。


短い反撃のターンは終わり、距離を詰められタコ殴りにあう。


マズい、これは本格的にマズい。痛い。死ぬ。


何か有効な手はないか?何か。


攻撃も防御も敵の物量の前に焼け石に水、オーラはガンガンに削られもはや風前の灯。


どうしてこんな状況になってしまったのか?


そうだ、ダヴィスの実を取ったからだ。


ダヴィスの実?そう、ダヴィスの実だ。


食べると強くなれるという伝説のある実。


これを食べれば打開出来るのではないだろうか?


『英史様、念のためお伝えしておきます。その実を食べ、強くなったという話は事実のようですが、実の摂取直後に数日から一週間程度動けなくなっているようです』


思考を読んでセレスティが助言をくれる。


『動けなく…身体が実を食べて受ける変化による負荷が大きすぎて気を失うということか』


このままでは死ぬ、実を食べたら動けなくなって死ぬ。


どちらにせよ死ぬ、詰んでいる。


どうせ死ぬなら、一縷の望みをかけて実を食べよう、そもそもこれを狙ったおかげでこんな状況に陥ってしまったのだから食べずに死ぬのは悔しい。


ガブッ


ダヴィスの実を食す。


ガブッ


もう一口。


甘味がないメロンのような味。


『ワンからフォーまでは戦闘継続、ファイブからエイトまでは実の効力を分析して報告してくれ』


『了解』と8体のAI達からの返答。


ワン、ツー、スリー、フォーは魔物達の攻撃をギリギリのところでさばいた。


魔物の攻撃を受ける瞬間に合わせて魔法障壁と肉体強化を集中させ、ダメージとオーラ消費を最低限に抑えてくれている。


怒涛の如く繰り出される敵の攻撃を予測分析、対処方法の計算と実行。


それを先ほどまでの半分の処理能力で行っている。


「うっ…」


意図せず嗚咽を漏らしてしまった。


悪寒、倦怠感、それが身体全体に急速に広がっていく。


まるで自分の身体ではないかのごとく重くなり、立っているのもきつくなってくる。


意識も朦朧としてきて、目を開けているのも辛い程。


『ダヴィスの実の作用を分析・解析致しましたので、ご報告いたします』


ファイブからの報告、直接脳内で語りかけられているのに遠くからに聴こえる。


『全身の細胞と肉体及び、オーラ運用系統を強制的に変異・成長させる作用が働いております。変異・成長速度が通常の速度では有り得ない程のため、肉体精神共に過度な負担が掛かっております。』


成る程、身体を強化すべく変化を与えている最中で、その成長速度が異常なため成長痛も異常ということなのだろう、それがダヴィスの実を食べた副作用。


ここで気を失ってしまえば、身体が強化される前に魔物達に殺されてしまう。


『この状態はどのくらいで終わる?』


『予測完了時間は約3日』


3日!?…セレスティの助言通りなのだが、こんなに辛い状態をそんな長時間味わい続けなければいけないのか、しかもその期間ずっと戦っていられるはずがない。


『ダヴィスの実の作用を促進できる?』


『可能。マスターの処理能力を利用してこちらで促進させることができます。ですがその分、肉体に掛かる負担も増します。』


『頼む、やってくれ可能な限り早く、その間は出来る限りこちらで身体は守り通す』


『了解。シックス、セブン、エイト促進プログラムのサポートを開始してください』


『『『了解』』』


『ワン、ツー、スリー、フォー以上の通りだ、更にきつくなるが他に策もない、乗り切るぞ』


『『『『了解』』』』


応答は返してくれたものの、既にオーバーヒート気味の戦闘組のAI達。


「ぐっ…」


全身に釘を打ち付けられるような痛みが走り、オーラの流れが乱れに乱れて乱気流のようだ。肉体強化と魔法障壁の維持が困難に。


『ツー、スリー、フォー。シックス達の作業ログを見ながらオーラ運用への影響を予測しながら、調整を入れてください』


『『『了解』』』


応答を待たずとして魔力障壁が再展開される。


ワンの出す難題に答えるツー達、頼もしい限り。


『進捗率10%予測終了時刻約3分後』


ファイブからの進捗報告、3日掛かるという予測が一気に3分に1500分の1まで短縮されているスーパーコンピューター並みの処理能力のなせる業。


しかし当然その分、1500倍の負担が追加されている、たかが3分、されど3分、一瞬でも気を抜くと気絶してしまいそうな永遠にも近い3分間の始まり。


AI達の頑張りに負けないよう、こちらも踏ん張らねばなるまい。


こちらが実を食べたのを確認してか、魔物達の攻勢は勢いを増している。


それでも、この絶望的な状況で魔物達の攻勢で押しつぶされていないのはAI達のおかげ。


実による変化を計算に入れながらの戦闘というだけでも困難だろうに、戦闘でもデータを蓄積し分析・解析してより効率的な対応を行っている。


戦闘が継続すればするだけ、有利な戦い方を永遠に導き出すAI。


魔物達も攻めきれない現状に気付いてか後方で、先ほどと同じ同士討ちで新たな強化型が生み出され戦闘に追加される。


敵戦力の増強により更に負荷が増す。


『フォー、オーバーヒート。システムダウン』


淡々と告げられた報告。


フォーの存在を感じられない、度重なる負荷によりAIのフォーが戦線より離脱してしまった。


それはそのまま戦闘力の低下に直結している、敵の攻勢に押され身体にダメージが蓄積していく。


『進捗率40%予測終了時刻約2分後』


促進プログラム部隊からの無慈悲な報告。


『マスター、フォーのダウンにより戦闘継続が困難。エイトの戦闘編入を提案』


『提案を却下する。促進プログラムの遅れのほうが甚大な影響がでる、申し訳ない3人と俺で耐えるぞワン』


『…人、了解マイマスター』


一瞬ワンの返答が遅れた気がするが、気にしている余裕はない。


『危険、緊急行動を取ります』


ガッ


ワンの警告と同時に、強烈な一撃を受ける。


それを両手でガードするも、吹き飛ばされる。


頭が少し割れて血が流れているのが分かる。


『ワン、予期せぬダメージによりシステムダウン』


ツーからのアナウンス。


直ぐにログを確認するとワンが敵の攻撃を受ける瞬間、全体へのダメージをかばうように動いたのがわかった。


ワンは自ら犠牲となったのだ。


AI的反応の結果に過ぎないかもしれないが、そこに人間味を感じずにいられない。


ワンの捨て身の行動によって一命はとりとめた。


しかし、戦闘AIは残り2人、形勢はさらに不利になる。


『ヒール』


頭の割れた部分を回復魔法で塞ぎ、出血を止める。


実の作用が進行しているせいで、更に肉体は不自由で、意識はかすかに残っている程度。


残存しているオーラも残りわずか。


『スリー、オーバーヒート。システムダウン』


更にスリーがダウン、残る戦闘に参加しているAIはツーのみ。


『進捗率70%予測終了時刻約1分後』


残り1分、もはや満足な抵抗は出来ていなかった。


残りのオーラで肉体強化を最低限維持しているだけの、攻撃を受けて吹き飛ばされるサンドバックと化している。


『80%…残り40秒』


ツーの存在も感じられなくなっている、ツーもダウンしてしまったようだ。


片膝を地面につき、頭を守りひたすらに攻撃を受ける。


『90%…残り20秒』


途切れそうな意識の中で、魔物達がとどめを刺そうとしているようだったがもはや防御に使えるオーラは残っていない。


ゴロンと地面に仰向けで大の字に寝転ぶ。


やるなら一思いにやってくれというように。


『95%…残り10…9…』


カウントダウンが始まっている。


死が迫っている、ギリギリ間に合わないかもしれない。


最後の抵抗をさせてもらう。


しまっていた杖を展開する。


杖にストックされている最後の一発を使用する。


『オーラブラスト』


杖の先端が眩く輝き辺りを照らす。


ドーーーーーーンンッッッ


魔物達が群れをなし、隙間もない程密集空間にて行き場を無くしたオーラが爆発を起こした。


森が揺れる。


『4…3…2…』


巻き起こった爆風により遮られていた視界がクリアになっていく。


魔物達は順次ガードの姿勢を解いていく、強化型は先ほどの爆発も殆どダメージを受けていないようであった。


再び、英史にとどめを刺すべく、攻撃を繰り出した。


『0…促進プログラムコンプリート、強化プロセスが100%完了しました。』


『ファイブからエイト、全AI戦闘モードに移行』


地面に横たわる英史の身体から、膨大なオーラが噴き出す。


爆発のようなオーラの放出によって、辺りの魔物達は吹き飛ばされた。


『ワンからフォーまでのAIの復旧開始…成功』


ダウンしていたワン達AIが復活する。


『マスターの意識が確認とれません。先刻のオーラブラスト使用による衝撃によって深刻なダメージを受けたものと推測』


『ファイブからエイトまで、マスターの回復に努めてください』


『『『『了解』』』』


『スペックを確認…完了。生体レベル415から515まで上昇を確認。各種身体能力の向上を確認。各種オーラ系ステータスの大幅な向上を確認、オーラ残量…フル。』


『敵対生物への脅威度の再測定を提案』


『承認、再計測…脅威度は最大から低に変更されました』


体制を立て直した魔物達が、一斉に英史に襲い掛かる。


『敵性体を排除します』


全ての魔物達の頭上にマジックランスが出現し、次の瞬間降り注ぐ。


ズドドドドドドドドドドドドドドドッ


辺り一帯で次々と爆発が巻き起こる。


一瞬にして辺りに居た数十体の魔物達は壊滅。


残った数体の手負いの強化型魔物が、英史に向かって飛びかかる。


バシィンッ


魔法障壁に阻まれる。


ガンガンッ ゴンゴンッ


破ろうと攻撃を繰り出すが、魔法障壁はびくともしない。


魔物の背後に別の魔法障壁が現れる。


魔物達は魔法障壁の間に挟まれ、その隙間がどんどん狭くなっていく。


抵抗もむなしく、魔物達は魔法障壁の間で潰された。


『魔法障壁の耐久及び運用試験完了。』


『全魔物の排除を確認。方針の確認。』


『マスターの回復が最優先、屋敷への帰還を提案。』


『『『『『『『『異議なし』』』』』』』』


全ての魔物が排除された地で、意識を無くした英史の身体はAI達の運用によって動いていた。


瞼を閉じたまま、フラフラと来た道を戻っていく。


ドンッ!!!


ズガンッ!!!


バンッ!!!


時折、森に魔法が炸裂する音が響き渡る。


屋敷への道中、進路上に現れる魔物達が次々に排除される音だ。


そうして、主の眠ったままの身体は100体近い魔物を排除しながらも危なげなく屋敷へと2日ぶりに帰還を果たす。


ドサッ


AI達は英史を寝室のベットに寝転がし、自らも短い眠りについた。


森攻略編終了です。

エピローグ終了後に第一部からストーリーの大幅な変更を行います。


ここまでご視聴、本当にありがとうございました。

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