森、攻略開始 その4
戦闘モードを解除し、通常警戒モードに移行する。
経った今倒した4体分の魔物のオーラが身体に吸収されていく。
4割程度まで減っていたオーラ残量がかなり補充されて5割程にまで回復した。
レベルは405から415まで上がった。
同レベル帯複数との戦闘、しかも連携の取れている相手。
得たものが多い戦いだった。
AI達の初実戦投入。
想定以上に頼もしかった。
人工知能達の蓄積と分析による進化は、やはり人の速度の比ではない。
進化しすぎて、いつか主導権を奪われる日が来るかもしれないという諸刃の剣の怖さがあるが。
これからも存分にお世話になるだろう。
魔法障壁バリアの有用性も再確認できた。
守り、妨害、更には攻めにも使える。
お陰で直撃を受けることは一撃もなかった。
クワガタにはいとも簡単に破られていたので、過信はできないが。
その反面、自分の継戦能力の低さを痛感させられた。
戦闘技量、経験不足を魔法の大量展開という手数でゴリ押す無駄の塊のような戦法。
効率的な戦い方というものを習得することは、単純にレベルを積み重ねるより遥かに価値がありそうだ。
どうやったら戦い方って覚えられるんだ?誰か強い人を見つけてお願い…弟子入りするのか?
こんなことになるとわかっていたなら、元居た世界で相棒の美月に少しでも習っておくべきだった。
美月は度々声はかけてくれていた。
「英史、お前相変わらずもやしのように貧弱だな。鍛えろ、身体を、鍛えろ、付き合ってやるから」
「良いんだよ、俺はこれ(パソコン)で戦ってるんだから。荒事は美月の専門だろ」
「なんかあった時に、簡単に死ぬぞって言ってるんだよ」
「今までみたいに美月が守ってくれよ」
「いつでもお前を守ってやれるわけじゃない。だいたいそれでいいのか、女に守られる男って、情けなくないのか。お前も男の子だろ一応」
「一応、ね。俺だって、強くてかっこいい男になりたいって思ってた時期もあったんだけどね」
「今からだってなれるよお前なら、諦めんな」
「喧嘩とか争いみたいなのって、向いてないんだよね。怖くて震えてしまう」
「…お前。はぁ、まぁ、私の手が届く範囲は守ってやるけど。手が届かないところで死んでも、恨むなよ」
美月の手の届かない遠くに来てしまいました。
無理してでも、戦い方を教えてもらうべきだった。
全然違う戦い方、もっと効率的な戦いができていたかもしれない。
過去のことを今更後悔してもどうしようもないのだが。
独り反省会を終えて、歩き始める。
求めるはダヴィスの実。
食べることで強くなることができるという。
実から周囲に強烈なオーラが漏れ出している。
あの眩いほどに力強いオーラを食べて取り込むというのだ、強くなれるというのも説得力がある。
当初の目的にはなかった思わぬお宝を前に、緊張しているのを感じる。
大樹ヨーグダヴィスからその実へと今もまだ脈を打つようにオーラが送られている、まるで母親がへその緒を通して我が子に血液を送るような。
あの4体の昆虫型魔物達は、この大樹の宝である実を守護するガーディアンだったのだろう。
ダメージを負った状態でもその身を顧みず、実を守ることを優先する動き。
振り返ってみるとそのように思えてきた。
これじゃ、俺は実を奪いに来た強盗だな。
殺されていた可能性もあったわけだし、その場合は俺が森の栄養になっていたわけでお互い様、弱肉強食というやつ。
などと誰に向けているのか自分でもわからない釈明会見を脳内で繰り広げる。
もう少しだけ歩いて、実に手が届くところまでやってきた。
実を手に取ってみる、サッカーボール程の大きさに合わぬずっしりとした重み。
その時、ゾクリという背筋が凍るような感覚を覚える。
直前の戦闘の余韻で感覚がゾーンに入っているのかもしれない。
具体的に何が、というのはわからないが嫌な予感がする。
早く実を手に入れてこの場を離れた方がよさそうだ。
『マジックナイフ』
実と樹を繋ぐ果梗を斬るために唱えた魔法の短剣だったが、果梗が予想以上に堅く弾かれてしまった。
果梗を伝って衝撃が振動となって実と樹の枝を震わせた。
予想外の抵抗を受けて驚く。
ド…ド…ド…。
振動がする。
まだ実が震えているのかと思いながら、気にかけず再度切断するために魔法を唱えようとする。
ドドッ…ドドドッ…。
更なる振動が、これは実が震えているのではない、地面が震えているのだ。
いや、地面じゃない…大樹ヨーグダヴィスが震えているんだ。
探知魔法『ソナー』で変化を探知する。
大樹ヨーグダヴィスの内側でいくつものオーラが動き回っている。
幹に穴が開いている場所があって、オーラ達はそこを目指して動いている。
更に周囲を覆っている枝を伝って頭上から近づいてくる。
瞬間的に分析完了、それらは魔物だ。
先程戦った4体の昆虫型魔物と同じく、大樹ヨーグダヴィスのガーディアン達。
強さも同等かそれ以上の個体も存在する、それが感知できる範囲で数十匹こちらに向かってきている。
直ぐにこの場を離れなければ、囲まれてしまう。
その前に、この実は手に入れなければ。
『マジックランス』
先程より高威力の魔法で果梗を切断しようと試みるが、再び弾かれててしまった。
果梗にオーラが集中し強化されているのだ。
実を取らせないという大樹の抵抗。
そうこうしている間に、幹の穴から続々と魔物達が出てきている。
頭上の枝の上の魔物達も目の前まで近づいている。
ここまで来て、実を諦めることはできない。
杖を構えると、オーラを先端に集中させる。
3つある魔法スロットの最後のスロットに充填していた『オーラブラスト』を解放する。
強烈なオーラの熱線が果梗を焼き切る。
実が手中に落ちる。
目的達成、撤収!
オーラを全開に放出し、その場を離れるべく後ろへ飛ぶ。
しかし退路にはクモ型の魔物が複数体、糸を垂らしてぶら下がっていた。
このままでは囲まれるの時間の問題だ。
ダメージ覚悟で強行突破するしかない。
『マジックランス』と『マジックナイフ』を大量に放ちながらクモとクモの間を抜ける。
抜けられた、このまま全速力で逃げるのみ。
と、思ったのも束の間、身体がグイッと力強く引っ張られた。
振り返ると、背中に白い粘着物がついていてそれがクモに向かって伸びている。
クモの糸に捕縛されてしまっていた。
糸に引っ張られ、後退することができない。
『ファイアーボール』
糸を切るために魔法を当てるが、先ほどの果梗と同じく見た目以上に丈夫だ。
ならば、同じように『マジックブラスト』で対処するのみ。
手持ちの杖の魔法ストックはすでに空、ベルトに収納し代わりに予備の杖を装備する。
『オーラブラスト』
レーザー光線の如きオーラの熱線で、糸を次々に焼き切ったあと本体のクモ達にもダメージを与える。
身体の自由は取り戻したが、すでに周りを大量の魔物によって囲まれてしまっていた。
もう少しで区切りがつきます。
区切りがつきましたら、第一部からストーリーの改変を行って行きたいと思っています。
ここまでご視聴、本当にありがとうございました。
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